第三百五話『狂気の差し押さえ逃れ(ヤケクソ消費)。究極魔改造カレーの限界突破と、絶望のブラックリスト(信用情報)』
「……無理だ。返しても返しても、利息に食われて元本が減らねえ」
キャンピングカーのリビング。システム画面に表示された『借金残高:7,990,000 pt』という絶望的な数字を前に、俺の心は完全にポッキリと折れていた。
税金、経費、産廃代、みなし課税。あらゆるシステムの搾取を乗り越えようとした結果、俺は現代社会の最凶トラップ『リボ払い(複利息)』の沼に沈んだ。
もはや、汗水流して稼いだところで、永遠に増え続ける利息の奴隷になるだけだ。
「……なぁ、ガリウス所長。俺はもう、あのボタンを押すしかないと思うんだ」
「ル、ルークス君……。まさか、システム規約の最終項にある『自己破産申請』のことかい?」
俺の言葉に、ガリウス所長が顔面を蒼白にさせた。
「ああ。自己破産すれば、システム上の借金は『ゼロ』に免責される。1億ポイントの夢は遠のくが、この地獄の無限ローンからは解放されるんだ!」
「や、やめたまえ! 自己破産は借金が消える代わりに、所有している財産……キャンピングカー内のアイテムボックスにある『高級食材』や『換金アイテム』も、全てシステムに『差し押さえ』されて没収されるんだぞ!?」
「…………は?」
俺の時間が停止した。
アイテムボックスの中には、暴食竜の極上肉の余り、巨大アンコウから取った痛風海鮮のストック、さらにはエルフの里で交換した希少なキノコなど、いつか食おうと大事に(ガメつく)貯め込んでいた神話級食材が山ほど眠っている。
「そ、それが全部……借金のカタに没収されるだと……?」
「そうだ。破産申請のボタンを押した瞬間、システムの執行官がデータごと全てを差し押さえにくる!」
「ふざけるなァァァッ!! 税金でむしり取られた上に、俺の飯まで奪われてたまるかァァァッ!!」
俺は血走った目で立ち上がり、アイテムボックスの中身をキャンピングカーの床にドサドサと全てぶちまけた。
「没収されるくらいなら! 全部俺たちの胃袋に隠す(食い尽くす)!! フェン! マリアさん! あるもの全部、一番デカい大鍋に放り込めェェェッ!!」
「ガウッ!? よく分からんが、全部食っていいのだな!?」
「ル、ルークス様!? ドラゴンの霜降り肉と、カニとお魚と白松露を一緒に煮込むなんて、味が喧嘩して『闇鍋』になってしまいますわーっ!」
エレナ様が悲鳴を上げるが、俺の耳には届かない。
債務者特有の「1ポイントたりともシステムに渡さない」という極端なケチ根性と焦燥感が、俺の理性を完全に焼き切っていた。
魔導コンロの火力を最大にし、グツグツと煮え立つ大鍋に、高級食材を後先考えずにメチャクチャにぶち込んでいく。
だが、案の定、鍋の中からは肉の獣臭さと海鮮の磯の匂いが混ざり合った、この世の終わりみたいな混沌の匂いが漂い始めた。
「や、ヤバい! このままじゃ本当に生ゴミの煮込みになっちまう! だが……俺にはアレがある!」
俺は、以前の砂漠のダンジョンで手に入れ、大切に保管していた最終兵器をアイテムボックスから取り出した。
それは、どんな混沌たる食材の喧嘩も、圧倒的な暴力で一つにねじ伏せる奇跡の粉。
「喰らえ! 神話級スパイスの結晶……『アルティメット・カレーパウダー』全弾投下だァァァッ!!」
バサァァァァァァッ!!!!!
黄金色のスパイスの粉末が、カオスの渦巻く大鍋へと降り注ぐ。
その瞬間だった。
キャンピングカーの中を支配していた混沌の匂いが、クミン、コリアンダー、ターメリック、カルダモンといった数十種類のスパイスが織りなす『圧倒的なカレーの芳香』によって、一瞬にして完全にねじ伏せられたのだ!
グツグツ、ドロドロ……!!
