第三百十八話:狂気の幻獣と謎の種。極上厚切り牛タンBBQと、超巨大メロンの独占販売(ブランド化)
「キュゥゥ……! キュイッ!」
市場での大成功の帰り道から、俺たちの後をトコトコとついてきた、真っ白でフワフワの毛並みを持つ幻獣の子供。
『モフ丸』と名付けられたその小さな生き物は、完成したばかりの神話級ログハウスの広いウッドデッキで、俺が手渡した『神話級・太陽の極太もろこし』を両前足で器用にしっかりと抱え込み、シャクシャクと何とも幸せそうな音を立てて頬張っていた。
「本当によく食べる、可愛らしい子ですわね。それに、この子が来てから、なんだかログハウスの中がさらに明るく、賑やかになった気がしますわ!」
「ガウッ。俺の背中に乗って平気で昼寝までする、度胸のあるヤツだ。ちっこいが、このモフモフ具合、悪い気はしねえな」
エレナ様とフェンも、すっかりモフ丸にメロメロだ。ガリウス所長も目尻を下げ、マリアさんに至ってはモフ丸用の小さなベッドまで作り始めている。
所持金はたったの3ポイントからのリスタート。だが、最高の家と仲間、そして新しい家族(?)まで増えた今の生活は、これ以上ないほど満たされていた。
だが……。
俺の心の奥底、理不尽な税金地獄をくぐり抜けてきた真っ黒な魂の奥底では、何かが静かに、けれど確実に燻っていた。
(……このままで、本当にいいのか? 確かに、借金もないし毎日美味い飯も食える、最高の幸せだ。だが、俺がこの異世界に転生してシステムに挑んだ本来の目的は、『1億ポイントを稼いでゲームクリアする』ことだったはずだ……。ただ庭で美味いものを食べているだけの限界集落の仲良しクラブで終わって、俺は満足できるのか……?)
そんなことをぼんやりと考えていた俺の足元に、もろこしを芯まで綺麗に完食したモフ丸が、トコトコと歩み寄ってきた。
「キュイッ!」
モフ丸が、俺を見上げて小さな口を大きく開ける。
すると、コロンッ、と。
一つの一風変わった『種』が、ウッドデッキの木の床の上に転がり落ちた。
それは、ただの植物の種ではなかった。ソフトボールほどの大きさがあり、表面からは虹色にギラギラと輝く、見たこともないほど強烈で濃密な魔力のオーラが、蜃気楼のように立ち昇っていたのだ。
「……なんだこれ? モフ丸、お前、こんなとんでもないモンを腹の中に隠し持ってたのか?」
「ルークス様! その種……信じられないくらい高密度の魔力をビシビシと感じますわ! ただの植物ではありませんの!」
「キュゥ!」
モフ丸は自慢げに胸を張り、俺の足にスリスリとすり寄ってくる。どうやら、美味いもろこしを腹いっぱい食わせてくれた『お礼』のつもりらしい。
俺の、最強のチート農民としての血が激しく騒ぎ出した。
「よし……! モフ丸がくれた、最高のプレゼントだ。俺たちの庭の特等席に植えて、何が育つか見極めてやるぜ!!」
俺は庭の極上黒土のド真ん中にその虹色の種を植え、白銀に輝く『真・アダマンタイトの鍬』を構え、全身の魔力を限界まで練り上げた。
「超絶農業スキル……『大地の息吹・極』ッ!! 全魔力解放だァァァッ!!」
ズゴゴゴゴォォォォォォッ!!!!!
大地が激しく鳴動し、植えたばかりの虹色の種から、天を貫くような極彩色の光の柱が立ち昇った。
尋常ではない太さの蔓が、まるで巨大な大蛇が暴れ狂うようにうねりながら超絶的な急成長を遂げ、その先端に、信じられないほど巨大な果実をボコンッ!と結実させた。
ドッスゥゥゥゥゥンッ!!
