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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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94話 トーマス王子の夜の楽しみ

【 ル・ゴール帝国 王子 トーマス=グローバー 】


お母様から突然のお別れを告げられました。

びっくりです。

どういう事でしょうか。


魔人。

なにか、とても大切な言葉です。

記憶の中でとても重要な、忘れてはいけない言葉。

魔王、魔人、魔法。

何かが繋がりそうで、つながらない。


そう、魔力です。

先程うとうとしていた私にお母様は魔力を渡してくれました。

これまでも何度かありました。

とても心地良い感覚です。


他人との魔力の受け渡し。

これは僕にも出来るでしょうか。

それは周囲の魔力を集める事が可能という事でしょうか。

そうすれば、あのとき感じた魔力の熱を再び感じて、僕の記憶は鮮明になります。


ああ、でもお母様からは注意されたばかりです。

僕の魔力を知られてはいけない。

約束は守らないと。

約束を破ると・・・。


すごく怖い。

なぜだろう。

約束を破ることが、とても怖いです。



「トーマス?」

お母様が部屋を出てからしばらくして、乳母のアルメイヤが僕を抱き上げました。

その目からはたくさんの涙が零れています。

「ああ、あなたを忘れてしまっていた母を許してください。」

そう言って泣いています。


これがお母様が言っていたアルメイヤが母になるという事でしょうか。

でもアルメイヤの魔力の波長が今朝と違います。

少し居心地が悪いです。

お母様、いえ、エリーザですね。エリーザの魔力の影響が無くなったせいですね。


その後、騒がしい男達が部屋に来て、お父様が来てとバタバタとしましたが、僕はおとなしく笑顔で過ごしました。



エリーザのいない毎日を過ごしています。

どうやら変事があった様で、お爺様とリリィ皇后様も僕の部屋に来ません。

それにお父様が皇帝に、アルメイヤは皇后になるそうです。

その為、アルメイヤには皇后教育が課されて部屋から外出する様になりました。


王城内の新しい部屋に引っ越し、僕には新しい乳母が2人付きました。

部屋付きメイドもミヤさんの他に7人も増えたようです。


僕は赤ちゃんを演じています。

一方で周囲の声を聞いて情報収集し、昼寝を装い魔力操作に集中したりしています。

その成果もあって、乳母とメイド達の魔力検知が出来るようになりました。


大きな進歩です。

でも、エリーザの魔力はこの中にいませんでした。

近くにいると言っていましたが、どこにいるのでしょうか。



夜。


皆が寝静まっています。

この部屋は僕一人です。

お父様とお母様はお二人の寝室でお休みです。

乳母一人とメイド一人が隣の部屋で寝ています。


僕は夜泣きをしない手の掛からない子なので、二人は安心して眠っていますね。

さて、この時間が僕の魔法の練習時間です。

でも魔力は周囲に漏らさないように注意しなければいけません。

ですので、集中して、自分の中の魔力を練り上げます。

この時に、周囲にある魔力を集めるイメージを強くします。

すると、外側からうっすらと魔力の波が身体に入り込んでくる感覚があります。


今夜は調子が良いです。

ああ、この感覚です。

記憶にある体験が呼び起こされます。

こうして集めた魔力を伸ばした右腕の人差し指から・・・。


あぶないあぶない。

注意しないと、本当に魔力を放つ所でした。

まだ、魔力を練り上げる所で我慢しないと。


(よく踏み(とど)まりましたね。)

(えっ!?)

視線を巡らせると、大窓が開いていました。

その先はバルコニーで、そこにエリーザが立っていました。

(お母、いえ、エリーザ。)

(ええ、エリーザですよ。トーマス。寝顔を見に来たのですが、魔法の練習をしていたのですか?)

