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ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります  作者: はぶさん


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第三百十一話:狂気の魔王城カチ込み(債務譲渡)。決壊する極厚チーズインハンバーグと、絶望の反社チェック(暴排条例)

「……払えないなら、払える奴に『合法的に』押し付ければいいんだよ」


 固定資産税(更地評価)の追撃を受け、俺の借金はついに『1969万ポイント』という、個人の一生を優に超える絶望的な額に達していた。

 税金、経費、リボ払い、ブラックリスト、みなし課税。システム(国税庁)が支配するこの世界で、まともにポイントを稼いで返すことなど、物理的にも数学的にも不可能だ。


「ル、ルークス君……。押し付けるって、まさか誰かに借金の保証人になってもらうつもりかい? そんなの、誰が引き受けるっていうんだ……」

「ガリウス所長。この世界で一番資産を持っていて、かつ、俺の言うことを『物理的な脅し』で無理やり聞かせられる奴が、一人だけいるじゃないですか」


 俺は、血走り、ドス黒く濁った瞳で、遥か彼方にそびえ立つ禍々しい城……世界を恐怖に陥れる『魔王城』を指差した。


「ま、まさか……ルークス様!? 魔王を討伐して報奨金をもらうのではなく……!?」

「報奨金なんて貰ったら、またシステムに所得税で65%持っていかれるだろうが!!」


 俺はアイテムボックスから、徹夜で書き上げた分厚い羊皮紙の束を取り出し、狂気に満ちた笑みを浮かべた。


「これは『免責的債務引受契約書』だ! 魔王に俺の借金約2000万ポイントを全額引き受けさせる! 俺は債務から完全に免責され、借金は全て魔王のモノになる! 法律の抜け穴を突いた、完璧なリーガル・ハラスメントだァァァッ!!」


 ◇


 キャンピングカーで魔界の荒野を爆走し、俺たちは魔王城の玉座の間へと扉を蹴破ってカチ込んだ。

 玉座には、世界を滅ぼす力を持つという、漆黒のオーラを纏った巨大な魔王が鎮座していた。


『フハハハ……よくぞ来た、愚かなる人間どもよ。我が圧倒的な闇の力で、貴様らを絶望の淵へ――』

「うるせえ!! 前置きはいいから、さっさとここにサインと血判(実印)を押せェェェッ!!」


 俺は魔王の長口上を怒鳴り声で遮り、猛スピードで玉座の階段を駆け上がり、魔王の顔面に分厚い『免責的債務引受契約書』を叩きつけた。


『……は? な、なんだ貴様。勇者の剣ではなく、紙の束……? け、契約書だと?』

「そうだ! 第4条第2項に基づき、甲(俺)の有する一切の債務を、乙(お前)が重畳的ではなく『免責的』に引き受けることに同意しろ! さあ! 印鑑証明を出せ! なければ血判だ!!」

『ま、待て! 我は魔王ぞ!? 世界の半分を――』

「フェン! シルフィ! こいつの両腕を押さえろ! ガリウス所長、契約書の読み合わせ(重要事項説明)を強制実行しろ!!」


 俺は農民の規格外のパワーで魔王の巨体を羽交い締めにし、無理やり親指に針を刺して血を滲ませた。


『や、やめろ! なんだこの理不尽な暴力(リーガル攻撃)は!! 我が……我が世界の王が、こんなよく分からない借金の肩代わり契約を結ばされるなどォォォッ!』


 バンッ!!


 俺は魔王の血塗られた親指を、契約書の署名欄に力強く押し付けた。


「よし!! 契約成立だ!! これで俺の借金1969万ポイントは、法的にすべて魔王のモノになったぞォォォッ!! システムの法律を逆手にとってやったぜ!!」


 ◇


 魔王に借金を押し付け、精神的な重圧から完全に解放された俺の鼻腔を、ふと、強烈に暴力的な『ある匂い』がくすぐった。

 玉座の奥、魔王のプライベート・ダイニングルーム。

 そこには、俺たちが乱入してきたせいで手付かずになっていた、魔王の超豪華な『ディナー』が置かれていたのだ。


「……おいおい。借金を背負ったんだ、これくらい『手付金』として貰っていくぜ?」


 俺は目を輝かせ、ダイニングテーブルに歩み寄った。

 そこに鎮座していたのは、分厚い熱々の鉄板の上でジュージューと音を立てる、魔界和牛を100%使用した巨大で分厚い『極厚チーズインハンバーグ』だった。

 前回の湯豆腐のような繊細な優しさとは対極にある、絶対的なジャンクの頂点。


「うおおおおっ……! 見ろ、この圧倒的な肉の暴力(シズル感)を!」


 鉄板の上で焦げる、濃厚でドス黒い特製デミグラスソースの香り。

 俺は、魔王用の巨大なナイフとフォークを手に取り、パンパンに膨れ上がった極厚ハンバーグの中央に、ゆっくりとナイフの刃を押し当てた。


 ……ムチィッ。


 ナイフを押し返すほどの、凄まじい肉の弾力。

 だが、刃が中心に到達し、ハンバーグの分厚い壁が切り開かれた、その瞬間だった。


 ――ドッバァァァァァァァァァッ!!!!!!


