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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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97話 皇帝戴冠式

【 ル・ゴール帝国 王子 トーマス=グローバー 】


これは記憶の中の情景だ。


綺麗で、可愛くて、優しくて、でも、頼れる強さを兼ね備えた、僕の愛しい女性。

魔導士団にいた君を一目見た時から、僕は君の虜となった。


食卓で、街中で、城内で、いつも隣には君の笑顔があった。


ああ、僕は、君の笑顔が、もう一度見たい。

だから、君に会いに行くよ。



意識が戻ったか。


だが、目が開かない。

耳も聞こえない。

肌感覚もなければ、手足を動かすこともできない。

この身体は力も魔力も足りない。

もどかしい。


計画通りに5歳の頃に覚醒できれば問題は無かった。

しかし!あの魔人の女め!

おのが魔力を赤子に与えるとは。

中途半端に成長した魔力のおかげで、中途半端に覚醒してしまったではないか。

ええい、いまいましい。


ん、この魔力はエリーザか。

私を抱き上げて魔力を流しておるな。


いまいましいが、今は助かる。

この魔力を使って"幽界の門"を開けるとしよう。



門の術式を一つ一つ丁寧に思い描いて行く。

描きあがれば、それは魔力を吸収して消滅してゆく。

順調だ。

徐々に門が形成されていくのを感じる。

白い門柱が二本。

白い門扉が二枚。


おお、新しい魔力が流れ込んできた。

これはリリィか。

門扉に両手を伸ばしあて、魔力を流し押し開く。

闇だ。

目の前に一筋の闇がある。

それが徐々に広がる。

門扉を押せば、闇が広がる。

指一本分。

腕一本分。

身体半身分。


ああ、まだだ。まだ魔力が足りない。

魔力が欲しい。

おや、そこに誰かおるな。

三人の女か。

女から魔力をいただこう。

ああ、良い。

エリーザ、お前か。

これはリリィか。

もう一人はアニタだな。

いいぞ、三人の魔力を得て、一息に扉を押し開けよう。

我が腕を4本に増やし、魔力を大量に流し込めば。


フハハハハァ。

開いたぞ。

では、幽鬼どもを連れて来るとしよう。



開いた。


ああ、ついに、再び開ける事ができた。


今度は間違わない。


■■■


【 ル・ゴール帝国帝都 ディアン公爵邸 】


夜明け。


ディアン公爵の館にもさんさんと朝日が差し込む。

今日は新皇帝戴冠式がある為に公爵夫妻も早くから王城へ向かう。

下働きの者、メイド、執事らは日の出前から動き出し、朝の支度を始めた。


公爵夫人付きのメイドが一人、朝の点呼に姿を見せなかった。

同室のメイドに確認すると部屋にもいないと言う。

今日は忙しいので、新入りのメイドの事はそれ以上誰も気にしなかった。


館の3階は荷物を出し終えた空き部屋が多く、誰も近寄らなかった。


■■■


【 ル・ゴール帝国 新皇帝 ファルゴ=グローバー 】


トーマスが魔人?


その疑問の答えを得る前にアルメイヤとトーマスが目の前から消えた。

私はすぐに廊下の騎士に声を掛け、騎士団総出で王城周辺、第一離宮、北の館、その周辺を捜索するように命じた。

突然の命令に戸惑う騎士達に「魔人の女にさらわれた!早く探せ!」と言い放った。


ああ、その後すぐに最初の報告が入った。

アルメイヤの死。

死体が見つかったのは大聖堂前の路上だ。

剣による死ではなく、身体が押しつぶれた様な様子だと言う。

空からでも落ちたのだろうか。


トーマスは依然、行方不明のままだ。


あの場に魔人の女はいなかった。

あの後、部屋にいた乳母とメイド達の手を握り確認したので間違いない。

だが、トーマスの手は光った。


では、トーマスが魔人なのだ。

私の前から消えた時は、高速移動のような風の動きは無かった。

ならば、転移魔法か。

だが、魔法陣の用意も無く行える転移魔法など聞いた事がない。

魔人ならば可能なのだろう。


しかし、トーマスはアルメイヤの子だ。

出産後の赤子を抱くアルメイヤの顔を、私ははっきりと覚えている。

トーマスはいつ魔人になったのだ?

あのトーマスは私の子なのか?

魔人の女がトーマスを変えてしまったのか?