「……な、なんだこの、ふざけたデカさは……!?」
「馬車……いえ、小さな一軒家くらいありますわよ!?」
そこに実ったのは、馬車ほどの大きさを誇り、表面に王冠のような美しく精緻な網目模様が刻まれた、虹色に眩く輝く超巨大なメロンだった。
【鑑定結果】
【対象:神話級・虹色王冠メロン】
【状態:完全成熟(果汁1万%・糖度計測不能)】
【特徴:幻獣の極上の魔力と、神話級の大地が完全に融合して生まれた、世界に二つとない奇跡の幻の果実】
「よっしゃああああッ!! 超絶レア果実の大収穫だ!! 今日はこいつの収穫と、新たな家族モフ丸の歓迎を祝って、庭で最高に豪快なBBQだァァァッ!!」
◇
ログハウスの庭に特大のBBQコンロを設置し、真っ赤に熾した最高級の備長炭を隙間なく敷き詰める。
今日のメインディッシュは、フェンが少し前に仕留めて氷温熟成させておいた『神話級・飛竜』の巨大な舌……極上の牛タンならぬ『飛竜タン』だ!
「肉は厚みが命だ! 網の上で縮んでしまうような、ペラペラの薄切りなんて野暮なマネは絶対に絶対に、しねえぞ!!」
俺は巨大な飛竜のタンの、最も美しい霜降りの脂が乗り、信じられないほど柔らかい『根元(タン元)』の最高の部分だけを贅沢に切り出し、厚さ3センチはあろうかという『極厚切り』のステーキサイズにカットした。
火が通りやすく、かつ食感を最高にするために表面に細かく美しい隠し包丁を入れ、それを熱気立ち昇る熱々の網の上へドカンッ!と乗せる!
――ジュワァァァァァァァァァァッ!!!!!
「うおおおおっ!! タンの脂が! 炭火に落ちて弾ける匂いがたまらねえ!! これだけで白飯が食えるぞ!!」
極厚のタンが炭火に炙られ、表面が反り返りながらカリッと香ばしい完璧な焼き色をつけていく。
そこに俺は、みじん切りにした大量の長ネギ、最高級のごま油、粗挽き黒コショウ、そして旨味の強い岩塩を完璧な黄金比で混ぜ合わせた『特製・ネギ塩ダレ』を、肉が隠れるほど山盛りに乗せ、最後に搾りたてのレモン汁をキュッと回しかけた。
ジュワッ!!とレモンの酸味が炭火で焦げ、ネギとごま油の香ばしさが大爆発を起こす!
「完成だ! 『飛竜の極厚切りネギ塩レモンタン』!! 冷める前に、熱いうちにガブリといけェェェッ!!」
俺は、ネギ塩ダレがこぼれ落ちる極厚のタンを箸でガシッと掴み、大きく口を開けて力強く噛み付いた。
……サクッ!!
ブリィンッ! ジュワァァァァァァァッ!!!!
「んんんんんんんんんッ!!!!??」
俺の脳髄が、極上の食感と脂の旨味で完全に粉砕され、吹き飛んだ。
美味い!! なんだこの、歯を優しく押し返してくるような暴力的な弾力は!!!
厚さ3センチもある肉の塊なのに、繊細な隠し包丁とタン元特有の圧倒的な柔らかさによって、驚くほど『サクッ』と簡単に、まるでリンゴを齧るように噛み切れる!
噛み砕いた美しいロゼ色の断面から、飛竜の濃厚で甘い極上の脂がドバァッと口の中いっぱいに溢れ出すが、山盛りのネギ塩ダレの強烈なパンチと、レモンの爽やかな酸味がそれを完璧に中和し、いくらでも無限に胃袋に吸い込まれていくのだ!
