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ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります  作者: はぶさん


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第三百十七話:狂気の市場(マルシェ)出店。極厚豚バラ串の脂と、大盛り屋台焼きそばのソースの焦げる匂い

「……最高だ。今日も、信じられないくらい見事な豊作じゃねえか」


 自分たちの手で組み上げた3階建ての『神話級・大農園ログハウス』。その朝日に照らされた広いウッドデッキから庭を見下ろし、俺は満足げに深く、長く息を吐き出した。

 眼下に広がるのは、俺の最強のチート農業スキル『大地の息吹・極』によって開拓された、極上の黒土が広がる広大な畑。

 そこには、朝露を弾いて黄金の光を放つ『神話級・太陽の極太もろこし』が森のように鬱蒼と茂り、隣のうねでは、まるで最高級のルビーのように赤く透き通った『神話級・紅玉の完熟トマト』が、重みで茎をしならせるほどにたわわに実っている。


 借金地獄、ブラックリスト、理不尽な税金と固定資産税。

 そんなこの世のすべての地獄を煮詰めたようなシステム(国税庁)の搾取から完全に解放された今、俺たちが育てたこの作物たちは、1ポイントのピンハネもされることなく、100%純粋な俺たち自身の「財産」だった。


「ルークス様、おはようございます! 今日も畑の野菜たちが、キラキラと嬉しそうに輝いていますわね!」

「ガウッ! これだけ大量に実ると、壮観を通り越して笑えてくるぜ! でも主よ、これだけ大量の野菜、俺たちだけで食いきれるのか?」


 エプロン姿のエレナ様と、大きなあくびをしながら現れたフェンが、山なりの野菜を見て首を傾げる。

 俺は、ニヤリと不敵な、それでいてどこまでも晴れやかな笑みを浮かべた。


「食いきれねえ分は、売るに決まってるだろ! だがな、今日はシステムウィンドウを開いて【一括納品】のボタンをポチッと押すだけの、あの無機質で味気ない作業は絶対にやらねえ!」

「ほう? システムに納品しないとなると、どうやってポイントに換えるつもりだい、ルークス君?」

「ガリウス所長! 俺たちは今日、このログハウスの近くにある活気あふれる街……『自由市場マルシェ』に直接出向いて、俺たち自身の足と声で、真っ当な『商売』をするんだよォォォッ!!」


 システムという見えないブラックボックスに吸い込まれるのではなく、生きた人間を相手に、自分たちの育てた作物を手渡しで売る。

 それこそが、農民にとって、いや、モノを作るすべての人間にとっての、本当の喜びのはずだ。


「さあ! 荷車に野菜を限界まで積み込め! 俺たち『最強農園』の、記念すべき初出店だァァァッ!!」


 ◇


 ログハウスから街道を抜け、たどり着いた近隣の大きな街の広場。

 そこは、色とりどりのテントが立ち並び、新鮮な食材や珍しい工芸品を求める人々の熱気とざわめきで溢れかえる、活気に満ちた『自由市場マルシェ』だった。


 広場を管理する優しそうなギルドの職員に、正規の出店料(ショバ代)である「たったの500ポイント」を支払う。

 法外なみなし課税も、理不尽な場所代のぼったくりも、抜き打ちの資産調査も一切ない。真っ当に場所を借りて、真っ当に商売をする。ただそれだけの当たり前のことが、涙が出るほど嬉しかった。


「よし! 一等地を確保したぞ! 荷車から野菜を並べろ! 見せ方を工夫するんだ、太陽の光が一番綺麗に当たる角度にトマトを積め!」


 俺たちは用意した木箱の上に、朝採れの『太陽の極太もろこし』と『紅玉の完熟トマト』を山のように積み上げた。

 泥を綺麗に洗い落とされた野菜たちは、まるで宝石箱をひっくり返したかのように、周囲のどの露店よりも圧倒的な輝きと、むせ返るような濃密な大地の匂いを放っていた。


「さァさァ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!! 本日朝採れ、農薬ゼロ、魔法の黒土で育てた神話級の極上野菜だァァァッ!! スーパーに並んでるようなチャチな代物とは訳が違うぜ!!」


