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ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります  作者: はぶさん


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第二百八十六話:狂気の川漁師。激流の銀覇魚(ギガトラウト)と幻の山菜の極上天ぷら

 神話級の巨大フルーツ【タイラント・マンゴー】の暴力的でトロピカルな甘み。

 そして、森の処刑部隊から搾り取った【世界樹の琥珀蜂蜜】の、脳が溶けるような濃厚な甘み。

 極上のスイーツを連続で、しかも限界突破のボリュームで腹に収めた俺たちは、キャンピングカーの車内で奇妙な沈黙に包まれていた。


「……なぁ、フェン」

「……なんだ、主よ」

「甘いものは最高だ。最高に美味かった。だが……今、俺の体は猛烈に『別のもの』を欲している」


 俺は腕を組み、眉間にシワを寄せて天井を睨んだ。

 フェンもまた、ソファーで重たい腹をさすりながら、深く頷く。


「ああ。奇遇だな。我もだ。口の中が甘ったるくて仕方がない。何かこう……ガツンとくる『塩気』と、香ばしい『油』……そして、口の中を洗い流すような『大人の苦味』が欲しい」

「ああぁぁ……わかりますわ! しょっぱいもの! お醤油かお塩の効いた、アツアツのしょっぱいものが食べたいですわーっ!」


 エレナ様までもが、貴族令嬢らしからぬ身悶えをしている。

 甘いものを限界まで食べると、反動で強烈にしょっぱいもの(ポテトチップスやラーメンのようなジャンクなもの)が食べたくなる。これは人間(と魔獣)の逃れられない生理現象だ。


「ルークス様ぁ、このハチミツ、最高ですぅ……! 一生舐めていられますぅ!」


 唯一、長年の飢餓状態から解放され、ハチミツの壺を抱えて幸せそうにペロペロと舐め続けているエルフの少女・シルフィを横目に、俺は立ち上がった。


「決まりだ。次のターゲットは、塩と油に合う『極上のしょっぱいメシ』だ! シルフィ! この近くに、美味い魚がいそうな川はないか!?」

「えっ? お、お魚ですか? それなら、この森の生命の源である『大清流』がすぐ近くにありますが……」

「案内しろ! 大至急だ!!」


 俺の血走った目に怯えながら、シルフィが指差す方向へと、キャンピングカーは森を突き進んだ。


 ◇


 ほどなくして、鬱蒼とした森が開け、目の前に巨大な川が姿を現した。

 川幅は数十メートル。水はどこまでも澄み切ったエメラルドグリーンだが、その流れは恐ろしく速く、白い水飛沫を上げて岩を削る『激流』だった。

 マイナスイオンが立ち込める河原の空気は涼やかで心地よい。5万ポイントの『防虫オーラ』のおかげで、水辺特有の厄介な羽虫も一切寄ってこない。


「はぁ~、いい景色だ。……で、獲物はどこにいる?」


 俺が激流に目を凝らした、その時だ。


 ザバァァァァァァァァンッ!!!!!


 突如として、川の中央で巨大な水柱が上がった。

 激流をものともせず、水面から跳躍して空中で美しい弧を描いたのは、キャンピングカーほどの大きさがある『超巨大な魚』だった。

 太陽の光を反射して鏡のようにギラギラと輝く銀色の鱗。流線型の引き締まった巨体。そして、サメのように鋭く並んだ凶悪な牙。


 【鑑定結果】

 【対象:激流の銀覇魚シルバー・ギガトラウト

 【状態:極めて活発】

 【特徴:どんな激流をも遡る圧倒的な筋力を持つ神話級の淡水魚。その白身は極上の弾力と上品な脂を蓄えている】

 【危険度:災害級(川に近づく者を一呑みにする)】


「ああっ……! 主様ぬしさま! 清流の主様が御姿を現された!」


 シルフィが、河原の石の上に膝をつき、両手を組んで深く土下座をした。


「ルークス様! あの方はこの森の水を司る神聖な主様です! 決して、決して怒らせてはなりません! 御怒りに触れれば、大洪水が起きて森が水没してしまいますぅぅっ!」

「へぇ。主様ねぇ」


 俺は、土下座して祈るエルフの少女の横で、ポタポタとヨダレを垂らしていた。

 神聖? 森の水没?

 知るか。俺の目には、あの空を舞う美しい巨体が、**「極上の白身魚の超特大切り身」**にしか見えていない。

 激流を遡る強靭な筋肉。それはつまり、身が引き締まり、かつ極寒の水温で上質な脂をたっぷり蓄えているという証拠だ!


 さらに、俺の農民としての優れた視力は、川岸の岩場に群生している「別の宝」をも見逃さなかった。

 トゲトゲした木の枝の先端に、タラの芽を巨大化させたような、瑞々しくも生命力に溢れた新芽が大量に芽吹いていたのだ。


 【鑑定結果:世界樹のタラの芽(幻霊の山芽)/強烈な香りと大人の苦味を持つ神話級の山菜】


「うおおおおおっ!! 特大の白身魚に、極上の山菜のセットだと!? こんなの、神様が『天ぷらにして食え』って言ってるようなもんじゃないか!!」

「て、天ぷら!? 主様を!?」


 俺はシルフィの悲鳴をガン無視して、虚空をタップし、システムウィンドウを叩き割る勢いで操作した。

 相手は激流を泳ぐ神話級の魚。釣り竿なんかじゃ拉致があかない。一網打尽にする最高の漁具インフラが必要だ!


