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ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります  作者: はぶさん


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第三百話:狂気の農業法人化(スタートアップ)。暴食竜の極厚フランベステーキと、絶望の社会保険料(労使折半)

 キャンピングカーのリビング。分厚い『システム税法規約・完全版』を徹夜で読み込み、充血した目を限界まで見開いた俺は、朝日が差し込む窓に向かって、震える声で歓喜の産声を上げた。


「……勝った。ついに、俺はこのクソッタレな税金地獄システムの『完全なる抜け道』を見つけたぞォォォォッ!!」


 稼いでも累進課税で65%没収され、物々交換すら「みなし課税」で貯金を削られる。個人フリーランスとしてポイ活をする以上、俺の利益はどこまでもシステムに搾取される運命にあった。

 だが、俺の血走った目は、規約の奥深くに隠された「黄金のオアシス」を捉えていたのだ。


「いいかみんな! 個人の累進課税は最大65%だ。だが……『法人税』は、一定の利益額までなら税率が圧倒的に低く設定されている! つまり……」

「つ、つまり……?」

 徹夜の俺の異様なテンションに、エレナ様たちが青ざめてゴクリと息を呑む。


「俺が会社(法人)を作って『社長』になり、お前たちを『従業員』として雇う形にすればいいんだよ!! お前たちへの給与や、みんなで食う極上の飯代も『福利厚生費』として全額経費で落とせる! 個人事業主(農民)は今日で卒業だ! 俺は今この瞬間から、最強のスタートアップ企業『株式会社・最強農民』のCEO(最高経営責任者)だァァァッ!!」


 俺はキャンピングカーのテーブルに足を乗せ、成金社長特有のドヤ顔で胸を張った。

 法人成り。これこそが、資本主義社会において税金から身を守る究極のタックス・ヘイヴンである。


「さあ! 我が社の記念すべき創業初日だ! ステークホルダー(俺の胃袋)の利益を最大化するため、最高の『創業記念パーティー(という名の全額経費の飲み会)』を開催するぞ! おい従業員ども! 我が社のシナジー効果を発揮して、極上のメインディッシュを狩りに行くぞ!!」

「ル、ルークス君。横文字を使えば偉いと思っている、典型的なダメ社長のムーブになっているぞ……」

「うるさいガリウス所長! あなたは今日から我が社のヒラ社員だ! 社長の命令は絶対だぞ!」


 俺は完全に「CEO」という響きに酔いしれながら、キャンピングカーを森の深部へと発進させた。


 ◇


 ターゲットは、創業記念というハレの日に相応しい、森の生態系の頂点に君臨する巨大な化け物。

 木々を薙ぎ倒して現れたのは、全身がマグマのように赤黒く燃え上がる、山のように巨大な地竜だった。


 【鑑定結果】

 【対象:暴食竜グラトニー・ドラゴン

 【状態:極上霜降り(食べ頃)】

 【特徴:森の全てを喰らい尽くす暴君。その尻尾テールは、途方もない運動量によって極上の霜降り肉となっている】


『ギュルルルルルルォォォォォォッ!!!!!』


 暴食竜が、獲物を見つけて巨大な顎を開き、灼熱のブレスを吐き出そうとする。

 だが、今日の俺はただの農民ではない。最高経営責任者(CEO)だ。


「フェン! シルフィ! お前たちのタスク(業務)は、あのドラゴンのヘイトを稼いで動きを止めることだ! 給料分しっかり働け!」

「ガ、ガウッ! なんかムカつく言い方だが、美味い肉のためだ! やってやる!」

「ひぃぃぃっ! ブラック企業ですぅぅぅっ!」


 従業員(仲間)たちの身を挺した見事な連携(コンプライアンス無視の激務)により、暴食竜の動きが一瞬止まる。

 その隙を突き、俺は『絶対冷却シャツ』の身軽さで空高く跳躍し、社長自らのトップセールス(物理攻撃)を叩き込んだ。


「農業スキル改め、経営スキル・『大地の解体新書リストラ・カット』ッ!!」


 ズバァァァァァァァンッ!!!!


 『真・アダマンタイトの鍬』が、神話級ドラゴンの極太の尻尾テールの関節を完璧な精度で両断する。

 キャンピングカーほどの大きさがある極上の霜降りテールブロックが、ドッスゥゥン!と地響きを立てて地面に落下した。


「よし! 極上肉の仕入れ(収穫)完了だ! さあ、我が社の創業記念パーティーを始めるぞ!!」


 ◇


 俺はキャンピングカーの前に、特注の「超特大・極厚鉄板」を設置した。

 火魔法の魔導コンロで鉄板をカンカンに熱し、そこに、暴食竜のテール肉を、厚さ5センチはあろうかという暴力的なまでの『極厚ステーキサイズ』にカットして並べていく。

 赤身の間に、芸術的なまでに美しい純白のサシ(脂)がびっしりと入っている。


「いくぞ! お前たち、火傷するなよ!」


 俺は、熱した極厚鉄板の上に、その巨大な肉塊を叩きつけた。


 ――ジュワァァァァァァァァァァッ!!!!!!