「おおおおおっ……! 見ろ、この奇跡の融合を!!」
大鍋の中では、煮込まれてホロホロに崩れたドラゴンの極上肉、巨大カニとアンコウから溶け出した強烈な海鮮のダシ、そして白松露やキノコの芳醇な香りが、スパイスの魔力によって完全に一体化していた。
それはもはやスープではない。具材の原形がなくなるまで溶け込んだ、ドス黒く黄金色に輝く『ドロドロの旨味の塊』へと昇華する、視覚的背徳感の極致!
「差し押さえ(執行官)が来る前に、全部胃袋に隠すぞォォォッ!! 食え! 食いまくれェェェッ!!」
俺は、炊きたての古代砂小麦の白飯を特大の皿に山盛りにし、その上からドロドロの究極魔改造カレーを、お玉で滝のようにぶっかけた。
「いただきます!!」
スプーンで白飯とカレールーをすくい、大きく口に頬張る。
……ハフッ。
ドロゥッ……ズガァァァァァァァンッ!!!!
「んんんんんんんんんッ!!!!??」
俺の脳内スパイスメーターが限界を突破し、完全にメルトダウンした。
美味い!! なんだこの奇跡のグラデーションは!!!
一口食べた瞬間、まずはドラゴンの強烈な「肉の旨味と脂の甘み」がガツンと脳を殴りつける。
しかし次の瞬間、波が押し寄せるように「カニと海鮮の暴力的なダシ」が口の中に広がり、咀嚼するたびに「芳醇なキノコの風味」が鼻腔を突き抜けていく。
別々の高級食材たちが喧嘩することなく、スパイスという名の絶対的指揮者のもとで、完璧なオーケストラを奏でているのだ!
「う、美味ぇぇぇぇぇぇっ!!! 味が! 一口ごとに味が変わるぞ! ドロドロのルーが白飯に絡みついて、スプーンが! スプーンが止まらねえ!!」
「はふはふっ! 辛いですわ! でも、色んなお味が次々と波のように……! あかん、汗が止まりませんけど、お水よりご飯が欲しくなりますのーっ!」
「ガツガツガツ! なんだこの茶色い飲み物は! 我の牙が不要なほど肉が溶けているぞ! もっと、もっと胃袋に流し込ませろ!!」
俺たち全員が、額から滝のような汗を流し、スパイシーな魔力に完全に理性を焼き切られながら、狂ったように魔改造カレーを貪り食った。
「システムに没収される前に食い尽くさなければ」という焦燥感が、最高のスパイスとなり、文字通り胃袋がはち切れんばかりの限界まで白飯とルーを詰め込み続けたのだ。
◇
大鍋いっぱいにあったドロドロのカレーを一滴残らず平らげ、全員が腹をスイカのように膨らませて床に転がった後。
俺は、スパイスの香りが漂う息を吐きながら、パンパンのお腹をさすり、ついにシステムウィンドウの『最終ページ』を開いた。
「ふぅ……。ゲップ。食った、全部食い尽くしてやったぜ。アイテムボックスの中身はスッカラカンだ。これで差し押さえに来ても、奪える財産は1ポイントもねえ!!」
俺は、勝利を確信しながら、【自己破産(免責)申請】のボタンを、震える指でターンッ!とタップした。
チャリンッ♪……ピーーーーッ!
【システム通知:ユーザー『ルークス』の自己破産申請を受理しました】
【財産調査の結果、差し押さえ可能な資産(0 pt)を確認。免責が許可されました】
【現在の借金残高:7,990,000 pt ⇒ 0 pt】
「よっしゃあああああッ!!!! 借金ゼロだァァァッ!! リボ払いの地獄から、ついに解放されたぞォォォッ!!」
俺はキャンピングカーの床でバンザイをし、歓喜の涙を流した。
これでまた、ゼロから1億ポイントを目指して再スタートが切れる。そう、俺が希望に満ちた未来を思い描いた、まさにその直後だった。
ピピッ! ピィィィィィーーーッ!!!
