表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります  作者: はぶさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
296/329

第二百九十四話:狂気の経費倒れ(ポイ活)。黄金骨竜の濃厚白湯ラーメンと、絶望の修繕費

「税金、大暴落、鮮度落ち、ブランド認定料、挙句の果てに贈与税と罰金……。ダメだ、どうやってもシステムに金をむしり取られる……」


 キャンピングカーのリビングで、俺は頭を抱え、ブツブツと呪詛を吐き続けていた。

 1億ポイント。世界樹の『黄金林檎』を救う(食う)ために必要な途方もない金額。

 闇市ダイレクト・マーケティングでの直販すらシステムに潰された今、俺のポイ活は完全に手詰まりになっていた……かに思えた。


「いや、待てよ」


 俺はガバッと顔を上げた。


「正規の『討伐クエスト』の報酬ならどうだ? システムが公式に発行している依頼なら、あらかじめ予算が組まれているはずだ。つまり、報酬は『完全非課税』で全額受け取れるんじゃないか!?」

「ル、ルークス様、また何か良からぬことを思いついたようなお顔ですわよ……?」

「シルフィ! この森で一番厄介で、システムが討伐依頼クエストを出してそうなヤバい魔物はいないか!?」


 急に肩を掴まれたエルフの少女・シルフィは、ヒィッと身をすくめながらも、震える指で森の最深部を指差した。


「も、森の最深部にある『竜の墓場』に……大昔に死んだ竜が、森の澱みを吸って蘇った【黄金骨竜】が徘徊しています……。硬すぎてどんな魔法も通じず、森の木々を薙ぎ倒す厄災ですぅっ!」

「それだァァァァッ!!」


 俺は虚空をタップし、システムの『クエスト掲示板』を開く。

 あった。

 【緊急討伐依頼:黄金骨竜ゴールデン・ボーン・ドラゴン。報酬:5,000,000 pt(※非課税)】


「ごひゃくまん! しかも非課税の文字が輝いている! 行くぞお前ら! 500万ポイント丸儲けのボーナスステージだァァァッ!!」


 ◇


 薄暗い森の奥底、巨大な白骨が散乱する「竜の墓場」。

 そこにそびえ立っていたのは、全身の骨が黄金にギラギラと輝く、ビルほどもある超巨大なアンデッド・ドラゴンだった。


 【鑑定結果】

 【対象:黄金骨竜ゴールデン・ボーン・ドラゴン

 【状態:澱みによる異常硬化】

 【特徴:神話級の硬度を誇る黄金の骨。物理・魔法を完全に弾く絶対防御】


『グォォォォォォォォォッ!!!!!』


 空気を震わせる咆哮と共に、黄金骨竜が巨大な尾を振り回す。

 太さ数メートルの大樹が、まるでマッチ棒のようにバキバキとへし折られていく。


「ひぃぃぃぃっ! やっぱり無理ですぅっ! あんな硬い化け物、どうやって倒すんですかぁっ!」

「硬い? 関係ねえ! こちとら神話級のアダマンタイトだぞ! どんな硬い畑(骨)でも耕してやる!」


 俺は『絶対冷却シャツ』の身軽さで空高く跳躍し、相棒である『真・アダマンタイトの鍬』を、全身の筋肉がちぎれんばかりの力で大きく振りかぶった。

 狙うは、黄金骨竜の巨大な頭蓋骨のド真ん中。


「農業スキル奥義・『大地の解体新書(岩盤砕き)』ッ!!!」


 俺の体重と、落下スピード、そして神話級の金属の絶対的な硬度が一つになった、会心の一撃。


 ガギィィィィィィィィィィィィィンッ!!!!!!!