 森の静寂を完全に叩き割る、暴力的なまでの焼き音!

 鉄板の圧倒的な熱量に触れた瞬間、ドラゴンの極上の脂が一気に溶け出し、鉄板の上でバチバチと激しく弾け飛ぶ。

 表面のタンパク質が焦げ、メイラード反応によって引き出された野性味あふれる香ばしい肉の匂いが、周囲の空気を完全に支配した。

 表面に完璧な焼き色がついたところで、素早く裏返す。


「仕上げだ! エルフの里で仕入れた、超高級ブランデーの出番だ!!」


 俺は、アルコール度数の高い琥珀色の神話級ブランデーを、熱々の鉄板の上の肉に向かってドバドバと回しかけた。


「祝・株式会社最強農民設立! 炎のフランベだァァァァッ!!」


 ボォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!


 鉄板から、高さ数メートルにも及ぶ巨大な『炎の柱』が夜空に向かって立ち昇った。

 ド派手な視覚効果と共に、アルコールが一気に揮発し、ブランデーの持つ芳醇で甘い香りと、焦げたドラゴンの脂の匂いが核爆発を起こす。

 炎の熱で肉の表面がカリッとコーティングされ、中に極上の旨味が完全に封じ込められた。


「完成だ! 『暴食竜グラトニー・ドラゴンの極厚フランベステーキ・特製ガーリック醤油ソース』!!」


 俺は、大皿にドーンと乗せた極厚ステーキに、ナイフを入れた。


 サクッ……。

 ジュワァァァァァァァァッ!!!!!


「おおおおおおおおっ!!!!!」


 表面のカリッとした焦げ目を切り開いた瞬間。

 美しいルビー色のレアに仕上がった断面から、堰を切ったように、いや、決壊したダムのように、透明で黄金色に輝く『肉汁の洪水』が皿の上に溢れ出したのだ。

 俺は、切り分けた分厚い肉の塊をフォークに突き刺し、全員に配った。


「言葉はいらねえ! 我が社の未来に、いただきます!!」


 俺は、肉汁が滴る極厚のステーキを、大きく口を開けて放り込んだ。


 ……ガブリッ。

 ムチィッ。

 ドッバァァァァァァァァッ!!!!


「んんんんんんんんんッ!!!!??」


 俺の脳髄が、肉の旨味で完全にメルトダウンした。

 美味い!! なんだこの圧倒的な暴力は!!

 噛み締めた瞬間、歯を押し返すような力強い弾力の中から、暴食竜が溜め込んだ極上の脂と肉汁が、口内という口内を激しく蹂躙する。

 ブランデーの甘い香りが鼻を抜け、特製ガーリック醤油ソースのガツンとした塩気とニンニクのパンチが、ドラゴンの脂の甘みを限界突破の次元へと引き上げていく。

 分厚い肉を喰らっているという、根源的な快楽。


「う、美味ぇぇぇぇぇぇっ!!! 外はカリカリなのに、中はとろけるように柔らかい! 肉汁が! 肉汁が溺れるほど溢れてくるぞォォォッ!!」

「はふっ、ジュワッ! あかん、これはあかんですわ! お肉の旨味が強すぎて、理性が吹き飛びますのーっ! 社長最高ですわーっ!」

「ガツガツガツ! 美味い! 美味すぎる! 一生この会社についていくぞCEO!」


 俺も、エレナ様も、フェンもシルフィも、全員が顔を肉汁と脂でテカテカに光らせながら、狂ったように極厚ステーキを貪り食った。

 これ以上ないほど王道で、最高に美味い「肉の宴」。

 法人化の恩恵(全額経費)というスパイスが、肉の味をさらに格別なものにしていた。


 ◇


 巨大なドラゴンのテール肉を骨の髄までしゃぶり尽くし、鉄板に残った肉汁の一滴までパンで拭い取って完食した後。

 俺は、脂でテカテカになった唇を拭いながら、最高経営責任者の余裕の笑みを浮かべてシステムウィンドウを開いた。


「ふはははっ! 最高の創業記念パーティーだった! しかも、この極上の食事代は全額『福利厚生費』として経費で落ちる! 法人税の恩恵で、俺の利益はシステムから完全に守られたんだ!! これぞスタートアップの完全勝利だぜ!!」


 俺が勝利の美酒(ブランデーの残り)をグラスに注ごうとした、まさにその時だった。


 ピピッ! ピーーーーッ!!!