(ええと。はい、そうです。いけませんでしたか。)

(そうですね。今のは少し危険でしたよ。前世の記憶があるお陰で使い方は知っているようですが、扱い方が覚束(おぼつか)ないですね。これはその身体の魔力総量が少ないからかしら。)

(えーと、そうかも知れないです。)

(体内魔力の扱いを覚えるのが先ですね。周囲の魔力を扱うのは体内魔力の流れを制御できるようになってからですね。)

(流れ、ですか。)

(ええ。やってみましょうか。右手と左手を合わせて、右手から左手に魔力を流す練習をしなさい。少しづつ、ゆっくりと。)

(こうですか。やってみます。)

(それが出来たら次は左手から右手へ。その次はもう少し大きな魔力で。さらに少し両手を離して。徐々に少しづつやるのですよ。)

(はい、お母様。あっ、エリーザ。)

(ふふふ。)


その夜は2時間ほどエリーザが付き添って教えてくれました。



次の日の夜。


再びエリーザが現れました。

腕に赤ちゃんを抱いています。

そして、エリーザの横に女の人がいました。

魔力検知が出来る様になったので、その女の人の魔力もエリーザと同じように光り輝いて見えました。


(トーマス。紹介するわね。こちらは私の友人のアニタよ。)

(はじめましテ、かナ。よろしくネ。)

(はじめまして、トーマスです。)

(今日はこのお人形さんにトーマスの代わりをしてもらうわ。)


そう言うとアニタが僕を抱き上げ、エリーザが赤ちゃんをベッドに寝かせました。

(エリーザ、その子は?)

(ふふふ。この子は友人のスーニャが作った泥人形よ。よく出来ているでしょう。今夜は別の場所で魔法の練習をしますからね。)

(別の場所、ですか?)

(うん、いくネ。)


アニタは僕を抱いたままバルコニーに出ると、次の瞬間には凄く高い屋根の上にいて、さらに扉の前にいました。

ここは何処かの屋敷のようです。


(さぁ、中に入ってエリーザを待とウ。)

そう言ってアニタは扉を開けて中に入りました。

壁際に並んだ椅子に座り、僕を膝に乗せて向かい合います。


(いやァ。話には聞いていたけド、君は本当に凄いネ。)

(ええと。)

(おや、戸惑っているネ。あれ?エリーザから魔法を教えてもらう話、聞いてなイ?)

(はい。)

(あー、エリーザがネ。君の魔法の素質が高いかラ、皆で教えてやろウっていうんだヨ。)

(みんな、ですか?)

(そうだヨ。エリーザとあたしとスーニャ。あっ、リリィは忙しいから不参加だネ。)

(リリィ。リリィ皇后様ですか?)

(そうそウ。今はネ、カーロス=デアンって男の屋敷でメイドをしているヨ。)

(カーロス、その人はカルロス=ディアン公爵ですか?)

(そうそウ。君は賢いネ。)


キィィィィ、バタン。

扉が開いて閉じて、エリーザが入って来ました。

両目が紅く光輝き、妖しい雰囲気を放つ佇まいは周囲の気温を数度下げるようです。


「アニタ。なぜ、私を置いて行ったのかしら?」

「あレ?あたしの転移はあたしが抱きついていないと一緒に飛べないヨ。知ってるよネ。」

「そうだったわね。」

「エリーザはジャンプも平気だし走るのも早いから大丈夫でショ。」


エリーザはそれには応えず、僕を抱き上げました。

もう両目の紅い輝きは収まっています。


「さ、トーマス。ここの地下のお部屋に行きましょう。その場所なら、魔法の練習が出来ますよ。」

(エリーザ。さっきの目の輝きは魔力だよね?)

(ふふふ、そうですよ。)

(僕も前にお腹の中に熱を感じたんだ。その熱をもう一度感じたいです。)

(まぁ。では魔力操作と共に魔力の増加もやっていきましょうね。)

(はい。)


地下の隠し通路の先にある転送の間を使ってさらに移動すると、そこはスーニャの作業場でした。

小鬼や豚面鬼がたくさんいる中で、部屋の一角を使って魔法の勉強をしました。


それからは毎日一晩3時間の魔法訓練が始まりました。

アニタが送迎してくれます。

僕は夜がとても楽しくなりました。


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