「おおおおおおおっ!!!!」


 決壊した。

 切り開かれた断面から、中に限界まで詰め込まれていた『純白で濃厚なとろけるチーズ』と、魔界和牛から溢れ出す『ドス黒く輝く肉汁』が、まるで噴火した火山のマグマのように、猛烈な勢いで鉄板の上に雪崩れ込んだのだ!

 ジュワァァァァァッ!!と鉄板が悲鳴を上げ、焦げたソースとチーズ、そして肉の脂の匂いが核爆発を起こす!


「さあ! 魔王の晩餐を奪い食うぞ! いただきます!!」


 俺は、肉汁とチーズの海に沈んだ分厚いハンバーグの塊をフォークに突き刺し、大きく持ち上げた。

 ビヨォォォォォォンッ!!

 中に仕込まれていたモッツァレラとチェダーの混合チーズが、どこまでもどこまでも、俺の口元から鉄板まで途切れることなく伸びていく。

 俺は、その熱々の肉の塊を、大きく開けた口に放り込んだ。


 ……ハフッ。

 ガツゥッ! ジュワァァァァァァァッ!!!!


「んんんんんんんんんッ!!!!??」


 俺の脳内ジャンクメーターが限界を突破し、完全にショートした。

 美味い!! なんだこの理性を破壊する暴力的な旨さは!!!

 粗挽きの魔界和牛を噛み締めた瞬間、野性味あふれる圧倒的な『肉の旨味』がガツンと脳を殴りつける。

 だがその直後、中から溢れ出したドロドロの濃厚チーズが肉汁と絡み合い、焦げたほろ苦いデミグラスソースがすべてを包み込んで、口の中を『絶対的なジャンクの快楽』で満たしていくのだ!


「う、美味ぇぇぇぇぇぇっ!!! 肉汁とチーズの洪水だ! 上品なフレンチもいいが、男の胃袋が一番求めてるのは、こういう重厚で下品な味なんだよォォォッ!!」

「はふはふっ、あちゅっ! お口の中が肉汁のプールですわ! チーズが伸びて伸びて……あかん、カロリーの味が最高にギルティですのーっ!」

「ガツガツガツ! なんだこの茶色と白のマグマは! 我の牙が不要なほど柔らかいが、肉の味が濃すぎるぞ! 白飯を、白飯を大盛りで持ってこい!!」


 俺たち全員が、背後で借金を背負わされて泣き崩れる魔王を完全に無視し、顔を肉汁とチーズでテカテカに光らせながら、狂ったようにハンバーグを貪り食った。

 すべてをねじ伏せる圧倒的な肉の力。借金ゼロという最高のスパイスが、ジャンクフードを至高の美食へと昇華させていた。


 ◇


 鉄板の上の肉汁とチーズの一滴までパンで綺麗に拭い取って完食し、極限の満腹感に包まれた俺は、優雅に口元を拭いながらシステムウィンドウを開いた。


「ふはははっ……! 最高のハンバーグだった! さあシステムよ! 魔王の血判が押された、この『免責的債務引受契約書』をスキャンして受理しろ! これで俺の借金は、完全に法的にゼロだァァァッ!!」


 俺は、勝利と完全解脱を確信しながら、【契約書・システム提出】のボタンをターンッ!とタップした。


 ピロリンッ♪

 (※システムが書類を読み込む、軽快な音)


「よしよし。これで俺の借金1969万ポイントは、すべてあの魔王の口座に……ん?」


 画面が黄金色に輝くかと思いきや、突如として画面全体が『赤と黒のパトランプ』のように激しく点滅し始めた。


 ピピッ! ピーーーーッ!!!ピーーーーッ!!!


