表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります  作者: はぶさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
300/329

第二百九十八話:狂気の物々交換(バーター取引)。極厚トロトロ豚角煮の茶色い正義と、絶望のみなし課税

「ポイント(金)なんてものはな、所詮はシステムが作り出したただの幻想……虚構の『数字』にすぎないんだよ!!」


 キャンピングカーの屋根の上に仁王立ちし、俺は鬱蒼と生い茂る世界樹の森に向かって高らかに、そして狂気に満ちた声で宣言した。

 稼げば累進課税で65%という法外な税率で没収され、経費で落とそうとヤケクソで散財すれば「損金不算入」というリアルすぎる税務調査からの重加算税(追徴課税)を食らう。

 システムという名の、絶対に逃げ道を許さない絶対的なプラットフォーマー(国税庁)が支配するこの世界で、まともにポイ活をして1億ポイントを貯めるなど、もはや物理的にも精神的にも不可能だと悟ったのだ。


「ル、ルークス君……。君、ついに税金の重圧で完全に頭がおかしくなってしまったのか……? そんな屋根の上で叫んでも、システムには届かないぞ」

「ガリウス所長! 俺の頭はかつてないほど冴え渡っていますよ! むしろ、これまでシステムの用意した盤面の上で踊らされていた自分が恥ずかしいくらいだ!」


 俺は屋根からヒラリと飛び降り、ドヤ顔でキャンピングカーのリビングに集まる仲間たちを見回した。


「よく考えろ。システムは『ポイントの移動(決済)』を常に監視して、そこに税金をかけてくる。……なら、ポイントという通貨を使わなければいい! 狩った魔物をシステムに納品するから中抜きされるんだ! 俺たちが育てた農作物と、森の住人が狩った獲物を『直接、物と物で交換(バーター取引)』すれば、システムの監視カメラ(税務署)も一切手出しできないはずだ! これぞ人類の原点、自給自足の非課税サバイバルだァァッ!」

「お、おおっ! つまり、貨幣経済そのものを否定し、原始時代に逆行するということですね! さすがルークス様、天才的で究極の現実逃避ですわ!」


 エレナ様の純粋な(?)称賛を浴びながら、俺はすぐさま行動に出た。

 ターゲットは、エルフの集落だ。彼らが森の奥深くで命懸けで狩猟してきたという、神話級の巨大イノシシの極上バラ肉。それをシステムを介さずに、直接手に入れるのだ。


「シルフィ! お前たちが狩ったその【翠玉森猪エメラルド・ボア】の巨大なバラ肉ブロック、俺の温室で育てた『世界樹の黄金玉蜀黍トウモロコシ』100本と交換してくれ!」

「えっ!? あ、はい! 私たちエルフは脂っこいお肉よりも、ルークス様が育てた甘くてジューシーなお野菜の方が嬉しいですし、トウモロコシなら大歓迎です! でも、本当にポイントを払わなくていいんですか?」

「当たり前だ! 物と物の価値が釣り合えば、そこに通貨は必要ない! 交渉成立だ!!」


 ポイント(通貨)の移動は一切なし。完全なるバーター取引。

 俺は、キャンピングカーのキッチンテーブルの上に、見事な真紅の赤身と、雪のように純白の脂身が美しい層になった、数十キロにも及ぶ超巨大な極上バラ肉のブロックをドスンと置いた。


「ふはははっ! 見たか! システムを一切通さずに、こんな極上の肉をゲットしたぞ! これなら税率は完全な『ゼロ』だ! 俺はついにシステムを完全に出し抜いたんだ!!」


 俺は高笑いを上げながら、ミスリルの包丁を力強く握りしめた。

 前回の白トリュフのような、気取った高級フレンチではない。俺のDNAが、日本人の魂が今、猛烈に、そして狂おしいほどに求めている「究極の肉料理」がある。


「豚バラの極厚ブロックが手に入ったら、やることは一つに決まってる! 今日は『茶色い正義』……極厚・トロトロの豚の角煮だァァァッ!!」


 俺は巨大なバラ肉のブロックを、拳ほどの大きさ、いや、もはやソフトボール大の「超極厚サイズ」にゴロゴロと豪快に切り分けた。

 まずは熱した巨大なフライパンで、肉の表面を香ばしく焼き付ける。ジュワァァッという音と共に余分な脂と獣の臭みを落とし、肉の旨味を内側にしっかりと閉じ込める。

 そして、こんがりと焼き色のついた極厚肉を、キャンピングカーの備品である巨大な圧力鍋(魔導具仕様)へと次々に放り込んでいく。


「味の決め手は、神話級の熟成たまり醤油、エルフの里で仕入れた極上の果実酒、そして……『森の処刑部隊(殺人蜂)』から命懸けで奪い取った、あの【世界樹の琥珀蜂蜜】だ!!」


 砂糖の代わりに、百花繚乱の芳醇な香りを放つ琥珀蜂蜜をたっぷりと鍋に投入する。そこに、臭み消しの生姜の薄切りと、ネギの青い部分、さらにエキゾチックな香りを添える八角を少々。

 魔導コンロの火力を全開にし、圧力をかけて一気に、そして徹底的に煮込んでいく。


 シュッシュッシュッ……!!