 【検索ワード:漁業、絶対逃がさない、巨大魚、網、神話級】


 チャリンッ♪

 (激流の轟音すらかき消す、狂気に満ちた決済音)


 【購入完了:神話級・絶対捕獲の魔導投網(ミスリル&オリハルコン繊維編み)】

 【価格:30,000 pt】


 俺の手の中に、ずっしりと重い、しかし絹のように滑らかな銀色の投網が出現した。


「行くぞフェン! 俺を川の真ん中の上空へ打ち上げろ! 農民はな、畑を耕すだけじゃない。漁業(投網)だって得意なんだよ!!」

「ガウッ! 白身魚の天ぷら! 塩と油! 任せろぉぉぉっ!!」


 フェンの『大竜巻』が俺の体を包み込み、激流が渦巻く川の真上、高さ20メートルの空中へと一気に射出した。


「そォォォォォイッ!!!」


 俺は空中で体を大きく捻り、遠心力を利用して魔導投網を全力で投擲した。

 シュルルルルルッ!

 神話級の網は空中で美しい円を描いて広がり、ちょうど水面から再び跳躍しようとしていたシルバー・ギガトラウトの巨体を、上空からすっぽりと、完璧に覆い尽くした。


『ギャバァァァァァァァッ!?』


「逃がすかァッ! 大漁だァァァッ!!」


 俺は網の端を握りしめたまま河原に着地し、『農耕の歩法』で両足を地面にガッチリと固定。そして、キャンピングカーほどの大きさがある神話級の巨魚を、強引に、力任せに河原へと引きずり上げた。


 ズザザザザザァァァッ!!

 ビッチッ! ビッタン! ドゴォォォン!!


 河原に打ち上げられた銀覇魚が、網の中で猛烈に暴れ回り、岩を砕くほどの力で跳ねる。

 だが、3万ポイントのオリハルコン繊維の網は絶対に破れない。


「ああああっ……! 主様が! 清流の主様が、ピチピチ跳ねる今晩のおかずにぃぃぃっ!」

「泣くなシルフィ! 俺たちの胃袋の平和リセットのために、美味しく成仏してもらうんだよ!」


 俺は暴れる魚の脳天に『真・アダマンタイトの鍬』の峰を叩き込んで一撃で締め(活け締め)、素早く血抜きを行った。

 さらにその足で岩場へ駆け寄り、群生していた【幻霊の山芽】を、新芽を傷つけないよう鍬の繊細なタッチで次々と刈り取っていく。


「よし! 食材は揃った! 極上の油と塩の宴の始まりだ!」


 ◇


 俺はキャンピングカーの前に巨大な中華鍋(野外用)をセッティングし、ポイントショップで買った『最高級・黄金の太白胡麻油』をドバドバと並々に注ぎ込んだ。

 フェンが火魔法で鍋底を熱し、油の温度を天ぷらに最適な180度へと一気に引き上げる。


 その横で、俺はミスリルの包丁を振るい、巨大なシルバー・ギガトラウトを鮮やかに三枚におろしていた。

 断面から現れたのは、雪のように真っ白で、うっすらと桜色を帯びた、芸術品のように美しい白身。そして、激流を泳ぐことで研ぎ澄まされた筋肉の間に、霜降りのように細かく入り込んだ極上の脂。

 俺はそれを分厚く、贅沢な切り身にしていく。


「小麦粉(前回すり潰した砂小麦)と、氷河の冷水で作った極上の衣だ。……いくぞ!」


 俺は、白身魚の極厚切り身と、巨大なタラの芽に薄く衣を纏わせ、180度の熱した油の中へと静かに滑り込ませた。


 ――ジュワァァァァァァァァァァッ!!!!!!


 その瞬間、森の空気を一変させる、暴力的なまでに香ばしい油の匂いが爆発した。

 衣の中の水分が一気に蒸発し、心地よい高い音が響き渡る。

 甘いスイーツの連続で麻痺していた脳髄に、この「油の揚がる音と匂い」は、劇薬のように直接突き刺さった。


「あ、あかん……! 匂いだけで、匂いだけでお腹が減ってきますわ……!」

「主よ! まだか! 我のヨダレが油に入って跳ねそうだ!」


 表面の衣がカラリと狐色に揚がり、中の食材が自らの水分と脂で極上の蒸し焼き状態になった絶妙のタイミング。

 俺は菜箸で天ぷらを引き上げ、油を切った。


「完成だ! 『激流銀覇魚と幻霊山芽の極上天ぷら』!!」


 揚げたてアツアツ、湯気を立てる天ぷらの山。

 俺は、そこに天然の粗塩をパラリと振りかけ、一番大きな魚の天ぷらを手に取った。


「熱いうちに! いただきます!」


 大きく口を開け、かぶりつく。


 ……サァクッ!!!