 森全体が揺れるほどの、凄まじい金属の衝突音。

 黄金骨竜の頭蓋骨に、ピキッ、メキメキメキッ!と巨大な亀裂が走り、そのままキャンピングカーほどもある巨体が、光の粒子となることもなく地面に崩れ落ちた。

 一撃必殺。俺の完全勝利だ。


 ――だが。

 その瞬間、俺の農民としての動体視力は、ある「恐ろしい光景」をスローモーションのように捉えていた。


 ……パキンッ。


「……え?」


 俺の手元。

 これまでどんな神話級の魔物を相手にしても傷一つ付かなかった、無敵の相棒『真・アダマンタイトの鍬』。

 その鋭い刃の先端が、黄金の骨の異常な硬さに耐えきれず、ほんのわずかに、数ミリだけ「欠けて」飛び散ったのだ。


「……うそ、だろ。アダマンタイトが、欠けた……?」


 俺は着地し、鍬の刃先を震える手で撫でた。

 確かに、小さな欠けがある。

 だが、すぐに俺は頭を振ってその事実を思考の隅へと追いやった。


「ま、まあいい! ほんの数ミリだ。研げば直る、後で考えよう! それより今は……この巨大な『黄金の骨』だ!」

「ル、ルークス君? まさか、骨を食う気か!?」

「当たり前だ! 極上の骨が手に入ったら、やることは一つに決まってるだろ!!」


 俺はアイテムボックスから、キャンピングカーよりもデカい特大の寸胴鍋を引っ張り出した。

 そして、砕け散った黄金骨竜の骨(髄液がたっぷり詰まっている部分)を大量に放り込み、キャンピングカーの『魔導コンロ』に直結させた特大バーナーのスイッチを「最大出力」でひねった。


「フェン! 火力が足りない! お前の炎も全力で足せ!」

「ガウッ! 分かったが、これをどうする気だ!?」

「煮込むんだよ! 徹底的にな! 骨の髄から極上のエキスが完全に溶け出すまで、三日三晩、休まずに強火でガンガン炊き続ける!!」


 ゴォォォォォォォォッ!!!


 それから三日間。

 俺たちは交代で寝ずの番をし、キャンピングカーの魔力燃料を湯水のように継ぎ足しながら、ひたすら黄金の骨を煮込み続けた。

 アクを丁寧に取り除き、ひたすら強火でガラを砕くようにかき混ぜる。


 そして、三日目の夜明け。


「……できたぞ」


 巨大な寸胴鍋の中。

 透き通っていた水は、完全に姿を変えていた。

 黄金骨竜の骨の髄から溶け出した圧倒的なゼラチン質と脂、そしてマナのエキスが完全に乳化し、鍋の中は「真っ白に濁った、ドロドロの液体」へと変貌を遂げていた。

 お玉を入れると、シチューよりも重たい「モタァッ……」とした粘度が手に伝わってくる。


「匂いだけで……暴力的な旨味が押し寄せてきますわ……!」

「うおおおおっ! これだ! これぞ男のロマン、究極の『濃厚白湯(豚骨風)スープ』だ!!」


 俺は、あらかじめ古代砂小麦をこねて打っておいた『極太のちぢれ麺』をサッと茹で上げ、特大のどんぶりに放り込んだ。

 そこに、特製醤油ダレと、このドロドロの黄金白湯スープを並々と注ぎ込む。

 具材なんていらない。ネギすら不要。

 必要なのは、このスープと麺の暴力的な絡み合いだけだ。


「さあ! 熱いうちに啜れ! いただきます!!」


 俺は箸で極太麺をガシッと持ち上げた。

 その瞬間、ドロドロのスープが麺にこれでもかとネットリ絡みつき、重力に逆らって持ち上がってくる。


 ……ズズズズズズズズッッ!!!!


「んんんんんんんんんッ!!!!??」


 俺の脳髄が、コラーゲンの濁流に完全に飲み込まれた。

 美味い!! なんだこの圧倒的な濃度は!!

