第四話 令嬢たちの経済政策(ヘレネ視点)
内戦回避出来て一安心の悪役令嬢ズです
王家から七公爵家のそれぞれの公爵令嬢がした功績について正式に表彰され、全員に個別の功績が有ることを発表したことで書く領地の領民達の誤解は解け、大きないざこざは解消へと向かった
それでも小さないざこざはやはり起きるものなので、各領地に七人全員で集まり仲の良いことをアピールして回って見せた
「なあ、こないだはあんなこと言っちまって悪かった、お前さんとこのお嬢様も立派なお嬢様だったんだな」
「うちも悪かった、お嬢様たちが仲良くやってるの見てたらなんか申し訳なくなってきちまってな俺たちが対立し合うとお嬢様たちも仲良くしづらくなっぺ、だから今日はおめえに謝ろうと思ってな」
「おれもだ、それになこないだおめえんとこのお嬢様がうちの領来てくれた時、魔法で百人以上の病や怪我治してもらった。あんなにいっぺぇ居たのに嫌な顔ひとつせず治してくれておめぇんとこのお嬢様は聖女様かもしんねぇって思ったよ」
「いやいやいやおめえんさ所のお嬢様だって、うちの領さ来た時に炊き出ししてくれてそれがうめぇし腹もしっかり膨れるしあの芋も置いてってくれてな、あれが有れば来年からはひもじい思いしなくなるおめぇんとこのお嬢様も聖女様じゃねぇか?」
「それにしてもわかんねぇのはなんであんな聖女様みてぇなお嬢様たちが昔は悪女って言われてたのかってぇことよ」
「んだな」
そんな事を言い合っているとおかわりのエールを運んできた店の女将から
「そんなことはもういいじゃないか、それよりもうちはあんたらが機嫌良く飲み食いしていってくれるのがなによりだよ」
「「ちげえねぇ」」
酒場からはそんな笑い声が溢れていた
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「みんな~、集まって~」
クロード領から運用方法を教えてもらってグレナド領にも孤児院が生まれ、ヘレネは公爵令嬢とは思えぬ装いで子どもたちを集める
「お姉ちゃん皆集まったよ~」
炊き出しや職業訓練で王家から功績を認められたヘレネの次なる改革は平民の中でもとりわけ職に着けない孤児達の手に職をつけるために出来ることに取り組んでいた。
孤児院の子たちが職につけるようになれば、普通の家から我が子も~ってなるんじゃないかしら、希望的観測だけどね
周りの従者たちからすれば、なにも公爵令嬢が直々に平民と混じって指導なんてとも思わなくもないが、お嬢様のやることはいつも奇想天外なので慣れて来つつも有った。付き合わせてごめんなさいとも思ったヘレネだが領地が目に見えて活気を帯びてくるのはやりがいの有ること心のなかで謝りつつもこれだけは止められないんだよね~と、ある意味振り切っていた
今日は出来上がったばかりの試作紡毛機のお披露目会
「なあにこれ?」
今まではスピンドルを使って一日の大半を糸紡ぎをしていたけどこれを使えば同じ量を三分の一の時間で出来る。紡毛機の台数が増えればもっと短時間で大量の糸を積むげる、この子達の勉強時間も確保しつつ今まで以上の量の糸が紡げる、一石二鳥よ、、、二兎を追う者は一兎をも得ずにならないように慎重に考えないといけないけど
糸紡ぎは女の仕事と興味なさそうだった男の子達も車輪の付いた紡毛機に興味津々、本当に男の子って機械とか好きよね
お手本に実際にやって見せる
「速い速い」
「あの部分がそう動くからこうなるのか」
速さに驚く子、仕組みを理解して納得している子、反応は様々みんなでやいのやいの騒いでる。仕組みを理解した子は紡ぐ方より紡毛機みたいな機械を設計したりする方が向いているのかも知れないわね、なにより子どもたちが楽しそうなのが嬉しい、初めて領地を視察したときのことを今でも思い出す。うつろな目で行き交う人々、公爵領だけあって食うに困ることは無いけど貯蓄出来るようなゆとりはない。働くために生きているのか生きるために働いているのかそんな言葉が頭に浮かんだ
「まずは身銭を切る事から始めよう」
まだまだ子供な私には税をどうこうなんて権限なんて無い、だから出来るところから始めるの
公爵家令嬢として恥ずかしくない程度の装飾品の類は必要だけど明らかに年齢に見合わない高級品を身につける必要な無いし実際には一度も身に着けていない物も多い、お抱えの商人を呼んで買い取らせようとしたけど今まで売るだけでこちらをカモだと思っていたお抱え商人は渋って買い叩こうとしてきたので交渉は決裂
商売に聡いメルダルス家のティナレに手紙を書き宝石商さんに来てもらったらなんと買い取りの見積もり総額がお抱え商人の五倍どれだけなめられているのか身を持って知ったわ、買い取りでこれだったのだもの売る方でもぼったくられてたと考えるのがいいわよね
お抱え商人だった商会には何も言わなかったけど以後取引は行われなくなったわ、元は日本人ですからねサイレントクレーマーです。二度と取引しません
それから身分を隠して炊き出しを始めたのだけれど、炊き出しというより前世の子ども食堂に近い形かしら
仕事自体は有るけど生活はカツカツといった感じだからこの形態を取ってみたの。ただの炊き出しだとその分親たちも並ばなきゃいけないし仕事をしないでも配給だけで食っていけるってなっちゃったら元も子もないでしょ
私の名前でこの炊き出しもとい子ども食堂は始まったけど、まさか公爵令嬢がそこで働いてるなんて思わないじゃないだから最初の頃は「点数稼ぎして良いとこにでも嫁ぐつもりだ」とか「元々領民の収めたものを使って良い人ぶって悦に浸ってんだろ」等々散々だったけど、やっぱりあれね人って余裕が生まれてくると視野も広がってくるものでしっかり仕事があって尚且つ食費が浮き始めると良い方向に変わっていったの
農地改革に取り組んでいたスレイニモフ家のセレーナからは子ども食堂向けの食材の融通だけでなく農法も教えてもらったりもした。代わりに私は子ども食堂の運営方法や職業訓練なんかのアイデアを教えた。自分だけでは思いつけないものを互いにカバーし合って七公爵料を中心に経済は徐々に上向きになっていったの
食堂の方も数も増えて人手が足りなくなっていったから領民から雇用も増えて食堂から独立してお店を出す人も出てきた
手に職を付けてもらう狙いも有ったから初めて独立した人のところにはお忍びで食べに行ったりもした
「お嬢様のお陰で店持つことが出来た」
って聞こえてきたときは嬉しくって泣いちゃいそうだったのは内緒、でもね感謝してくれる人もいれば制度を悪用する人間も必ずいる、それも最初から悪意を持って行う人間が
人は財産、前世の先生がそんなこと言ってたけどその通り領民は我が公爵家の財産なの、その領民から幸せを奪うものに私は容赦しないわ
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ここに出てくる紡毛機は所謂糸車と呼ばれるものです。現代の生活でも絶対に欠かせない『糸』ですが紡毛機が発明される前はスピンドルを使って女性は一日中、それこそ家事の時間以外はすべてと言っていいほど糸を紡ぐのが仕事で、国によっては喋るのを覚える前にスピンドルを使って糸の紡ぎ方を覚えるのが先なんて国も有ったそうです