 空中に、システムからの無慈悲な『真っ赤な請求書ウィンドウ』が、けたたましいアラート音と共にポップアップした。


「……え? な、なんだ? 俺はまだ、今月の売上は1ポイントも上げてないぞ?」


 **【システム通知:ユーザー『ルークス』による、株式会社の設立および従業員の雇用を検知しました】**

 **【法人登記の完了に伴い、以下の『法定固定費』の毎月強制天引きを開始します】**


「……は?」


 **【①『社会保険料(健康保険・厚生年金)』:従業員(フェン、シルフィ、エレナ、マリア、ガリウス)5名分。※労使折半規定に基づき、会社負担分(50%)を徴収します】**

 **【②『固定資産税』:本社ビル(魔導キャンピングカー・神話級装甲)および関連設備に対する課税】**

 **【③『法人住民税(均等割)』:赤字(売上ゼロ)であっても、法人が存在するだけで無条件に発生する基礎税金】**


「……………………………………………………え?」


 チャリンッ。(※会社の設立準備金として入れていた俺のなけなしの貯金から、桁違いの額が吹き飛ぶ、絶望の音)


 【社会保険料(会社負担分):-1,500,000 pt】

 【固定資産税(神話級車両):-2,000,000 pt】

 【法人住民税(均等割):-500,000 pt】


 【合計固定費:4,000,000 pt】

 【当月の売上高:0 pt】

 【現在の営業利益:-4,000,000 pt(大赤字)】


 ――静寂。


 焦げた醤油と肉汁の香りが漂うキャンピングカーの前で、新米CEO(俺)の心臓は完全に停止した。

 会社を作れば、税金が安くなると思っていた。

 経費で落とせば、丸儲けだと思っていた。

 なのに。

 売上が「ゼロ」なのに。

 人を雇った瞬間に発生する莫大な見えないコスト(社会保険料の会社負担分)。そして、息をしているだけで無条件に取られる固定資産税と均等割。


「………………………………………………ふざ、ふざけるなァァァァァァァァァッ!!!」


 俺は、今日何度目か分からない血の涙を両目から噴出させ、鉄板に頭をぶつけんばかりに突っ伏して泣き叫んだ。


「売上がゼロなのに税金(均等割)と固定資産税がかかるだとォォォォッ!? なんだその恐ろしすぎる現代起業のリアルは!! それに社会保険料の半分が会社持ち(労使折半)!? 高すぎるゥゥゥッ!! 5人雇っただけで毎月150万ポイントも固定で吹っ飛ぶのかよォォォッ!!」


 個人事業主の税金がマシに思えるほどの、法人という名の『固定費の地獄』。

 利益が出なくても、絶対に、毎月、容赦なくむしり取られる現金ポイント


「こんな会社やってられるかァァァッ!! システム、今すぐ『解散・廃業登記』だ!! 起業即倒産してやるゥゥゥッ!!」


 俺は血走った目でシステム画面を連打し、「法人解散」のボタンを力任せに叩き割った。


「しゃ、社長……? どうしたんですか、そんなに青ざめて。お給料、ちゃんと出ますよね……?」

「今日から俺は社長じゃねえ! ただの農民フリーランスだ! 一生個人事業主で生きていくと誓う!!」


 法人成りという究極のタックス・ヘイヴンの夢は、わずか数時間で粉々に砕け散った。

 1億ポイントへの道のりは、「社会保険料」と「固定費」という起業家を苦しめる最大の闇によって完全に塞がれ、最強農民は社長の椅子を自ら蹴り飛ばし、肉汁と血の涙にまみれながら、再び個人事業主という果てしない荒野へと舞い戻っていくのだった。


---


**【読者へのメッセージ】**

第三百話、いかがでしたでしょうか。

ついに大台の300話を迎えました! いつも応援ありがとうございます!

今回はルークスが「株式会社・最強農民」を設立し、成金CEOへとジョブチェンジ(するも即日倒産)する記念回!

祝賀パーティーの「暴食竜の極厚フランベステーキ」。数メートルの火柱と、ナイフを入れた瞬間に決壊する肉汁のダム! 王道にして最強のステーキテロで、皆様の胃袋を刺激できたなら大成功です。

しかし……会社を作れば税金が安くなるという甘い幻想は、システム(現実)によって見事に打ち砕かれました。

「社会保険料(労使折半)」の重圧! そして赤字でも絶対に取られる「法人住民税(均等割)」と「固定資産税」!

起業家が最初に直面する「固定費の恐ろしさ」の前に、ルークスは秒速で会社を畳んでいつもの農民に戻るという、起業即倒産のコメディとなりました(笑)。

再び個人事業主に戻ったルークス。果たして彼が1億ポイントに到達する日は来るのか!?

次回からも、ノンストップでスローライフ(という名の飯テロサバイバル)をお届けしますので、ぜひブックマークと評価をお願いします!


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