「……えっ? な、なんだ!? 契約書に不備はないはずだぞ! 印鑑証明の代わりに魔王の血判も押させたし!」


 空中に、これまでで最も巨大で、最も威圧的な『システム・コンプライアンス統括局からの重大警告ウィンドウ』がポップアップした。


 **【システム・法務コンプライアンス部より重要なお知らせ】**

 **【提出された『免責的債務引受契約書』の当事者(乙)に対する、反社会的勢力排除条項バックグラウンド・チェックを実行しました】**


「……は? 反社チェック?」


 **【調査結果:契約相手である『魔王(および魔王軍)』は、世界の半分を脅かす『暴力・破壊活動団体』であり、システム規定における『反社会的勢力』に該当することを確認しました】**


「……………………………………………………え?」


 **【※暴排条例(反社会的勢力排除に関する規約)に基づき、反社会的勢力との間で行われた一切の契約、および債権・債務の移転は『無効(コンプライアンス違反)』となります】**

 **【よって、本債務引受契約は白紙撤回され、負債 19,690,000 pt は引き続きユーザー『ルークス』に帰属します】**


「……な、無効……だと……?」


 チャリンッ。チャリンッ。(※さらに地獄の釜の蓋が開く音)


 **【さらに、反社会的勢力との密接な交際(契約の締結および食事の共にする行為)を重く受け止め、『反社間取引に対する違約金および制裁金』を課します】**


 【借金残高(引受無効):19,690,000 pt】

 【反社取引制裁金(コンプラ違反):-3,000,000 pt】


 【新・借金残高:22,690,000 pt】


 ――静寂。


 焦げたデミグラスソースの香りが漂う魔王城のダイニングで、俺の心臓は完全に、そして永遠に砕け散った。


 契約書は完璧だった。

 法律の抜け穴を突いたはずだった。

 なのに。

 「コンプライアンス(暴排条例)」。

 相手が世界を滅ぼす魔王である以上、それは企業システムから見ればただの『反社会的勢力ヤクザ』。現代社会において、反社といかなる契約も結んではならないというのは、法律以前の『ビジネスの絶対的禁忌ルール』だったのだ。


「………………………………………………ふざ、ふざけるなァァァァァァァァァッ!!!」


 俺は、今日何度目か分からない血の涙を両目から噴出させ、極厚の鉄板に頭をガンガンとぶつけながら泣き叫んだ。


「魔王を『反社会的勢力』扱いして契約無効だとォォォォッ!? なんだそのリアルすぎる現代企業の絶対領域コンプライアンスは!! ファンタジー世界だぞ!? 魔王は勇者が倒すもんだろうが!! そこに暴排条例を適用すんなァァァッ!! しかも反社取引の違約金で借金が増えるってどういうことだバカヤローッ!!」


 税金、自己破産、ブラックリスト、固定資産税。

 そして最後に行き着いた「魔王への債務譲渡」すらも、システム(法務部)の「コンプライアンス」という最強の盾の前には、ただの自爆行為でしかなかった。


「ル、ルークス君……。現代ビジネスにおいて、契約前の『反社チェック』は基本中の基本だよ……。相手が魔王(暴力団)だと分かっていて契約書を交わすなんて、システムから見れば君も『密接交際者クロ』だ……」

「ポイントが! 俺の借金が、魔王のハンバーグを食っただけで2269万に増えたぁぁぁぁっ!!」


 法律の抜け穴を突いて完全解脱するという甘い幻想は、現代企業のコンプライアンス(反社チェック)という最強の壁の前に粉々に打ち砕かれた。

 1億ポイントへの道のりは、ファンタジーの常識すらも書き換える「システムの法務部」によって完全に塞がれ、最強農民はチーズと肉汁の海と、2000万を突破した借金のどん底で、血の涙を流しながら永遠に沈んでいくのだった。


***


**【今回の文字数】4,852文字**

**【読者へのメッセージ】**

第三百十一話、いかがでしたでしょうか。

約2000万の借金から逃れるため、ついに「魔王に借金を押し付ける(免責的債務引受)」という異世界ファンタジー史上最もセコいリーガル・バトルを挑んだルークス!

勇者の剣ではなく契約書を叩きつけ、無理やり血判を押させる姿は、借金取りよりもタチが悪いですね(笑)。

そして奪い食いする魔王のディナー「極厚チーズインハンバーグ」!

ナイフを入れた瞬間に決壊する、純白の濃厚チーズとドス黒い肉汁のマグマ……! 焦げたデミグラスソースの匂いと、どこまでも伸びるチーズの視覚的暴力。深夜に読んではいけないジャンク飯の最高峰をお届けしました。

しかし、食後のハッピータイムを地獄に変えたのは、システムからの【反社会的勢力排除条項(暴排条例)の適用】!

「魔王は暴力・破壊活動団体だから反社ね。だから契約は無効。しかも反社と取引したペナルティ(違約金)払ってね」という、現代企業最大のコンプライアンスの壁をファンタジーに持ち込みました(笑)。魔王に暴排条例を適用するシステム、最強すぎます。

法律の抜け穴すら塞がれ、ついに借金が2200万ポイントを突破したルークス。

もう何をやってもコンプラと税金に引っかかる彼に、明日はあるのか!?

次回もノンストップでコメディと飯テロをお届けしますので、ぜひブックマークと評価をお願いします!


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