 プシュゥゥゥゥゥッ!!


 数時間後。

 圧力鍋の重りがリズミカルな音を立てるたびに、換気扇から漏れ出す匂いが、キャンピングカーの周囲の空気を完全に塗り替えていく。


「ル、ルークス様……! この匂い……暴力ですわ! 匂いだけで、匂いだけで白ご飯が3杯、いえ5杯は食べられそうですわ……!」

「ガウッ! なんだこの濃密で、甘くて、焦げたような肉の香りは! 我の胃袋が、早く肉を寄こせと悲鳴を上げているぞ!」


 そして、ついに圧力を抜き、鍋の蓋を開けた瞬間。


「うおおおおおおおっ!!!」


 キャンピングカーの中が、暴力的なまでの『甘辛い匂い』に完全に支配された。

 たまり醤油の焦げたような深い香ばしさ。翠玉森猪の野性味あふれる圧倒的な豚肉の旨味の香り。そして、琥珀蜂蜜の照り輝くようなコクのある甘い匂いが、渾然一体となって脳髄を直接殴りつけてくる。

 フレンチやイタリアンでは絶対に到達できない、日本人の魂の奥底を激しく揺さぶる「茶色い正義」の匂いだった。


 鍋の中では、飴色……いや、もはや照り輝くドス黒い茶色に染まった極厚の角煮が、琥珀色の煮汁の中でプルンプルンと艶めかしく震えていた。

 俺は、土鍋でふっくらと炊き上げ、湯気を立てる『古代砂小麦の白飯』を特大のどんぶりに山盛りにした。

 そして、その純白の頂の横に、プルンプルンに震える巨大な角煮の塊を、惜しげもなくドカン! ドカン! と乗せた。


「さあ! 言葉はいらねえ! 理性を捨てて食うぞ!! いただきます!!」


 俺は箸を持ち、拳ほどもある極厚の角煮にスッ……と刃(箸先)を入れた。


 ――ホロッ……。


「……!!」


 抵抗が、全くない。

 あんなに分厚く、巨大だった肉の塊が、箸を入れただけで、まるで高級な絹ごし豆腐のように、自重でパラリと崩れ落ちたのだ。

 俺は、そのホロホロに崩れた赤身肉と、長時間の圧力によって完全にゼラチン状に透き通った脂身を、たっぷりのタレと共に箸で持ち上げた。

 そして、これを食べる上で絶対に欠かしてはいけない、最も神聖で、最も背徳的なルーティンを実行する。


 純白の熱々白飯の上に、甘辛いタレが滴る角煮を『ワンバウンド』させる!


 真っ白なキャンバス(白飯)に、茶色いタレがじんわりと染み込み、美しいグラデーションを描く。

 俺は、そのタレの染みた白飯ごと、肉を大きく口の中へとかき込んだ。


 ……ハフッ。

 トロァァァァァァァッ!!!!


「んんんんんんんんんッ!!!!??」


 俺の意識が、圧倒的な脂の甘みと醤油のコクの濁流に飲み込まれ、完全に吹き飛んだ。

 美味い!! 美味すぎる!!!

 噛む必要すら、本当にない。口の中の温度に触れた瞬間、プルンプルンに煮込まれた脂身が「トロリ」と液状化して溶け出し、赤身の繊維が舌の上でホロホロとほどけて消えていく。

 そこに、琥珀蜂蜜のコク深く複雑な甘みと、たまり醤油のガツンとした塩気が完璧に絡み合い、極上の『甘辛ダレ』となって旨味の大暴動を引き起こす。


 そして何より、肉の脂とタレを極限まで吸い込んだ「ワンバウンド後の白飯」の美味さたるや、筆舌に尽くしがたい!

 熱々の炭水化物が、豚の脂と甘辛い醤油という究極の暴力を見事に受け止め、飲み込んだ瞬間に「次の一口」を無限に要求してくるのだ。


「美味いぃぃぃっ! トリュフもいいが、やっぱり行き着く先は『茶色いおかず』だ! 白飯が! 白飯がマジで止まらねえ!!」

「はふっ、とろとろですわ! 脂身がクリームみたいに甘くて……お醤油のお味が最高にギルティですのーっ! お代わり! お代わりをくださいませ!」

「ガツガツガツ! なんだこの究極の柔らかさは! 我の鋭い牙が全くの不要だぞ! 飯を、もっと飯と肉をくれ!」


 俺たち四人(と一匹)は、もはや一切の無言で、狂ったように角煮と白飯のどんぶりをかき込み続けた。

 口の周りをテカテカの茶色いタレと脂で汚し、ただひたすらに、ただ一心不乱に「茶色い正義」の前にひれ伏す。

 税金も、システムも、1億ポイントの絶望的な壁も、今はすべて忘れて、極上の豚バラ肉の快楽の海で溺れ続けたのだった。


 ◇


 大鍋いっぱいに作った角煮の山をどんぶりごと空にし、最後に残ったタレの一滴まで白飯で綺麗に拭い取って完食した後。

 俺は、脂でテカテカになった唇を拭いながら、大きく、そして偉そうにふんぞり返った。


「ふはははっ! 最高の角煮だった! しかも、ポイントの移動は一切ないから完全なる非課税! 俺の畑で採れたトウモロコシと交換しただけだから、実質完全にタダで極上肉を食い放題だ! 俺のバーター取引作戦の、完全なる大勝利だぜ!!」


