第三百十四話:狂気の原点回帰(チート農業)。神話級・太陽の極太もろこし焦がし醤油バターと、歓喜の正当報酬
「……空が、信じられないくらい青いな」
雲一つない、どこまでも高く澄み切った快晴の空を見上げ、俺はキャンピングカーの前に立ち、胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込んだ。
肺の奥深くまで満たされる乾いた荒野の風が、これほどまでに甘く、美味く感じたことは、この異世界に転生してきてから一度もなかった。
システム(中央銀行)が突如として発動した、国家の最終兵器『デノミネーション(新通貨切替)』。
ハイパーインフレによって俺が一時的に手にした「数兆ポイント」という天文学的な富は、たったの「3新ポイント」へと無慈悲に圧縮され、電子の海の藻屑と消え去った。
だが、それは同時に、俺の首を永遠に締め上げ、魂すらもすり潰そうとしていた『約8000万ポイントの借金』も、複利で無限に増殖するリボ払いの呪縛も、経済活動を完全に封殺するブラックリストの烙印も、すべてが完全にリセットされ、消滅したことを意味していた。
「所持金、たったの3ポイント。……ふっ、上等じゃねえか。借金ゼロ! 滞納ゼロ! ブラックリスト解除! 今の俺は、誰にも、何にも縛られない、完全に自由な身なんだ!!」
俺は太陽に向かって両腕を力強く突き上げ、魂の底から湧き上がる歓喜の叫びを荒野に響き渡らせた。
もう、稼いだ端から累進課税でむしり取られる恐怖に怯える必要はない。ケースワーカーの冷酷な監視カメラを気にする必要もない。悪徳業者に足元を見られてピンハネされることも、不条理な固定資産税に泣くこともないのだ。
「ルークス君! 顔色がすこぶる良いね! 重い憑き物がすっかり落ちたような、本当に清々しい笑顔じゃないか!」
「ルークス様! わたくしたち、またここから、何のしがらみもないゼロからスタートできますわね!」
ガリウス所長とエレナ様が、心底嬉しそうに駆け寄ってくる。フェンも喜びを爆発させるように尻尾をちぎれんばかりに振り回し、シルフィも満面の笑みを浮かべて俺の周りをぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
「ああ! 小賢しいマネーゲームや、セコい税金対策、法廷の抜け穴探しなんてものはもう金輪際終わりだ! 読者……いや、世界が俺たちに本当に求めているのは、理不尽な搾取に耐えて血の涙を流す姿じゃない! ワクワクするような圧倒的な開拓と、純粋で、ひたすらに美味いメシだ!」
俺はアイテムボックスの奥底から、長らくその真価を発揮できずに燻っていた、俺の最大の相棒を取り出した。
太陽の眩しい光を反射し、白銀のオーラを神々しく放つ『真・アダマンタイトの鍬』。
「初心に帰って、真っ当な農業だ! 俺の本当の力……最強農民のチートスキルを、とくと見やがれェェェッ!!」
俺は白銀の鍬を天高く振りかぶり、ひび割れ、カチカチに乾ききった不毛の荒野に向かって、全身全霊の力を込めて振り下ろした。
ブラックリスト期間中はシステムによって完全に封印され、発動することすら許されなかった、俺の規格外の力が今、大爆発を起こす。
「超絶農業スキル……『大地の息吹・極』ッ!!!!」
ズドォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
鍬の刃が地面に激突した瞬間、大気を激しく震わせる轟音と共に、荒野の硬い大地がまるで生き物のように波打って隆起した。
魔法陣が幾重にも展開し、莫大な魔力が大地に注ぎ込まれる。乾ききった土砂は一瞬にして、極上の水分とあり余るほどの魔法養分をたっぷりと含んだ『神話級の黒土』へと変貌していく!
見渡す限りの不毛の地が、地平線の彼方まで続く、完璧な等間隔の畝を持つ広大な超一流の農地へと、文字通り「一瞬」で塗り替えられたのだ!