 静かな森に、衣が砕ける心地よい音が響き渡った。

 薄く纏わせた衣は、羽毛のように軽く、そして限界までサクサク。

 その直後。


 ――ホロリ。フワァァッ。


 衣の中に閉じ込められていた銀覇魚の極厚の白身が、舌の上でほどけるように崩れ落ちた。

 なんだこのフワフワ感は! 激流を泳ぐ筋肉の塊だったはずなのに、熱を通すことで信じられないほど柔らかく変化している。

 そして、白身からジュワッと溢れ出す、上品で甘い極上の脂。

 粗塩のガツンとした塩気が、その白身の旨味と脂の甘みを極限まで引き出し、口の中で完璧なハーモニーを奏でる。


「う、うおおおおおっ!! 美味いぃぃぃぃぃっ!!!」


 俺は天を仰いで絶叫した。

 甘味で満たされていた胃袋が、この強烈な「塩気」と「油のコク」によって、まるで乾いたスポンジのように旨味を吸い込んでいく。

 たまらず、続けて【幻霊の山芽】の天ぷらを口に放り込む。


 サクッ。

 ……ツゥゥゥゥン。


「くぅぅぅぅっ! これだ!!」


 サクサクの衣の奥から、ホックリとした山菜の食感。

 そして、春の息吹を何十倍にも濃縮したような強烈な香りと、舌の奥をギュッと刺激する「大人の苦味」!

 このツンとくる爽やかな苦味が、魚の脂を完璧に洗い流し、口の中を完全にリセット(初期化)してしまうのだ。


「塩気の効いたフワフワの白身! そして香ばしい大人の苦味! あかん、これは無限ループだ! いくらでも食えるぞ!!」

「はふっ! サクッ! ……ああぁぁ、塩とお魚、最高ですわぁぁぁ!」

「ガツガツガツ! サクサクフワフワだ! 甘いものの後の天ぷら、まさに至高の極み!」


 甘味からの塩気と苦味。この究極の落差ギャップがもたらす麻薬的な快感に、俺たちは全員、無言で狂ったように揚げたての天ぷらを貪り食った。


「ひぐっ……主様……あんなに神々しかった主様が……サクサクのフワフワに……。……あ、あれ? おいちい……?」


 最初は泣いていたシルフィでさえも、一口かじった瞬間に白目を剥き、信仰心よりも食欲(塩気への渇望)を優先させて天ぷらの山に手を伸ばし始めていた。


 ◇


 キャンピングカーサイズの巨大魚と大量の山菜を、文字通り骨の髄まで揚げて平らげた後。

 俺は、指についた粗塩を舐め取りながら、システムウィンドウの【討伐(漁獲)ボーナス】の通知を開いた。


 [ボーナス獲得:3,050,000 pt]

 [内訳:激流の銀覇魚(300万)、幻霊の山芽群生(5万)]


「……さんびゃくまん……」


 俺の口角が、またしても耳まで裂けるかと思うほどに吊り上がった。

 フルーツ、ハチミツ、そして魚と山菜。


「よし!! これで現在の総ポイント、約555万獲得だ!!」


 俺は、油と塩でテカテカになった顔を上げ、森のさらに奥深く、より強大なマナの反応が密集する深部を、血走ったギラギラとした目で見据えた。


「1億ポイントまで、残り9,445万ポイント! まだたったの5%だ! 時間がねえぞ! まだまだ美味い魔物ポイントが山ほど眠ってるはずだァァァッ!!」

「ル、ルークス君……君は本当に森の生態系を更地にするつもりか……?」


「行くぞフェン! 次はどんな神話級の食材(魔物)を天ぷらにしてやろうか!!」


 俺の狂気の叫びが森に響き渡る。

 清流の主様をただの「美味い天ぷらのタネ」として消費し、さらに目を血走らせて乱獲に走る最強農民の姿に。


「ああ……世界樹様……このままじゃ、森の魔物が一匹残らず食べ尽くされてしまいますぅぅ……っ!」


 シルフィは、世界樹の危機(大地の澱み)よりも遥かに恐ろしい「強欲な食欲の化身」の存在に、ついに白目を剥いて気絶してしまったのだった。



【読者へのメッセージ】

第二百八十六話、いかがでしたでしょうか。

甘いものの連続から一転、体が猛烈に欲する「塩気」と「油」と「大人の苦味」!

神話級の巨大魚と山菜を、3万ポイントの魔導投網で一網打尽にし、サクサクフワフワの天ぷらにして粗塩でいただく。深夜の天ぷらテロ、皆様の胃袋にダイレクトに響いたなら大成功です。

エルフが崇める森の主ですら、「ピチピチ跳ねる今晩のおかず」としか認識しないルークスのブレなさが光りますね(笑)。

さて、天ぷらを平らげて300万ポイントを追加し、残り9,445万ポイント!

世界樹の林檎を救う(食う)ための、森の生態系を震え上がらせる狂気の乱獲ツアーはまだまだ止まりません。

次はどんな食材(魔物)がルークスの毒牙にかかるのか?

新章もノンストップでお腹を空かせますので、ぜひブックマークと評価をお願いします!



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