何も分からない。

分かっているのは、魔人の女が敵だということだ。


騎士達による魔人の捜索は、朝になって一度中止になった。

私の皇帝戴冠式がある。

だが、私の横に立つアルメイヤはいない。

彼女は大聖堂内に安置されている。


内務大臣が私の元に来た。

彼はグローバー家の者で、父の政務を良く手伝ってくれた信頼できる者だ。

昨夜からの騒動について詳細を知っている。

私を心配して来てくれたようだな。

大丈夫だ。

戴冠式は行う。

そして、余は宣言するのだ。

骸骨共を根絶し、その裏で糸引く魔人の女共を八つ裂きにする、と。


■■■


【 ル・ゴール帝国 領土管理局局長 トモレフ伯爵 】


今日は皇帝戴冠式の日です。

やれやれ、無事にこの日を迎えられましたな。

なにせ、日取りが決まってから各地の領主達に招待状を送ったのですが、日数の余裕がございません。

領主達が招待状を見てから帝都まで来るのに早くて8日、遅ければ20日以上掛かります。

それでは皇帝戴冠式までに間に合いません。

そこで私共は考え、関係部署に協力を仰ぎ、6台もの高速魔導馬車を借りることができました。

これで帝国直轄領の領域まで来ていただければ、帝国直轄領内であれば2日以内に移動ができます。


特に北西に位置する遠方のキステード領が問題でしたが、ここは元領主の兄弟が相続を争っており、領都商業ギルドのギルド長がキステード領を代表して皇帝戴冠式に参加する事に反対した為に、不参加の返事が来ております。

領国代表が不参加ですと、その後の領国の扱いが軽いものになりますが、仕方ないですな。

次の領主がグローバー家の方に決まっていますから、特に酷い目に遭いそうですな。


その他の領国からは参加の御返事をいただきました。

私共も用意した甲斐があったというものです。

日程を調整して皆様ご無事に帝都にご到着なされました。


明日からは領主対象の会合(彼らは罷免されますな)、商業ギルド長対象の会合(彼らは領主代行に任じられますな)、その後の立食パーティーと予定が詰まっております。

ですが、今日はファルゴ皇帝陛下の誕生を皆と喜びましょう。



自邸から王城へ向かう道中は大変な人だかりです。

戴冠式後は帝都内のパレードも予定されていますので、王城へ向かう馬車からは住民達が飾り付けた街路の様子も見えます。

王城へ入る馬車の列は長く、私も大変待たされました。

ようやく城内に入ります。

今日は王城内での執務もほとんどが休みとなって、皆が戴冠式とパレード後のパーティーに出席をします。


中央大広間が会場ですが参加人数が多いので、そこに続く複数の部屋に飲食物が用意され、簡単な立食ができる用意がされています。

帝都居住の貴族家に加え、近隣領国の貴族家も集まっているのでしょう。

私は今回高速馬車の手配などで協力していただいた方やなじみの方、一族の方々と挨拶をして廻ります。


すると、大広間から楽団の曲が流れて来ました。

この曲が始まると皆が大広間に移動し整列します。

そろそろ皇帝陛下は大聖堂での宣誓を成されている頃でしょうか。


曲が終わり、大広間が静まります。

いよいよ、ファルゴ新皇帝のご登場ですな。

陛下の後には儀典局局長、内務大臣、大神官様と神官達が続きます。

おや、皇后様がおられませんな。


内務大臣が開催の挨拶をし、大神官様が太陽神の祝福を唱え、儀典局局長が王冠をファルゴ皇帝の頭に載せ、皇帝杖を授けます。

会場からは拍手と歓声が沸き起こります。

ファルゴ皇帝がそれに応えて手を振れば、皆が静まります。

さあ、新皇帝のお言葉ですぞ。


「皆の者、良く聞くが良い。我が帝国は速やかに骸骨の集団を排除する。そして、奴らを操る魔人共をこの手で八つ裂きにするのだ。皆の者!奮起せよ!この戦いに勝利せずに帝国の未来は無い!」


オオゥ!!

一部の参加者が応えて歓声を上げました。きっとホルト家の戦闘好き共です。

ファルゴ皇帝陛下はそれだけを言って会場を出ました。

その後を慌てた様子で内務大臣が追いかけます。

今のお言葉は騎士団の出陣式の様なお言葉です。

会場はざわついております。


つまりは、そういうことなのでしょうか。

前回、前皇帝陛下最後の御前会議、帝国騎士団がほぼ壊滅状態で骸骨どもと戦っていると聞きました。

その勝敗はその後聞いておりませんでした。

ですが、勝利の話もなければ、凱旋式もありません。

負けたのですね。

もう帝国騎士団はないのですね。

そして、骸骨どもが帝都に、ここに攻めてくるのですね。

後は我々が戦うしかないのですね。


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