「おおおおおおっ!! す、凄まじいですわルークス様! 一瞬で、見渡す限りの魔法の畑が完成しましたの!」
「ガウッ! 大地が喜んで震えているのが分かるぞ! これぞ主の真骨頂! 血沸き肉躍る圧倒的なパワーだぜ!!」
「ふははははっ! これだよこれ! この圧倒的な無双感(爽快感)! チマチマした土木作業もいいが、やっぱり俺は最強のチート農民なんだよォォォッ!!」
俺は歓喜の高笑いを上げながら、アイテムボックスに一つだけ残っていた大切な種を、ふかふかで温かい極上の黒土に丁寧に植え付けた。
そして、両手をかざし、チート級の成長促進魔法を畑全体に惜しげもなく注ぎ込む。
ズゴゴゴゴッ……! メキメキメキッ!!
種を撒いてから、わずか数分。
黒土を力強く突き破り、緑色の太くたくましい茎が、まるで天を貫く槍のように急成長を遂げる。
青々とした巨大な葉が太陽の光を全身で受け止め、茎の節々から、俺の腕の太さほどもある巨大な果実がボコボコと実り始めた。
【鑑定結果】
【対象:神話級・太陽の極太もろこし】
【状態:完全成熟・採れたて(果汁1000%)】
【特徴:大地の神話級の養分と、太陽の光を限界の限界まで蓄えた至高のトウモロコシ。あらゆるフルーツを凌駕する暴力的な甘みと水分を内包する】
「よし! 文句なしの大豊作だ! 泥水すすって食った貧乏飯でも、ヤケクソのジャンクフードでもない、自分たちのチートパワーで育て上げた最高の食材! 一番美味い『採れたて』を、すぐに食うぞ!!」
◇
俺はキャンピングカーの前に巨大な焚き火を熾し、特大の頑丈な金網をセットした。
もぎたての『太陽の極太もろこし』の分厚い緑の皮をベリベリと剥くと、中からは真珠のようにパンパンに張り詰め、黄金の光を放つ粒が、眩しいほどに整然と並んでいた。
それを、熱気立ち昇る熱々のアミの上へ、豪快にドカンと乗せる。
パチッ、パチパチッ!
直火に炙られ、トウモロコシの表面の水分が弾け、ほんのりと美しい焦げ目をつけ始める。すでにこの時点で、コーン特有の甘く優しい香りが立ち昇っている。
だが、最強の農民の飯テロはここからだ。
俺は小鍋に、最高級の熟成たまり醤油と、手持ちのザラメ糖、そして少量の料理酒を煮詰めて作った、ドロリと濃厚な『特製・焦がし醤油ダレ』を用意した。
ハケにそのタレをたっぷりと含ませ、網の上で熱せられている極太もろこしに、何度も何度も、親の仇にトドメを刺すかのように執拗に塗り重ねていく!
――ジュワァァァァァァァァァァッ!!!!!
「うおおおおおっ!! 匂いが! 匂いがヤバすぎる!! 理性が飛ぶぞ!!」
熱い網の上にこぼれ落ちた濃厚な醤油ダレが炭火で焦げ、トウモロコシ自身の暴力的な甘い香りと完全に融合する。
夏祭りの屋台を100万倍のスケールに拡大し、さらに極上の魔法をふりかけたような、日本人ならDNAレベルで絶対に抗うことのできない『焦がし醤油の究極の匂い』が、辺り一帯で大爆発を起こした。
「まだだ! これだけじゃ終わらねえ! ここからが至福の仕上げだ!!」
こんがりと黒光りする醤油の焦げ目がついたアツアツの極太もろこしの上に、俺は分厚く切った『極上・神話級発酵バター』の巨大なブロックをドカンッ!と乗せた。
トロォォォォッ……ジュワァァァァァッ!!!
網の熱気とトウモロコシの熱に当てられた純白のバターが、一瞬にして黄金色の液体へと溶け出し、焦がし醤油がたっぷりと染み込んだトウモロコシの粒と粒の隙間に、まるで滝のように滑り落ちていく!
醤油の香ばしさ、コーンの弾けるような甘い香り、そして発酵バターの濃厚すぎる乳脂肪の匂いが三位一体となり、人間の理性を直接焼き切る『シズル感の極致』へと到達する!