 俺が腹の底から声を張り上げると、市場を行き交う人々が、その圧倒的な野菜の輝きと香りに引き寄せられるように、次々と足を止めた。


「まあ、なんて綺麗なトマトなの……。でも、お高いんでしょう?」

「そこの奥さん! 騙されたと思って、まずはこのトマトを一口食ってみてくれ!! 試食はタダだ!!」


 俺は紅玉の完熟トマトをナイフでスパッと切り分け、果汁が溢れ出すその一口大の欠片を、年配の女性客に手渡した。


「えっ……? あ、甘い……!! 何これ、フルーツみたいに甘くて、でもトマトの濃い旨味がギュッと詰まって……こんな美味しいトマト、生まれて初めて食べたわ!!」

「だろ!? この極太もろこしなんか、生で齧っても果物以上に甘いんだぜ! さあさあ、今ならトマト一山でたったの500ポイント! もろこしは3本で1000ポイントの大盤振る舞いだァァァッ!!」


 その一口の試食が、完全に導火線に火をつけた。

 女性客の驚嘆の声を聞きつけた周囲の客たちが、我先にと俺たちの露店に殺到し始めたのだ。


「私にもそのトマトをちょうだい! 3つ……いや、5つお願い!」

「こっちのトウモロコシ、10本包んでくれ! 孫が野菜嫌いで困ってたんだが、これなら絶対に食べる!」

「おおっ、この輝きは本物だ! 兄ちゃん、この野菜、全部俺のレストランで買い取らせてくれないか!?」


 飛ぶように、という言葉すら生ぬるい。

 俺たちが並べた神話級の野菜たちは、文字通り「爆発的」な勢いで客の手に渡っていった。

 エレナ様が美しい笑顔で袋に詰め、マリアさんが丁寧にお釣りを渡し、ガリウス所長が的確な調理法を客にレクチャーし、フェンが威風堂々とした看板犬として愛嬌を振りまく。


「まいどありィィィッ!! たくさん食って、元気になれよ!!」


 チャリンッ! チャリンッ! ジャラジャラジャラッ!!

 システム画面の無機質な数字が増えるのではない。お客さんが笑顔で手渡してくれる重たいポイント硬貨が、俺の手元の革袋に物理的な重みを持って、次々と貯まっていく。


 お客さんの「美味しい」「ありがとう」という生きた声。

 人と人とが顔を突き合わせ、価値と価値を交換し合う、血の通った『商売』。


「……最高だ。自分で作ったモノを、喜んで買ってもらえる。ただそれだけのことが、こんなにも心が震えるほど嬉しいなんてな……!」


 俺は、汗を額に浮かべながら、商売という営みの真の喜びを、全身の細胞の隅々まで噛み締めていた。


 ◇


 昼過ぎ。

 山のように積まれていた数百本の極太もろこしと、何十箱もの完熟トマトは、たったの数時間で文字通り『完売スッカラカン』となった。


「ふははははっ! 見たかお前ら! 完売御礼だ!! 革袋がはち切れそうにパンパンだぜ!!」

「やりましたわね、ルークス様! あんなにたくさんのお客様の笑顔が見られて、わたくし、胸がいっぱいですわ!」

「ああ、労働の後のこの達成感。システムへの自動納品では絶対に味わえない、素晴らしい経験だったよ」


 俺たちは空になった荷車の前で、満面の笑みでハイタッチを交わした。

 そして、俺の腹の虫が、労働の終わりを告げるように「グゥゥゥゥッ」と派手な音を鳴らした。


「よし! 今日は大稼ぎしたんだ! 市場の美味いもんを、端から端まで食い尽くすぞォォォッ!!」


 俺たちが市場の奥の『飲食屋台エリア』へと足を踏み入れた瞬間、腹の底を直接殴りつけるような、強烈で、暴力的で、抗いがたい匂いが襲いかかってきた。

 高級食材の繊細な香りではない。炭火と脂、そして『ソース』が焼ける、お祭りの屋台特有のあのジャンクな匂いだ。


「まずはあれだ!! 『極厚豚バラ串』の屋台だァァァッ!!」


 屈強な大将が、煙をもうもうと上げる巨大な炭火の焼き台で、俺の顔ほどの長さと厚みがある『特大の豚バラ肉を刺した串』を豪快にひっくり返している。

 ジュワァァァッ!!と滴り落ちた豚の極上の脂が炭火に直撃し、ボワァァァッ!と巨大な炎が上がり、肉を香ばしく包み込む。

 そこに大将が、ニンニクと果実がたっぷり溶け込んだ秘伝の『甘辛特製醤油ダレ』をドップリと漬け、再び炭火へ。

 焦げたタレと豚の脂の匂いが核爆発を起こし、俺たちの理性を一瞬で焼き切った。


「大将! 極厚豚バラ串、全員分だ! 一番デカいやつをくれ!!」


 手渡された串は、ずっしりと重く、熱気と脂がポタポタと滴り落ちている。

 俺は火傷も構わず、その分厚い肉の塊に大きく口を開けてガブリと噛み付いた!