 口の中に入れた瞬間、スープが「液体」ではなく「固体と液体の狭間の旨味の塊」として舌に張り付く。

 黄金骨竜の骨の髄まで溶け出した、豚骨の何百倍も強烈で、それでいて獣臭さが一切ない極上のクリーミーな旨味。

 ワシワシとした極太ちぢれ麺を噛み砕くたびに、絡みついたスープが爆発し、口内をギトギトの快楽で満たしていく。


「ズズズッ! ハフッ! う、美味ぇぇぇぇっ!! 唇が! 唇がコラーゲンでペタペタにくっつくぞ!!」

「はむっ、ズズッ! あかん、これはあかんですわ! 濃厚すぎて、カロリーが直接脳みそに突き刺さりますのーっ!」

「ガツガツガツ! 骨の味がする! 最高にワイルドでクリーミーだ!」


 俺も、エレナ様も、フェンも、シルフィも。

 全員が無言で、唇をテカテカ、ペタペタに輝かせながら、どんぶりに顔を突っ込むようにしてドロドロの麺を啜り続けた。

 屋台の焼きとうもろこしの「香ばしさ」とは真逆のベクトル。

 すべてを旨味の粘度で塗りつぶす、暴力的なまでの「重さ」と「背徳感」。

 深夜に絶対に食べてはいけない、悪魔のラーメンがここにあった。


 ◇


 極上の濃厚白湯ラーメンをスープの最後の一滴まで飲み干し、至福の溜息(と重たいゲップ)を吐き出した後。

 俺は、唇をコラーゲンでペタペタにさせたまま、ニヤリと笑ってシステムウィンドウを開いた。

 待ちに待った、クエスト達成報告の時間だ。


「ふはははっ! ラーメンも最高だったが、こっちが本命だ! 非課税の500万ポイント! これで一気にゴールに近づくぞ!」


 俺は意気揚々と「クエスト完了」のボタンをタップした。


 チャリンッ♪ チャリンッ♪


 【クエスト達成:黄金骨竜の討伐】

 【基本報酬:5,000,000 pt(※クエスト報酬につき非課税)】


「よっしゃあああああッ!!!! 500万丸儲けだァァァッ!!!」


 俺はキャンピングカーの中で飛び跳ね、フェンとハイタッチを交わした。

 税金ゼロ! 値崩れなし! 完全なる大勝利!

 ……と、俺が有頂天になって天国へと昇り詰めた、まさにその直後だった。


 ピピッ! ピピッ!


 システムの画面に、見慣れない「グレーの請求書ウィンドウ」が、ポップアップしたのだ。


「……ん? なんだこれ」


 **【システム通知:当月分の『設備維持管理費』の自動引き落としを実行します】**


「は……?」


 ウィンドウには、無慈悲な明細がズラリと並んでいた。


 **【①『真・アダマンタイトの鍬』刃こぼれ修繕費(神話級鍛冶オプション適用):3,500,000 pt】**

 **【②キャンピングカー魔導コンロ(三日三晩連続フル稼働)光熱費及び魔力燃料代:1,400,000 pt】**


 **【合計経費ランニングコスト:4,900,000 pt】**


 チャリンッ。(※口座から容赦なく金が吸い取られる、死の音)


 【売上高(報酬):5,000,000 pt】

 【経費引き落とし:-4,900,000 pt】

 【現在の純利益(営業利益):100,000 pt】


 ――静寂。


 コラーゲンの匂いが漂うキャンピングカーの中で、俺の心臓は完全に停止した。

 俺の目は、信じられない数字を何度も、何度も往復した。


 ごひゃくまん、稼いだ。

 非課税だった。

 なのに。

 「修繕費」と「光熱費」という、恐ろしくリアルな「経費」が引かれた。

 手元に残ったのは、たったの「10万ポイント」。


「………………………………………………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」


 俺は、今日一番の、いや、この異世界に来て最大の血の涙を流し、どんぶりを抱えたまま床に突っ伏した。


「経費ィィィィィッ!? 修繕費350万ってなんだよ! ちょっと欠けただけだろうがボッタクリ鍛冶屋かァァァッ!! それに光熱費140万!? ラーメンのスープ炊くのにどんだけガス代かかってんだよォォォォッ!!」


 売上高500万。営業利益10万。

 利益率、たったの『2パーセント』。


「経費倒れの赤字スレスレじゃねえかバカヤローッ!! 重厚長大産業(農業・製造業)の世知辛さをファンタジーに持ち込むなァァァッ!!」


 税金よりも、暴落よりも恐ろしい、ポイ活の真の敵。

 それは、最強のチート武器を維持し、極上の飯を作るために絶対にかかる「ランニングコスト(経費)」だったのだ。


「ル、ルークス君……。どんまい。ラーメンのスープは、最高に濃厚だったよ……」

「ポイントが! 俺の490万ポイントがぁぁぁぁっ!!」


 どんなに稼いでも、経費で消え飛ぶ。

 1億ポイントへの道のりは、税金と経費というリアルすぎる経済の壁に阻まれ、最強農民は唇をペタペタにさせたまま、果てしない絶望のどん底へと沈んでいくのだった。



【読者へのメッセージ】

第二百九十四話、いかがでしたでしょうか。

無敵のチート農具『真・アダマンタイトの鍬』が欠けるという伏線!

そして、黄金の骨を三日三晩炊き出して作った「ドロドロ濃厚白湯ラーメン」の限界突破シズル感! 唇がコラーゲンでペタペタになる背徳的な美味さ……深夜にカップ麺にお湯を入れたくなった方は、完全にルークスの飯テロの犠牲者です(笑)。

しかし、非課税で500万ポイント丸儲けと有頂天になった直後……。

「修繕費」と「光熱費(ガス代)」という、生々しすぎる「経費の自動引き落とし」によって、手取りがたったの10万ポイントに!

売上はデカいのに経費で消し飛ぶという、モノづくりや飲食店の残酷なリアルがルークスを襲いました。インフレ対策が完璧すぎますね。

1億ポイントの壁はあまりにも険しい……。ルークスの次なる一手は!?

次回もノンストップでコメディと飯テロをお届けしますので、ぜひブックマークと評価をお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