「完成だ! 『神話級・太陽の極太もろこし・限界突破の焦がし醤油バター』!! 火傷なんて気にするな! 熱いうちにガブリといけェェェッ!!」
俺は、火傷しそうに熱い極太もろこしの両端をガシッと掴み、限界まで大きく口を開けて、その黄金と焦げ茶色の粒の並びに力強く噛み付いた。
……パチンッ!!
シャキッ! ジュブァァァァァァァッ!!!!
「んんんんんんんんんッ!!!!??」
俺の脳髄が、暴力的なまでの甘みと多幸感の濁流に飲み込まれ、完全にメルトダウンした。
美味い!! なんだこの、フルーツを遥かに超えた甘さの決壊は!!!
噛み砕いた瞬間、パンパンに張った薄皮がパチンッ!と小気味よく弾け、中から熱々で、信じられないほど甘い『黄金の果汁』が、口の中いっぱいに大洪水を巻き起こしたのだ!
そこに、表面にこびりついた焦がし醤油のガツンとした香ばしい塩気と、粒の奥底まで染み込んだ極上バターの濃厚なコクが完璧に絡み合う。
甘い、しょっぱい、香ばしい、濃厚!
咀嚼するたびにシャキシャキとした心地よい歯ごたえが脳に響き、無限に溢れ出す甘い果汁を、バター醤油の強烈な塩気が「もっと食わせろ」「もっと噛みちぎれ」と急かすのだ!
「う、美味ぇぇぇぇぇぇっ!!! 甘い! 果汁が溢れすぎて溺れそうだ!! やっぱり、自分たちのチートパワーで育てた採れたてのメシが、この世界で一番美味いんだよォォォッ!!」
「はふっ、あちゅっ! ジュワッ! でも、シャキシャキで……お醤油とバターのしょっぱさが、トウモロコシの甘さを限界まで引き立てて……最高に、最高に幸せですわーっ!」
「ガツガツガツ! 芯までバリバリ食っちまいそうなほど美味いぞ! 主よ、お前のチート農業はやはり最強無敵だ!!」
俺たち全員が、口の周りを溶けたバターと焦がし醤油でギトギトに汚し、顔を見合わせてゲラゲラと笑い合いながら、熱々の極太もろこしを狂ったように貪り食った。
借金取りに追われ、焦燥感の中で無理やり胃袋に詰め込んだジャンクフードとは違う。
高く澄み切った青空の下、大好きな仲間たちと共に、自分たちの圧倒的な力で生み出した最高の恵みを、ただ純粋に、腹いっぱい食べる。
これこそが、俺たちが異世界に求めていた真の多幸感、真のスローライフだったのだ。
◇
山のように焼いた極太もろこしを限界まで食い尽くし、パンパンに膨れた腹をさすって大満足でふんぞり返った俺は、システムウィンドウを開いた。
俺の後ろには、まだ納品用として収穫した『太陽の極太もろこし』が、文字通り山積みになっている。
「最高に美味かった! さあ、余った分をシステムに納品だ!」
俺は【一括納品】のボタンを、軽やかな気分でタップした。
ピロリンッ♪
【納品アイテム:神話級・太陽の極太もろこし(極上品)×100本】
【査定完了:10,000 新pt(新ポイント)】
画面に表示された1万ポイントという買取価格。
かつての借金まみれの俺なら「よっしゃ!」と手放しで喜んだだろう。だが、数々の極悪非道な税金と、理不尽なペナルティの地獄を骨の髄まで見てきた今の俺は、無意識のうちにビクッと身構え、歯を食いしばっていた。
「くっ……! 来るぞ。ここから、所得税だの、固定資産税だの、謎のシステム利用手数料だのが引かれて、結局手元にはスズメの涙しか残らねえんだろ!? 俺はもう二度と騙されねえぞシステム!!」
俺は、あの心臓に悪いけたたましいアラート音と、真っ赤な【税金・手数料徴収通知】のポップアップを覚悟して、目をギュッと強く瞑った。
さあ、来い。今回は何を理由に搾取する気だ。
……。
…………。
だが、待てど暮らせど、あのアラート音は鳴らない。