 ……ザクッ!!

 ブリンッ! ジュワァァァァァァァッ!!!!


「んんんんんんんんんッ!!!!??」


 俺の脳内ジャンクメーターが、限界を突破して粉砕された。

 美味い!! なんだこの圧倒的な脂の暴力は!!!

 炭火でカリッカリに焦げた表面を噛み破った瞬間、分厚い赤身肉の強烈な歯ごたえと共に、中から熱々で甘い『豚の極上脂』が、ドバァァッと口の中に大洪水を巻き起こす!

 そこに、焦げてカラメル状になった甘辛いニンニク醤油ダレが完璧に絡みつき、脂のしつこさを強烈な旨味へと変換して、胃袋を「もっと食わせろ!」と激しく急かすのだ。


「う、美味ぇぇぇぇぇぇっ!!! 脂が! タレの焦げた匂いがたまらねえ!! 串肉は上品に食うもんじゃねえ、こうやって顔を汚しながら食うのが一番美味いんだよォォォッ!!」

「はふはふっ、あちゅっ! お肉が分厚くて、噛みごたえが抜群ですわーっ! 甘辛いタレが、お口の周りについても気になりませんの!」

「ガツガツガツ! これだ! 肉を串から直接引き千切るこの野生の快感! たまらんぞ!!」


 極厚豚バラ串を一瞬で平らげ、口の周りをタレと脂でギトギトにした俺たちの鼻腔を、さらに凶悪な匂いが貫いた。


「まだだ! 次は屋台の絶対王者……『大盛り屋台焼きそば』だァァァッ!!」


 巨大な分厚い鉄板の上で、ねじり鉢巻の親父が、山盛りの豚肉、ざく切りのキャベツ、そして極太のモチモチ麺を、両手のヘラでカチャカチャとリズミカルに炒めている。

 親父が柄杓で、ドロリとした漆黒の『特製フルーツブレンド・濃厚ソース』を鉄板にぶっかけた瞬間。


 ――ジュワァァァァァァァァァァァッ!!!!!!


「うおおおおおおっ!! ソースだ! ソースが鉄板で焦げる匂い!! 日本人のDNAが強制的に食欲を爆発させる匂いだァァァッ!!」


 高温の鉄板でソースが焦げ、酸味と甘み、そしてスパイスの香りが強烈な湯気となって立ち昇る。

 鉄板から直接プラスチックの容器に山盛りに盛られ、そこに緑鮮やかな『青のり』と、ルビーのように赤い『紅ショウガ』がドサリと乗せられる。このジャンクな色彩のコントラストこそが、屋台飯の極致だ。


「熱いうちにすするぞ!! いただきます!!」


 俺は割り箸を割り、湯気が立ち昇る極太麺をガッツリと掴んで、ズズズズッ!と豪快にすすり上げた。


 ……モチッ。

 ズズズッ、ジュワァァァァァァァッ!!!!


「んんんんんんんんんッ!!!!??」


 俺の全身の細胞が、ジャンクの極みとも言える旨味に歓喜の産声を上げた。

 美味い!! なんだこの、B級グルメの王道にして究極の完成形は!!!

 極太のモチモチ麺に、鉄板で焦がされた濃厚で甘辛いフルーツソースが、これでもかとネットリと絡みついている。

 噛み締めるたびに、豚肉の脂の旨味と、鉄板で炒められて甘みを増したキャベツのシャキシャキ感が絶妙なアクセントになり、飽きを一切来させない!

 そして何より、濃厚すぎるソースの味を、青のりの磯の香りと、紅ショウガの強烈な酸味と辛味がスパッと切り裂き、口の中を無限にリセットしてくれるのだ!


