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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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93話 新皇帝 ファルゴ=グローバー

【 ル・ゴール帝国 新皇帝 ファルゴ=グローバー 】


あの日、第一離宮で呆然としていた私を、内務大臣と彼の配下の者が迎えに来てくれた。

妻のアルメイヤと息子のトーマスもすぐに無事が確認された。


同時に父と母の死と、私が皇帝となることが告げられた。


それに、北方騎士団の敗北も。

叔父上。

そして第一軍の仲間達。

多くの騎士達。

私は、あまりにも多くの者を失った。



御前会議出席者には父の死について緘口令(かんこうれい)が言い渡された。

父は病で臥している。

なので私が皇帝代理として立つ。


そういう事になった。



骸骨の集団は健在だ。


幸いにも北方騎士団第二軍城砦都市および第三軍城砦都市から骸骨どもの動向報告が毎日届いている。

奴らは魔族領の広大な森林内で魔獣狩りをしているようだ。

自分達が潰した北方騎士団の代わりのつもりなのか。


私が第一軍城砦都市から乗ってきた飛空挺には第三軍が記した資料と第一軍が記した資料が積まれていた。

その内容を分析した者達は骸骨の目的が"魔王討伐"であり、彼らの戦いが戦力確保の為だと報告した。


この報告で帝国内部は混乱している。

曰く、「戦力確保が目的ならば、骸骨どもは帝都には来ない。」

曰く、「帝都守備隊がおるし、引退したとはいえ魔技持ちの貴族が大勢いるのだ。奴らは帝都に来る。」

曰く、「そもそも魔王とは?300年前に滅んだであろう。どこにおるのだ?」

曰く、「骸骨どもと戦うのか、それとも死を受け入れるのか?私は骸骨などになりたくないぞ。」

曰く、曰く、曰く、だ。


混乱は続いたが、骸骨が遠く北方に留まる現状に、徐々に周囲の緊張感も薄れていった。



20日程が経過すると、混乱は収まりつつあった。

皇帝崩御と私の新皇帝戴冠が正式に発表された。


その戴冠式は20日後に行う。

各領国の領主達には招待状が送付された。

そして領都商業ギルドの長にも招待状が送付された。


そう、領主達は帝都に来て、自らの解任を知らされるのだ。

そして、領都商業ギルドの長が領主代行を拝命する。

各領国の領主には帝国貴族が任じられるが、その者が現地に行く事はないだろう。

父がそう考え、皆がそのように動いた。


今は、骸骨の襲来に備えて魔技持ち武技持ちの貴族を帝都外に動かせない、という切実な理由がある。

さらに帝国騎士団再編問題については、各地の領国騎士団から2000人を補充する予定だ。

領国騎士団の反発が予想されるが「領主を代えた後ならば抑えられる」との首脳部の判断だ。



帝都内諸侯の勢力バランスも崩れつつあるようだ。

私の後ろ盾であるグローバー家は私で3代続けて皇帝を立てているが、その勢力は小さかった。

北方騎士団が全滅し次代を担う貴族がほぼいなくなった。


内務大臣ら今の権力者達の次の世代で生き残っている人材を見れば、圧倒的にディアン家が多い。

次にムーア家、ゲールマン家、グローバー家。

最後がホルト家だ。

ホルト家は武門を誇り、その多くの者が騎士団に所属し前線にいた。


これまで冷遇されてきたディアン家。

家長のカルロス=ディアン公爵は西方のノールデア領領主となり帝都を去る予定だったが、領主代行制度を利用して今後も帝都に留まるだろう。

他家の者はそれを(とが)める事が出来なくなっていた。

少なくとも現在帝国騎士学校在学の子供達が成人し騎士団の中核を担う頃までは、政治の中心はディアン家が握るだろうと多くの者が予想した。



戴冠式を明日に控え、私は政務を切り上げ居室に戻ってきた。

夕食までにはややしばらく時間があるので、妻と息子の顔を見に行く。


奥の部屋に続く扉を開けると妻アルメイヤの笑顔があった。

魔人の影響でしばらく塞ぎがちだったが、徐々に以前の明るい笑顔を見せてくれるようになった。

「アルメイヤ。」

「陛下。」

私は彼女をそっと抱きしめた。


魔人が私の妻を演じていた時の記憶は今も残っている。

だが、その顔はぼやけ、鮮明には思い出せない。

それで良い。


私は彼女を抱きしめる腕に一度力を込め、そしてゆっくりとその身体を離した。

「明日は戴冠式だ。今夜は一緒に夕食を食べよう。」

「はい。」

「トーマスは?」

「今はベッドの上で休んでいます。昼間はハイハイも上手にできて、とても活発ですのよ。」

「そうか。もうすぐ1歳だな。」


私はトーマスのベッドに歩み寄った。

シーツの上に横になり両腕を突き上げている。

何かを掴み取ろうとしているようにも見える。


「トーマス。」

私が声を掛けるが反応が無い。

ベッド脇に寄り顔を覗き込む。

目は開いている。

「トーマス。父が来たぞ。」

やはり、反応が無い。


「陛下。」

私の声が少し大きかったか、アルメイヤが声を掛けてきた。

すると、トーマスが両腕を垂らし、目を閉じた。


アルメイヤが来ると再び目を開く。

その顔はびっくりした表情になっていた。

「まぁ。トーマス。お父様がいらっしゃいましたよ。」

「あぅ。だーこぉ。」

トーマスはアルメイヤに反応し、彼女に腕を伸ばした。


アルメイヤがトーマスを抱き上げた。

トーマスはこちらを見ている。

私に右腕を伸ばしてきた。


「トーマス。」

私は右手でトーマスの手を握った。


バチィ。

私の右手が光を発した。



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