「う、美味ぇぇぇぇぇぇっ!!! サクプリの食感がたまらねえ! ネギ塩レモンと極厚タン、これこそがBBQの歴史における絶対王者だァァァッ!!」
「はふっ、サクッ! お肉がこんなに分厚いのに、お口の中でとろけて消えてしまいますわーっ! レモンの酸味とおネギの風味で、お箸が全く止まりませんのーっ!」
「ガツガツガツ! 我の牙に相応しい素晴らしい弾力だ! この塩気と肉汁、最高だぞ!! もっと肉を焼け!!」
俺たち全員が、極厚の飛竜タンを狂ったように食い尽くし、口の中が濃厚な脂とネギ塩の風味で完全に満たされたところで、俺は背後にそびえ立つ馬車サイズの『神話級・虹色王冠メロン』を振り返った。
「さあ! 肉の脂を綺麗に洗い流す、究極のデザートの出番だ!!」
俺はアダマンタイトの鍬で、巨大メロンの頭頂部をスパッと水平に切り落とした。
その瞬間、むせ返るような、そして人間の理性を直接破壊するような『圧倒的なメロンの甘い香り』が、庭中に大爆発を起こした!
切り取られた断面からは、エメラルドグリーンと黄金色が美しく混ざり合った、信じられないほどジューシーで透き通るような果肉が顔を覗かせている。
俺は中身を魔法で軽くクラッシュさせて果汁を抽出し、そこに太い竹で作った『特大ストロー』を直接突き刺した。
「グラスなんてチャチなもんは、いらねえ! 『丸ごと100%・超巨大メロンジュース』だ! 直接吸い上げろォォォッ!!」
俺は竹のストローに口をつけ、肺活量の限界まで思い切り吸い込んだ。
……ズズズッ!
ドロァァァァァァァンッ!!!!
「んんんんんんんんんッ!!!!??」
俺の脳内糖度メーターが完全に限界を突破し、メルトダウンして蒸発した。
美味い!! 美味すぎる!! なんだこの、フルーツという概念そのものを根底から覆す暴力的な甘さは!!!
水も砂糖も一切加えていない、完全無欠の果汁100%。
とろけるような極上の果肉の食感と共に、ハチミツよりも甘く、それでいて驚くほど爽やかで突き抜けるような『虹色の果汁』が、津波のように喉の奥へと猛烈な勢いで流れ込んでくる!
飛竜タンの濃厚な脂と塩気を、冷たくて暴力的に甘いメロンジュースが完璧に洗い流し、口の中を至福の果実感と多幸感で満たし尽くすのだ!
「甘ぇぇぇぇぇぇっ!!! なんだこれは! ただのメロンじゃねえ! 一口飲んだだけで、全身の細胞に力がみなぎって、視界がクリアになるぞ!!」
極厚飛竜タンのガツンとくる塩気と脂。そして、超巨大メロンジュースの暴力的な甘みとみずみずしさ。
この無限ループが、俺たちのBBQをこの世の天国へと昇華させていた。
◇
限界まで腹を膨らませ、幸せな溜息をつきながら、俺はふと冷静になって考えた。
(……この虹色メロン、味は文句なしに最高だったが、一体どれくらいの市場価値があるんだ?)