「う、美味ぇぇぇぇぇぇっ!!! 高級フレンチや、気取ったレストランの料理より、青空の下のベンチで食うこういうジャンクな屋台飯が、結局一番美味いんだよォォォッ!!」

「はふっ、ズズズッ! おソースの味が濃くて、お祭りの味がしますわーっ! 紅ショウガのピリッとした辛さがたまりませんの!」

「ズルズルズルッ! なんだこの茶色い麺は! 先ほどの肉の脂を、この酸味のある麺が完璧に中和して、無限に腹に入っていくぞ!!」


 俺たち全員が、広場のベンチに並んで座り、口の周りをソースと青のりだらけにして、大盛り焼きそばを狂ったようにすすり続けた。

 稼いだポイントで、美味いもんを腹いっぱい食う。

 理不尽な税金も、システムからの搾取も、ここには何一つ存在しない。

 ただ、商売の喜びと、美味い飯で満たされる多幸感だけが、この平和な市場の空気に満ち溢れていた。


 ◇


 腹がはち切れそうになるまで市場の屋台を食い尽くし、大満足でゲップをしながら、俺たちは夕暮れに染まる市場の石畳を歩いていた。


「最高に美味かったな! 自分たちで育てた作物を売り、真っ当に稼いだポイントで、美味いもんを食う。……これが、これこそが本当の経済の回し方ってもんだ!」


 俺は、重くなった革袋をポンポンと叩きながら、仲間たちと満面の笑みで笑い合った。

 その時だった。


「キュゥゥ……?」


 ふと、路地裏の薄暗がりから、ひょっこりと何かが姿を現した。

 それは、真っ白でフワフワの毛並みを持ち、大きな耳と、サファイアのように青く澄んだ瞳を持つ、見慣れない『モフモフの小動物(幻獣の子供?)』だった。


「……ん? なんだこいつ。犬……いや、キツネか?」


 その小動物は、俺の足元にトコトコと歩み寄ってくると、俺のズボンのポケットから少しだけはみ出していた、売り物の『極太もろこしの葉っぱ』の切れ端を、小さな口でシャクシャクと嬉しそうに齧り始めたのだ。


「キュゥ! キュイィィ!」


 もろこしの葉っぱの美味しさに驚いたのか、その小動物は目を輝かせ、もっとくれとばかりに俺の足元にスリスリと体をすり寄せてくる。


「あらまぁ! なんて可愛らしい子ですの!」

「ガウッ! こいつ、不思議な魔力を微かに放ってやがる。ただの動物じゃねえな」

「……ふははっ。どうやら俺たちの神話級の野菜は、人間だけじゃなく、こんな珍客の胃袋まで掴んじまったらしいな」


 俺はしゃがみ込み、そのモフモフの頭を優しく撫でてやった。

 夕日に照らされる平和な市場の片隅。理不尽な搾取システムから完全に脱却した俺たちの前に現れた、新たな、そして不思議な出会い。


「よし! お前、うちの畑に来るか? 美味しい野菜なら、腹いっぱい食わせてやるぜ!」


 モフモフの小動物が「キュゥ!」と元気に鳴いて飛びついてくるのを受け止めながら、ルークスは新たなる冒険と、さらに広がるワクワクする世界への予感を胸に、希望に満ちた最高の笑顔で夕暮れの街路を歩き出すのだった。


**【読者へのメッセージ】**

第三百十七話、いかがでしたでしょうか!

ついに理不尽なシステム納品から卒業し、活気あふれる市場マルシェで直接対面販売に挑戦したルークス一行!

神話級の極太もろこしと完熟トマトが、試食を機に「飛ぶように売れる」爽快感! お客さんの笑顔と直接の「ありがとう」、そして革袋にチャリンと物理的に貯まっていくポイントの重み。これこそが商売の本当の喜びですね!

そして、大稼ぎした後の屋台飯買い食いテロ!

炭火で脂が滴り炎が上がる「極厚豚バラ串」からの、鉄板で濃厚フルーツソースが焦げ付く「大盛り屋台焼きそば」!!

高級料理の繊細さとは無縁の、青のりと紅ショウガが彩る暴力的なまでのジャンクなシズル感。お祭りの屋台のあの匂いを、画面越しにたっぷりとお届けいたしました!


今回も、ショバ代のぼったくりや謎の税金徴収は【一切なし】の完全平和なハッピーエンドです!

そしてラストに現れた、もろこしの葉っぱを齧る見慣れない「モフモフの小動物(幻獣?)」!

最高の拠点と商売のルートを確立したルークスたちに、この新たな出会いがどんなワクワクをもたらすのか!?

次回からも、ストレスフリーな開拓と、涎が出るほどの極上飯テロをお届けしますので、ぜひブックマークと評価をお願いします!

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