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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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95話 トーマス王子ばれる

【 ル・ゴール帝国 王子 トーマス=グローバー 】


ここ数日、周囲の人々の動きが慌しい。

父の皇帝戴冠式が数日後に迫っているからだ。


アルメイヤも皇后教育に加えてドレスの合わせや当日の進行確認や行動練習などで忙しそうだ。

父はここ数日は朝に顔を見せて声を掛けるだけになっている。


僕は良い子で笑っている。

でもこの赤ちゃんの身体には疲れが溜まっているようで、昼間は良く寝るようになった。

それは夜間の魔法訓練が理由なので、そう悪い気分じゃない。


体内魔力も増えたようで、僕の意識もかなり明確になった。

エリーザの魔力供与に加えて、スーニャが手持ちの魔石から魔力を吸い出して、それを僕に入れてくれる。

その魔力操作を訓練して、自分でも魔石の中の魔力を吸収できるようになった。


体内魔力の魔力操作も上達した。

目を閉じてゆっくりと集中すれば、お腹の中に魔力の温もりを感じる。

それを捉えて左の足先へ導き、お腹に戻して、次は右足の先へ、それもお腹に戻す。

次は右手の先、さらに戻って、左手の先へ、最後にお腹に戻る。

この動きをぐるぐると廻せれば完成だ。


もうすぐ、もうすぐ、僕の記憶が全て蘇る。

そんな予感と共に、今日もお昼寝だ。



昨夜の訓練中にリリィがやって来た。

姿は全くの別人だけどエリーザがリリィだと言うからリリィだと思う。

僕が会うのはエリーザと別れる前の日以来だ。

でも、リリィは僕がここで訓練をしている事を知っていた。

エリーザ達から話を聞いていたんだろう。


彼女からは新皇帝戴冠式が行われるので、数日の間訓練は中止するように言われた。

どうやらエリーザとアニタには仕事があるらしい。


戴冠式を明日に控え、周囲も緊張しているようだ。

アルメイヤも部屋にいる時も書類を確認している。

式の進行や挨拶する公爵家、侯爵家、領主達の名前を何度も復唱している。


僕は部屋の中をハイハイして、ボールで遊んで、積み木を組み立てたら、疲れた様子を見せて昼寝の準備だ。


乳母にベッドに寝かせられたら目を瞑り、お腹の中の魔力を感じる。

おや?

今日は魔力の熱量がいつもと違う。

熱い。

この熱は、あの時の熱だ。

ああ、僕はこれを待っていた。

熱をゆっくりと動かしていく。

左足、右足、右手、左手。

ぐるぐるぐるぐる。


熱の高まりを感じる。

でも、なんだろう。

溢れる気配はない。

どこかに流れている。

あっ、何かに、いや、誰かに繋がっている?

何かが見える。

目を開けて、手を伸ばす。

茶色の壁?

どこかの部屋だ。

とても暗いのに、不思議とはっきり見える。


わっ!

驚いて手を引っ込め目を瞑る。

ぼんやりしていた人の顔が、崩れた化け物の顔だとわかった。

あれは屍人の顔。


屍人、死、魂、幽界の門、神霊界、冥界、闇、闇、闇。


「約束です。振り返ってはいけません。」

女の人の声。

ここは僕の記憶の中だ。

誰の声だろう。凄く懐かしくて、心地よくて、愛おしいような。でも、少しだけ怖い。

その人影が遠くに小さく見える。

「誰だ?」

声に出して、少し強めに問い掛ける。


「お前は"魔王"だな。」

恐ろしい響きの男の声が応えた。

驚いた。

今の声は、すごく近くから聞こえた。


目を開けると、父の顔があった。

父も驚いた様な、戸惑っている様な表情をしている。


父はいつからいた?

もしや、僕の魔力を検知した?

あの問い掛けは父が?


「まぁ。トーマス。お父様がいらっしゃいましたよ。」

アルメイヤの声が聞こえた。

「あぅ。だーこぉ。」

と応えれば、アルメイヤが僕を抱き上げてくれる。


父と目があった。

笑顔を見せて、右手を伸ばす。

これは、いつもの動きだ。

僕におかしな所は無いですよ。


父が僕の手を取った。

バチィ。

父の手が光を発した。

「ぐっぅぁ!」

手がちぎれるような、かなりの痛みを感じた。

僕の口から赤ちゃんとは思えない痛みを(こら)える声が漏れる。

しまった。ここはおぎゃあと泣くべきだったか。


「ま、まさか・・・」

父が呆然とした、驚きと戸惑いの表情でつぶやく。

「陛下、トーマス、一体何が?」

アルメイヤは状況が分かっていない。


僕はどうしよう。

考えればすぐに「ここにいては危険だ」と頭の中に警報が響く。

僕は首を廻して窓の外の向かいの棟の屋根を見た。

アニタの転移は何度も経験している。

あれは、僕も出来る。


僕は屋根の上にいた。

僕を抱っこしているアルメイヤも一緒だ。

「えっ?」

驚いているアルメイヤには悪いが、もう一度。

北の館を探すが、ここからは見えない。

一番高い尖塔、あの上なら。

尖塔の屋根に転移して下を見る。

あった。


ぐるん。

「きゃ。」

なんて事だ。

アルメイヤが足を滑らせ、そのまま屋根を滑り落ちる。

僕の視界は空しか見えない。

いや、尖塔の鐘が見えた。

もう一度。

アルメイヤの手は離れている。

彼女の悲鳴が聞こえて来る。

僕だけが尖塔の鐘の部屋に転移した。


だが、どうした事だ。

くらくらする。

ああ、これは魔力切れだ。

なんて事だ。

僕が魔力切れなんて、学生の頃以来じゃないか。

ああ、意識が途切れる。

大丈夫、少し、寝れば、かい、ふ、く、・・・。


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