恐る恐る、右目だけを薄く開けると、画面には真っ赤な警告文などなく、ただ一行、静かに、そして黄金色の文字でこう表示されていた。
**【口座残高:10,003 新pt】**
「……え?」
俺は両目を限界まで見開いた。
所持金3ポイント + 今回の納品額10000ポイント = 10003ポイント。
計算が、1ポイントの狂いもなくピタリと合っている。
「ひ、引かれない……? 所得税も、みなし課税も、謎の仲介手数料も、ペナルティも……本当に、1ポイントも引かれてない……。俺が稼いだポイントが、そのまま全部……全額、俺のモノになった……!?」
あまりの信じられない光景に、俺は声を出して全身を震わせた。
「当たり前ですわ、ルークス様!」
エレナ様が、青空の太陽よりも眩しい、心からの笑顔で言った。
「ルークス様はもう、借金も滞納もない、ルールを守る真っ白な一般ユーザーですもの! 正当な労働には、正当な報酬が100%支払われる。それが本来のシステム(世界)の、正しい姿ですわ!」
「……そ、そうか……。そうだよな……。俺の稼いだ金は、俺のモノなんだよな……!!」
俺の両目から、ブワッ!と熱い涙が止めどなく溢れ出した。
稼いでも奪われない。労働の成果が、誰にもピンハネされることなく、1ポイントも欠けることなく、全額自分の手元に残る。
現代社会では当たり前すぎる、あまりにも普通のこと。
だが、理不尽な搾取の嵐を耐え抜き、地獄の底を這いずり回ってきた今の俺にとって、それはこの世のどんな奇跡の魔法よりも美しく、何よりも巨大なカタルシス(感動)だった。
「うおおおおおおおおっ!!!!! 全額振り込まれたァァァッ!! まともに稼げるって、最高だァァァッ!!!」
俺はキャンピングカーの屋根に一気に飛び乗り、青空に向かって魂の底から歓喜の咆哮を上げた。
「見てろよシステム!! 姑息な抜け道探しも、違法な脱税ももうしねえ! 俺はもう一度、この最強の農民スキルで、正々堂々と『1億ポイント』を稼ぎ切ってやるぜェェェッ!!」
理不尽な搾取の時代は、完全に終わった。
焦がし醤油と極上バターの幸福な香りに全身を包まれながら、ルークスは最高の笑顔で涙を拭い、新たなる希望に満ちた「真の1億ポイントへの道(新章)」を、力強く、そして清々しく歩み始めるのだった。
**【読者へのメッセージ】**
第三百十四話、いかがでしたでしょうか!
読者の皆様、長らくの「借金・税金・ペナルティ地獄」にお付き合いいただき、本当にありがとうございました! 皆様のSOSの声に応え、ついにルークスが【完全ポジティブ・原点回帰】を果たしました!
借金ゼロ、ブラックリスト解除の清々しい青空の下、封印していたチート農業スキル【大地の息吹・極】が大爆発! 一瞬で荒野を極上の畑に変える圧倒的な無双感、これぞ異世界ファンタジーの醍醐味ですね!
そして、今回の飯テロは「太陽の極太もろこし・限界突破の焦がし醤油バター」!
直火で炙られた醤油の香ばしさ、溶け出す極上バターの滝。噛んだ瞬間にパチンッと弾ける暴力的な甘さの果汁……! 仲間たちと笑い合いながら食べる至福の採れたて飯、最高にハッピーな時間をお届けしました。
ラストは、納品した報酬が【1ポイントも引かれずに全額振り込まれる】という感動のオチ(笑)。
当たり前のことですが、理不尽な搾取を乗り越えたルークスにとっては涙が出るほどのカタルシスでした。
抜け道を探すのはやめ、最強のチート農民として正々堂々と1億ポイントを目指すルークス! ここから始まる希望に満ちた新章も、ワクワクする開拓と最高の飯テロをお届けしますので、引き続き応援とブックマークをよろしくお願いいたします!




