↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/63

第59章:連れ去られた

ヒカルとリナは一秒も無駄にしなかった。状況の重みが胸に落ちた瞬間、二人はすでに教室を飛び出し、廊下を駆け抜けていた。

「おい!どこに行くの—?」リサが声を上げたが、二人はもういなくなっていた。

廊下の生徒たちが困惑した視線を向ける中、彼らは校門を押し開き、外へ飛び出した。

門の警備員が鋭い目を向ける。「どこに行くつもりだ?授業が始まったばかりだぞ!」

リナはスピードを緩めず、「大事なものを忘れたのよ!」と叫んだ。

「何がそんなに大切なんだ—」

「家族の緊急事態だ!」ヒカルが即座に続けた。

警備員は制止すべきか迷ったが、口を開く前に二人はすでに通り過ぎ、街へと消えていた。

走りながら、ヒカルは『千斬』を握りしめた。「千斬!桜を見つけないと。今すぐ」

本が苛立たしげにページを揺らす。「朝の挨拶は?—待て、何だって?彼女がどうかしたのか?」

「桜がいなくなった」ヒカルの声は緊張に震えていた。「誰も行方を知らない。お前が『全ての書』なら、探せ」

千斬のページが風を切り、墨の光が脈打つ。「待て。人捜しはレシピ検索じゃない—」

待てない!」リナがさらに速度を上げた。

千斬は不満を漏らしつつも集中し、ページがゆっくりと文字を再構成する。光が強まり—

「見つけた」

ヒカルの呼吸が止まった。「どこに?」

千斬の声が低く、鋭く響く。「この街にはいない。連れ去られた」

二人は急停止し、朝の静けさを切り裂く息遣いが周囲に響いた。

「『連れ去られた』ってどういうことだ?」ヒカルは本を握り締め、鼓動が耳を打つ。「誰に?」

ページが水紋のように揺れ、文字が浮かび上がる。「正確な人物は不明だが…計画的だ」

「誰が?」ヒカルの拳が固まる。

沈黙が流れ、やがて墨が再び動く。「答えは…君たちが望むものではない」

リナの目が鋭くなる。「試してみろ」

「神に関係している」

ヒカルの胃が落ちた。リナが舌打ちする。「神が桜を誘拐したと?」

「神か、その手下か—だが、目的はただの遊びじゃない」

ヒカルは思考を巡らせる。なぜ桜が?

「リナ、鏡を持ってるか?」

「ああ」彼女はハンドバッグから小さな鏡を出す。「鏡の世界に行くぞ」

ヒカルは鏡をつかみ、映った自分と一瞬目が合う。水面のように揺らめくガラスを抜け—

彼らは鏡の世界に立っていた。静寂が重く、ヒカルは目を閉じ、力を解放する。世界が彼の意志に従い、空へ浮かび上がる。

「飛んでるわ」リナが息を吞む。

「アヤミさんを探して、状況を説明する」

現実世界では、アヤミがベッドで寝息を立てていた。

鏡が揺らぎ、ヒカルとリナが水をすり抜ける幽霊のように現れる。

「まだ寝てるわ」リナが呟く。

ヒカルは頬をつねり、「起きろ、起きろ」と繰り返す。

「…あと十分…」アヤミがもぞもぞと手を振り払う。

「猫か。おやつで起こせばよかった」

ヒカルは迷わず彼女の鼻をつまんだ。

「!?」アヤミが目を見開き、咳き込みながら起き上がる。「何するのよ!」

「桜が誘拐された」

眠気が一瞬で消える。「は?」

ヒカルが説明を終えると、アヤミは髪をかき上げ、「どの神だ?」と問う。

「不明。でも計画的だ」リナが腕を組む。

「桜って誰だっけ?」

「ただの人間。クラスメートだ」

アヤミが水を飲み—突然、千斬に吹き出す。「反射だよ」

「この本に唾を吐くな!インクが滲むだろうが!」

「で?桜はどこに?」

千斬が神の気配を感知した場所を示すと、アヤミは眉をひそめた。「…無能な魔法の本だな」


継続すること。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。