空中に、これまで見たこともない『真っ黒に塗りつぶされた絶望の警告ウィンドウ』が、刑の執行を告げるような重苦しいアラート音と共にポップアップした。
「……えっ? な、なんだ? 借金はチャラになったはずだぞ!」
**【システム・信用情報管理センターからの重要なお知らせ】**
**【免責許可に伴い、ユーザーのステータスは『金融事故(自己破産)』として処理されました】**
「……は?」
**【※当該情報は『指定信用情報機関』に登録され、システム全体に共有されます】**
**【ペナルティとして、本日から起算して『向こう5年間』、以下の経済活動を一切禁じます】**
「……………………………………………………え?」
**【① ポイントショップでの全アイテムの購入(現金一括含む)および売却の禁止】**
**【② システム公式クエストの受注、および報酬の受け取り禁止】**
**【③ 新規ポイント口座の開設、およびクレジットカード(魔導後払い)機能の永久停止】**
――静寂。
スパイシーなカレーの匂いが色濃く漂うキャンピングカーの中で、俺の心臓は完全に、そして物理的に停止した。
借金はゼロになった。
資産隠し(ヤケクソ消費)も完璧に成功した。
なのに。
「ブラックリスト(信用情報の喪失)」。
借金がチャラになっても、失った『社会的信用』は戻らない。5年間、買い物ができない。クエストも受けられない。口座も作れない。
それはつまり、この世界における「経済活動の完全なる死」を意味していた。
「………………………………………………ふざ、ふざけるなァァァァァァァァァッ!!!」
俺は、今日何度目か分からない血の涙を両目から噴出させ、膨れた腹を抱えたままキャンピングカーの床をバンバンと叩き割って泣き叫んだ。
「ブラックリストだとォォォォォッ!? なんだそのリアルすぎる金融のペナルティは!! 借金は消えても、5年間も買い物ができねえなら生活できねえじゃねえか!! 塩ひとつ買えねえってどうやって飯を作るんだよ!! 信用情報ってなんだよ、ファンタジー世界にCIC(指定信用情報機関)を持ち込むなァァァッ!!」
税金、経費、産廃代、みなし課税、そしてリボ払い。
あらゆる経済の壁をすり抜けようとした結果、最後に行き着いたのは「信用」という、現代社会において最も重く、絶対に逃げられない最後の鎖だった。
「ル、ルークス君……。自己破産というのは、そういうことだよ。借金が消える魔法のボタンではなく、社会的な信用を切り売りする最後の手段なんだ……」
「ポイントが! 俺の未来の経済活動が、ブラックリストで完全に死んだぁぁぁぁっ!!」
究極の魔改造カレーで胃袋を満たした代償は、あまりにも大きすぎた。
1億ポイントへの道のりは、ついに「信用情報」というシステムの最終宣告によって完全に、そして物理的に閉ざされ、最強農民はカレーのスパイスと血の涙にむせびながら、果てしない絶望のどん底へと沈んでいくのだった。
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**【読者へのメッセージ】**
第三百五話、いかがでしたでしょうか。
リボ地獄から逃れるため、ついに禁断の「自己破産」に手を出したルークス!
差し押さえを恐れるあまり、神話級食材を大鍋にぶち込んで「ヤケクソ消費」に走る債務者の狂気、笑っていただけましたでしょうか?
そして、混沌とした闇鍋を「アルティメット・カレーパウダー」の暴力でねじ伏せる究極魔改造カレー! 一口ごとに味が変わる奇跡のグラデーションと、ドロドロのルーが白飯に絡みつく限界突破のシズル感。深夜にカレーが食べたくなったなら大成功です!
しかし、満腹と借金ゼロの歓喜の後に待っていたのは、システムからの最終宣告【ブラックリスト(信用情報の喪失)】!
借金は消えても、5年間は買い物もクエストも禁止という、自己破産のリアルな代償(経済活動の死)がルークスを絶望に突き落としました(笑)。
税金から始まり、ついに信用情報まで行き着いたインフレ対策の総決算。
経済活動を完全に封じられたルークスは、これから5年間どうやって生きていくのか!?(笑)
次回もノンストップでコメディと飯テロをお届けしますので、ぜひブックマークと評価をお願いします!




