表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
101/111

96話 魔人リリィ

【 魔人 リリィ 】


カルロス=ディアンの館にメイドとして潜り込みました。

ディアン家傍系のメディク男爵家三女、リズリット=メディク(18)が今の私です。

年齢の他に髪色や体型の変更もしていますが、身体変化の術は私の得意とするところです。

地方への移転作業のお手伝いという名目を使えば簡単でしたね。


さて、ディアン家はグローバー家から見れば魔力の劣る家系で、帝国騎士団内でも家門としての力が無く、騎士団を引退した者達が幅を利かせる政界、貴族社会においてもその地位は低いです。

それは、一度も皇帝を輩出していないから。

ル・ゴール帝国成立時にはあった権勢も、その後が続きませんでしたね。


そして現在。

帝国内の管理地を離れ、西方のノールデア領への移転準備で大混乱中。


おかげで簡単に入り込めましたけどね。



数日が経過したようですが、皇帝崩御の話が伝わってきません。

どうやら緘口令(かんこうれい)が出たようです。

皆様よくお守りになっていますね。


聞こえてくる話は、

「皇帝が病に倒れる。」

「ファルゴ皇太子が北の前線を離れ、皇帝代理を務めている。」

「皇帝がどうやら危ないらしい。宮殿内で医師達が診ているそうだ。」

「ノールデア領への移転は延期だとか。」

「いや、中止のようだ。」

「いや、新皇帝戴冠後に再検討されるようだ。」


ほとんどがディアン家の願望です。

これは良いですね。

人が願望を口にする時、それを叶える道を示せば、容易く『誘惑』に掛かります。


では、執事長の男と話をしましょうか。ふふふ。



私が執事長の男に領主代行制度について教えると彼は大層驚き、喜びました。

領主代行制度の話はディアン家には伝わらないようにしていましたからね。


どうやら執事長から主人のカルロスに話が伝わり、カルロスは帝国首脳部と話を付けたようです。

執事長からの私への信頼もあり、私は公爵夫人付きのメイドになりました。

これでずいぶんと自由に動けます。



皇帝崩御と新皇帝戴冠が正式に発表されました。


北の館の処理が終わり、館は閉鎖されたようです。

エリーザからは早速連絡が入り、庭番の泥人形達はスーニャの元に戻したようですね。

いずれ時が来たらディアン家の庭番も作成しましょう。


次の日の夜明け前にエリーザが来ました。

何でもトーマスに魔法の訓練をさせたい、と。

魔法の知識があるのに、身体が赤子です。

身体が成長し体内魔力が増えてからが良いのですが、興味本位で魔法を扱うと事故を起こします。

エリーザが離れてしまいましたから、きちんと訓練させるのは良いですね。

私は忙しいので参加しませんよ。



新皇帝戴冠式が近付いてきました。

ディアン家にも領国からの客人が連日訪れています。

ノールデア領からも領主代行を務めるトールットという者が来ました。


カルロス=ディアン公爵が直々に出迎えますが、やはり平民、見劣りしますね。

骸骨騒動の発端の地ですから、いくらか情報を聞き出せればよいのですが。

戴冠式後のパーティーで接触してみましょう。



戴冠式前夜。


ディアン家の衣裳部屋でエリーザとアニタに着せるためのドレスを選んでいると、アニタが来ました。

予定より随分と遅れています。


「遅かったわね。エリーザは?」

「エリーザはトーマスと一緒だヨ。魔力切れで倒れていたんだヨ。」

「はぁ。一人で魔法を使ったのね。手の掛かる子だこと。」

「いやいヤ。王城はそれで真夜中に大騒ぎのお祭りだヨ。楽しいことになってるヨ。」

「なにがあったの?」

「ええとネ。」


アニタの説明は長いので私の理解したところを示しますわね。


私に会いに来る前、エリーザとアニタはトーマスの様子を見る為に王城の屋根の上に立ち寄りました。

トーマスの部屋のバルコニーに転移すると部屋の中にトーマスはおらず、帝国騎士が2人いました。

隣の部屋では男が大声で「魔人の女はまだ見つからないのか!」と叫んでいます。

その声はファルゴ新皇帝の声でした。