俺は、半分ほど残っていた巨大メロンの果肉を、システムウィンドウの鑑定・納品枠へとスキャンさせてみた。
ハイパーインフレはデノミで終わった。今は正常な経済だ。せいぜい、数千ポイントか、良くて数万ポイントになれば御の字だろう。
ピロリンッ♪
【査定完了:神話級・虹色王冠メロン(半玉)】
【買取価格:500,000 新pt(1玉換算で100万ポイント)】
「……………………………………………………え?」
俺は、画面に静かに表示された『100万ポイント』という、桁のおかしな数字を五度見した。
「い、いっ……100万ポイントォォォッ!?」
俺の素っ頓狂な叫び声に、ガリウス所長が慌てて魔導茶を吹き出しながら画面を覗き込む。
「なっ!? ひゃ、100万!? ルークス君、このメロンの詳細情報を早く見てみたまえ!」
俺は震える指で、詳細情報をタップした。
【※特記事項:本果実の果汁には、服用者の『全ステータス永続上昇』および『超回復(若返り)』の極大バフ効果が確認されています。王族・貴族階級、および世界中の富裕層において、不老不死の霊薬として天文学的な需要と高値で取引される幻の品です】
「……全ステータス永続上昇……若返り……富裕層の天文学的な需要……!」
その瞬間。
システムからの理不尽な搾取に疲れ果て、すっかり牙を抜かれて「スローライフ最高、借金ゼロ最高」などと毒気を抜かれて丸くなっていた俺の瞳の奥に。
かつての、あの『ガメついポイント亡者』であり、ブラック企業で培った『悪知恵とビジネスセンス』の鋭い光が、ギラリと、強烈に、そして鮮やかに蘇った。
「ふ、ふははは……はーっはっはっはっ!!」
俺は、顔を覆って腹の底から、邪悪な笑い声を上げた。
「ル、ルークス君……? 顔つきが、借金地獄で追い詰められていた時よりも、はるかにヤバいことになっているが……?」
「ガリウス所長……ただの美味い野菜を、数百ポイントで薄利多売してる場合じゃねえんですよ!!」
俺はシステムの画面を、力強く叩き割りそうな勢いで指差した。
「1玉100万ポイントだぞ!? これを俺のチート農業で量産してブランド化し、富裕層や王侯貴族向けに高値で『独占販売』する! なんなら、毎月この若返りメロンをお届けする『超高額サブスク契約』で、金持ちから合法的にポイントを永遠に搾り取ってやる! システムに搾取される側はもう卒業だ! 今日から俺は……富裕層からポイントを巻き上げる『プラットフォーマー(独占企業)』として、この世界で成り上がってやるぜェェェッ!!」
俺は手始めに、余っていたメロンの半分をシステムにそのまま納品した。
チャリンッ!!
【口座残高:10,003 新pt ⇒ 510,003 新pt】
たったの一撃、ただのデザートの残りを売っただけで、残高が50万ポイントを突破した。もちろん、税金もペナルティも引かれない、完全なる『純利益』だ。
「待ってろよ、1億ポイント……!! ただの限界集落の農民のまま終わる俺じゃねえ! この『虹色王冠メロン』を武器にして、異世界経済の頂点に立ってやるからなァァァッ!!」
夕日に赤く染まるログハウスの庭で。
極厚牛タンの圧倒的な満足感と、超絶レア果実による莫大な富の予感に包まれながら、ルークスの「1億ポイントへの本当の快進撃(成り上がり)」が、爆発的な勢いと共に今、高らかに幕を開けるのだった。
**【読者へのメッセージ】**
第三百十八話、いかがでしたでしょうか!
ただのスローライフで終わるルークスではありませんでした(笑)。
新しく仲間(?)になった幻獣「モフ丸」がもたらした謎の種。それをチート農業で育てたら、なんと1玉100万ポイントの価値がある「神話級・虹色王冠メロン」が誕生! 若返り効果のあるこのメロンで、ルークスは単なる農家から「富裕層向けのブランドビジネス(独占企業)」へと完全に覚醒しました!
そして今回の飯テロは「飛竜の極厚切りネギ塩レモンタン」&「丸ごと巨大メロンジュース」!
炭火でカリッと、中はサクッと噛み切れる極厚牛タンに、ネギ塩とレモンの爽やかなパンチ! その脂を、果汁100%の暴力的に甘いメロンジュースで洗い流すという、絶対的王者のBBQをお届けしました。深夜の牛タンテロ、破壊力抜群です!
理不尽な税金地獄は終わり、ここからはルークスが「ビジネスの覇者」として1億ポイント(ゲームクリア)へと一気に駆け上がる爽快な成り上がりストーリー(シーズン2の本番)が本格スタートします!
次回もノンストップでコメディと飯テロをお届けしますので、ぜひブックマークと評価をお願いします!




