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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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89話 リリィ皇后

【 ル・ゴール帝国 トーマス王子 】


今日は部屋の外が少し騒がしいです。

どうかしたのでしょうか。

部屋付きメイドのミヤさんと乳母のアルメイヤさんもそわそわしています。

お母様は先程呼び来たメイドと共にこの部屋を出て行きました。


少し意識を耳に集中すると部屋の外の声が聞こえてきました。

これは魔法ではないです。

お母様との約束は破っていませんよ。


「ファルゴ殿下がお戻りになられた。」

「では、戦いは終わったのか?」

「それが、殿下の意識がないそうだ。」

「なんと。」


これは廊下に居る衛兵の会話です。

ファルゴ殿下とは僕のお父様です。

お母様からは"悪い魔物を倒しに行っている"と聞いていました。

お戻りになられたのは嬉しいですが、意識がないのは心配です。


お母様はお父様の部屋へ見舞いに行かれたのですね。

では、大丈夫でしょう。


僕は記憶の中の魔法の確認作業に戻ります。

イメージトレーニングです。

実際には魔法を行使していないので、セーフです。


土魔法、火魔法、水魔法は終わりました。

風魔法は得意ではなかったようです。

得意だったのは闇魔法。

ですが、記憶がぼんやりしていて、よく思い出せません。

記憶があるのに、はっきりと思い出せない。


あの"熱"。

あの日の魔力の高まりは、あの日以来感じていません。

あれがあれば、すっきりと思い出せそうなのにな。


■■■


【 ル・ゴール帝国 リリィ皇后 】


トーマスはあれ以来おとなしくしています。

エリーザとの約束を良く守っているようですね。


スーニャが北の館地下の転送の間を使って私の元へと現れました。

ずいぶん久し振りですが、どうやら骸骨の大群に魔人の城を占拠されたようですわね。


アニタは両目を失い、メリッサは行方不明。

皇帝から話は聞いていましたが、骸骨の大群は想定以上の脅威のようですね。

とりあえず、アニタの目は治して差し上げるように言ってスーニャを帰しました。


退魔の光を使う骸骨もいるとか。

帝国騎士の扱う聖魔法は大した力は無いはず。

いるとすれば、あの男。

ですが、彼は西方の田舎に帰ったと聞きました。


そういえば、骸骨騒動は西のノールデア領が始まりでしたね。


弟のブキャナンに任せたと皇帝は言うけれど、大丈夫でしょうか。

領国の領主の選定に頭を悩ましていましたが、帝国騎士団が負ければ、骸骨の大群が帝都に押し寄せるのではないかしら。



朝方、北の前線より飛空挺が飛来し、ファルゴが戻ったようです。

意識がないとか。

エリーザが付き添いに行ったようですが、私は北の館で控えています。

城内はざわめき、皇帝は帝国騎士団指令部に行きました。


帝国騎士団の敗色濃厚。


初代皇帝の願いを叶えて以来、私の遊び場となっていた帝国も、終わりが近いのかしら。

でも、この状況になるこの時に、トーマスは前世の記憶を持って生まれてきました。

私達が"魔王"にしたあの男の記憶を持って。

転生の魔法があるのは知っていますが、あの男はそれを実現したのかしら。


ですが、トーマスは前世の知識、記憶、人格、全てを引き継いでいるようではないようね。

転生は完璧ではないようです。

成長すれば、魔力量も増えることでしょう。

でも、今はまだ無理ですね。


骸骨の大群が帝国を滅ぼす。

その数年後に、骸骨を討ち倒し再び帝国を作るのが、トーマスの運命なのかしらね。



スーニャとアニタが戻ってきましたので昼食を一緒にします。

彼女達は私の友人としてメイド達には伝えています。

アニタからは骸骨との戦いについて聞きました。

やはり退魔の光を使う骸骨は注意しないといけないようですね。


昼食後の紅茶を楽しんでいると「陛下がお戻りになられました」とメイドが伝えて来ました。

その後ろから陛下がお茶室に入ってきました。


昼食は城内でお食べになったと聞きましたが、お戻りになるには中途な時間です。

背後には近衛騎士が20人ぐらいいるようですわね。

先触れの使者も出さず、どうしたのかしら?


「陛下。お戻りになられましたのね。昼食はお食べになりまして?」

「おお。ここにおったか、リリィ。」

皇帝が両手を広げて私に寄ってきます。

スーニャ達をちらりと見たようですが、すぐに私に視線を戻しました。


「昼食はまだなのだが、少しリリィに聞きたいことがあってな。お客様の前だが良いか?」

「まぁ、なんでしょう。陛下。」

「先日、我が弟のブキャナンが来たのだ。話したであろう?」

「ええ。」

「奴が言うていったのだ。我が帝国は魔人の女どもと手を組み、茶番の歴史を作っておると。」

「まぁ。」

「くだらん話だろう。わしもその時は信じなかった。だが、帝国騎士団指令部の者が信じてな。その者が"皇帝は騙されています"と言うのだ。」

「まぁ。」

「そやつがわしに覚醒の魔術を掛けた。すると、なんと!わしの記憶が鮮明に蘇ったのだ!」

「まぁ。」

「これは帝国の危機だ!帝国の存亡の!その成り立ちの!これからの!帝国の危機なのだ!リリィ。ああ、リリィよ。」

「はい。陛下。」

「余が、わしが愛したのは、アマンダ=グロリア伯爵令嬢だ。お前ではない。お前ではないのだ、魔人!アマンダをどうした!?彼女はどこにいる!!」


皇帝が私の腕を両手で掴み、きつく締め上げます。

ああ、怒った顔も好きだったわ。


「言え!魔人めが!」


皇帝の目が私の目の前にある。

だが、この精神状態では私の『誘惑』の力は効果がない。

『洗脳』も完全に解けてしまったようですね。

残念ですが、ここまでのようですね。


「アマンダはここに居るわ。」

「なに?」

皇帝は"彼女は死んだ"と思っていたようです。

とんでもない。

彼女には代替わりの時に私の代わりに死んでもらわないといけないのです。


「アマンダ。」

「はい、奥様。」

私が背後に並ぶメイドの一人に声を掛けると、彼女は一歩前に出ました。

そう。

彼女がアマンダ。アマンダ=グロリア伯爵令嬢。

私が入れ替わった、本来の皇后。

ファルゴ皇太子の生みの親。

今は、その記憶は失くしていますけど。


「ア、アマンダ、なのか。」

彼女の顔を見た皇帝の力が緩みました。


私は魔力を放出し、皇帝を吹き飛ばします。

そして、この部屋にいる全員の首を切り落としました。


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