そちらの部屋を覗いてみれば、部屋の中にはファルゴの他に数人の帝国騎士がいました。

その中の一人が応えます。

「北の館と第一離宮周辺を探しておりますが、いまだ発見できず。」

「くそ、くそ、くそ・・・」

ファルゴは大層いらだっている様子でした。

ここでエリーザとアニタは王城の屋根に戻ります。

良い判断ですね。


アニタが周辺を見れば、王城庭園、北の館、第一離宮といたる所に帝国騎士の姿がありました。

皇帝戴冠式を控え王城とその周辺の警備担当騎士は増員されています。

どうやらトーマスの周辺で何かがあり、それを私達の仕業と考えているようですわね。


「あなた達、北の館を出る時には帝国騎士と会わなかったの?」

「ああ、1階の部屋の窓から屋根に転移したからネ。あたしは見なかったネ。」

「それで、エリーザはトーマスを見つけたのね。」

「そうだヨ。屋根の上から見ていたラ、尖塔の上、鐘の所に魔力反応があるっテ、エリーザが言うからネ。あたしが行くとトーマスが倒れていたんだヨ。」

「今はどこに?」

「北の館は無理そうだからネ。この屋敷の屋根の上にいるヨ。」



夜ならば屋根の上でも良いですが、明るくなれば容易に見つかります。

この屋敷の中には移転準備で荷物を出し、空き部屋になっている部屋がありますので、その内の一つに案内しました。


「面倒を掛けるわね。」

「ごめんなさい。お姉さま。」

「いいわ。それよりトーマスは目覚めないのかしら。」

「私の魔力を流しているので魔力切れは納まったはずですが。」


エリーザに抱えられたトーマスは一見すやすやと寝ているように見えます。

ですが、呼びかけても揺すっても反応しません。

それに、これまではエリーザの魔力を流せば睡眠状態からは覚醒していた、と。

魔力切れの症状だけではないのでしょうか。


エリーザに替わり私もトーマスの身体に魔力を流してみます。

魔力は順調に流れました。

何の抵抗も無く。

これはおかしいですね。

不調であれば、その原因となる部位に魔力の抵抗や塊の反応があります。

そうでなければ、全体から少しの反発を感じます。

これは他人の魔力に対する反発なので、正常な反応です。

それらが一切ありません。

これはおかしいです。

まるで、どこかに流れていってしまった様な。

穴の中に水が流れ落ちる様に、魔力が流れていくような。

この感覚は!?


私は咄嗟に手を離しました。

「お姉さま?何か分かりましたか?」

「エリーザ。トーマスを床に降ろし、離れなさい。」

「えっ?」

「早く!」


私の声に一瞬驚きの表情を見せましたが、エリーザはトーマスを床に降ろし、一歩下がりました。

「お姉さま。何が?」

「トーマスはあの男の記憶を取り戻しました。」

「えっ?あっ、魔王。」

「そうです。"幽界の門"が開きます。」

「それは!?ああ、トーマス。何てこと。」


何がきっかけで記憶を?

魔力切れ?

いえ、それよりも。


現在の時間は深夜。

私とエリーザが魔力を与え、道を作ってしまいました。

条件が揃っています。

幽界の門が開けば、すぐにでも幽鬼の集団が現れます。


「すぐにここを離れます。」

「はい。」

エリーザの身体が私の方へ振り向きました。

アニタは窓の外を見て転移先を探しています。

私は。


私の足首を骸骨の手が掴んでいます。

トーマスの背後、寝ている木の床が黒い穴に飲み込まれ、穴からは幾本もの骸骨の腕が伸びています。

それらが私の足を、エリーザの足を、アニタの足を掴んでいます。


「転移ができないヨ!」

「お姉さま!魔力が吸い取られます!」


ああ、トーマスの身体が宙に浮き上がりました。

その背後に闇の穴が広がります。

私の魔力も吸い取られています。

トーマスの目が開きました。

私の、エリーザの、アニタの、目を見つめている紅く輝く瞳。


ああ、身体から魔力が抜けていきます。

身体変化の術が解け、身体は元に戻り、身体強化の術も状態異常無効の術も解けていきます。

骸骨の腕が何本も身体に絡まり、掴み、身動きもとれなくなりました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