 俺が勝利の美酒(食後の冷たいお茶)をグイッとあおった、まさにその直後だった。


 ピピッ! ピーーーーッ!!!


 空中に、システムからの無慈悲な『真っ赤な警告ウィンドウ』が、これまでで一番けたたましいアラート音と共にポップアップした。


「……えっ? な、なんだ? 今回はポイントのやり取りは一切してないぞ! 税金がかかる要素なんて1ミリもないはずだ!」


 **【システム・税務監査プログラム発動:ユーザーの資産状況に不自然な変動(経済的利益の供与)を検知しました】**

 **【非貨幣的取引(物々交換)による、高額資産の取得をシステムが確認しました】**


「……は?」


 **【税務プログラム規定に基づき、取得した資産(翠玉森猪の極上バラ肉)の現在の『市場価値』を算出し、これを『現物給与(みなし所得)』として課税対象に計上します】**


「……………………………………………………え?」


 【取得資産の市場価値:5,000,000 pt相当】

 【適用税率(累進課税ブラケット):65%】


 チャリンッ。(※俺の既存の口座残高から、直接税金がむしり取られる、地獄の強制引き落とし音)


 【みなし課税による、既存口座残高からの強制徴収額:-3,250,000 pt】


 ――静寂。


 角煮の甘辛い匂いが色濃く漂うキャンピングカーの中で、俺の心臓は完全に停止した。

 ポイントは使っていない。物と物を交換しただけだ。

 なのに。

 「みなし課税」。

 高価な物を貰った(交換した)場合は、その価値を通貨に換算して「所得」とみなし、有無を言わさず既存の貯金口座から直接税金を引き落とすという、現代税法の恐るべきリアルが発動したのだ。


「………………………………………………ふざ、ふざけるなァァァァァァァァァッ!!!」


 俺は、今日何度目か分からない血の涙を両目から噴出させ、空のどんぶりを抱えたままキャンピングカーの床に突っ伏して泣き叫んだ。


「みなし課税だとォォォォォッ!? なんだその逃げ場ゼロの国税庁の執念は!! 物々交換でも市場価値を算出して、勝手に貯金から税金を引く!? ファンタジー世界で現物給与の概念まで持ち出してくるなァァァッ!! どんだけ俺から税金を取り立てたいんだシステムのバカヤローッ!!」


 ポイントを稼いでも税金。

 ポイントを使わずに物々交換をしても税金。

 もはや、この世界で息をして、美味しいものを食べているだけで課税されるのではないかというレベルの、絶対的かつ逃れられないシステムの包囲網。


「ル、ルークス君……。さすがに国税局システムを甘く見すぎたようだな……。彼らは経済的利益が少しでも発生すれば、どのような形態であろうと絶対に逃さないんだよ……」

「ポイントが! 必死に貯めてた俺の325万ポイントが、ただ角煮を食っただけで消えたぁぁぁぁっ!!」


 究極の現実逃避であったバーター取引すらも、システムの前に粉々に打ち砕かれた。

 1億ポイントへの道のりは、脱・貨幣経済すら許さないシステムの恐るべき執念によって完全に塞がれ、最強農民は豚の脂と血の涙にまみれながら、果てしない絶望のどん底へと沈んでいくのだった。


---


**【読者へのメッセージ】**

第二百九十八話、いかがでしたでしょうか。

「ポイントを使わなければ非課税だ!」とドヤ顔で原始的な物々交換に走ったルークスですが、その浅はかな目論見はシステムの前に粉々に打ち砕かれました。

そして、フレンチやイタリアンから一転、日本人の魂に直接響く「茶色い正義」こと極厚トロトロ豚の角煮!

箸でホロッと崩れる柔らかさ、熱々の白飯への「ワンバウンド」の背徳感……。深夜に読んではいけない、最強の白飯泥棒テロをお届けしました。

しかし、食後の至福を地獄に変えたのは「みなし課税(現物給与)」という現代税法の残酷なリアル!

物々交換でも市場価値を算出して、既存の口座から直接税金(65%)をむしり取っていくという、逃げ道ゼロの国税庁システムの執念に、ルークスもついに心が折れそうです(笑)。

あらゆる節税対策が封じられた今、果たしてルークスはどうやって1億ポイントを稼ぐのか!?

次回もノンストップでコメディと飯テロをお届けしますので、ぜひブックマークと評価をお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