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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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87話 別離

中央大森林の西にある草原に骸骨飛竜を降ろした。


第二軍城砦都市周辺は川と森林があり、広大な空き地がない。

骸骨軍団を集結させるには具合が悪いので、この草原を拠点としている。


今は、ほとんどの骸骨騎士達が森林内での魔獣狩りの最中だ。


10頭の骸骨飛竜達は上空を旋回しているが、先頭にいるのはシーカーだな。


俺達を降ろした3頭も鞍を付けたまま飛び上がり、仲間に加わった。


ドウアンが俺達の元に寄ってくる。


「マスター。」

「うむ。骸骨飛竜達の様子は。」

「好調。」

「そうか。で、乗り手の選考方法は決まったか。」

「骸骨飛竜、選ぶ。」

「なるほど。骸骨飛竜自らが選んだ骸骨騎士ならば、相性も良いだろう。」

「条件。馬上手、遠距離魔法攻撃可、槍得意。」

「なるほど。」


骸骨騎士と剣士を合わせて2万5千人だが、その条件だと対象はかなり絞られそうだな。

北方騎士団所属だった騎士は普段騎乗しないだろうし、領国騎士団出身者は魔法・魔技が使えない。

つまり乗馬技術の高い、槍が得意な槍の魔技使い、または魔法使いが対象となる。

そんな骸骨騎士、いるのか?


「わかった。そちらは任せよう。他に何かあるか?」

「いえ、骸骨飛竜、ない。マスター。」

「ん?その他で、あるのか?」

「はい。屍人、待つ、魔力の源泉。」

「あそこか。」


俺はディエゴと共に洞窟に向かった。

骸骨飛竜で飛べば良かった、と思ったのは、かなり歩いてからだった。

たしか、3日か4日ぐらいの距離だったな。



それは見事な岩城だった。


かつての洞窟の入口は大穴が開き、火トカゲの巣になっていたが、今はそこが石壁に覆われ、見事な装飾細工が施されている。


門衛役の様に入口の両脇にはクロッカーら屍人剣士3人が立っている。

入口に扉はなく、四角い開口部を潜れば、そこは正に城の内部のような広間が広がっていた。

真っ暗だが。

我々骸骨の眼には問題ないな。


広間の奥に廊下が続いており、脇には水路が備わり外へと流れ出ている。


広間の奥にルー伯爵達がいたので、俺は聞いてみた。


「これは何だ?ルー伯爵。」

「マスター。骸骨騎士の皆様が我々屍人の為に、この地に城を作ってくれたのです。」

「そうか。土魔法の成果、という訳か。」

「はい、マスター。魔力の源泉があったからでしょう。ここの土は魔力を多く含んだ、いわば魔石の原料のような状態だそうです。」

「見事だな。」

「ええ。この装飾は、ほとんどがあちらの骸骨騎士、ノーランが作成しております。」

「ノーラン?」

俺の吸魂した記憶によれば、北方騎士団第一軍所属の騎士で、ノールデア領出身。なるほど、ラムデスの甥なのか。


「ルー伯爵。この城は屍人の為に作られたのか?」

「はい、マスター。その事で、お話がございます。」

「なんだ。」

「我々屍人は、ここでマスターとお別れいたします。お許しを頂けますか。マスター。」

「なんだと?」


俺が周囲を見れば、ラムデス達が俺を見ていた。

ノールデア侯爵、ガーギウス大使、伯爵夫人クラリス、サイクス、オズマ。

皆の顔を見ながら、俺は聞いた。


「理由を。」

「はい。今回の峠越え、でございます。マスター。」

「別行動とした事か。しかし、魔導馬車がある以上、別行動は必要な事だ。」

「されど。ここより北へ向かうには"大陸横断山脈"を越えねばなりません。我々屍人には辛い道程になりましょう。」

「そうか。皆で決めたのか?」

「はい、マスター。」

「わかった。」

「ありがとうございます。マスター。」

「他に残る者はいるのか?」

「屍鼠と腐肉大砂百足が私達の護衛をしてくれるそうです。それと腐肉喰い丸スライム1匹が掃除をしてくれると。」

「わかった。」

「この地より魔王討伐の成功をお祈りさせていただきます。」

「そうだな。魔王討伐の後に報告に来る。」

「おお、お待ちしております。マスター。」


門番役のクロッカー達もここに残る。

骸骨騎士だがノーランも残りそうだな。


ルー伯爵達は俺の下僕だ。

俺への忠誠心は今も変わらない。

そして、骸骨軍団の目的も理解している。

彼らが屍人だからという理由で自ら戦列を離れる事を選んだのならば、その責任は俺にある。

彼らを屍人にしたのは俺なのだから。


だから、彼らが決めた事に、俺は反対しなかった。


今一度、周囲の者達の顔を見る。

「では、さらばだ。」


その時だ。

俺の胸の奥、体の中心に熱を感じた。

前回ここに来た時にも感じた魔力の高まりだ。

だが、魔力の源泉は封じた。

これは周囲に漂う高密度の魔力の影響か?


いいや違う。


「おお!マスターの目が!」

「光輝いております。」


ルー伯爵達の声が聞こえる。

だが、俺の意識は別の物を捉えていた。


これはどこだ。

室内の天井が見える。

豪華な飾り付けがされている。

手だ。

小さな手。

赤子の手。

自分の手。


覗き込んでくる男の顔。

「陛下。」

女の声が聞こえた。


そこで映像が暗闇になった。

いや、まぶたを閉じたのだ。

赤子が。

この赤子は。

この結びつきは。


『誰だ?』

頭の中に男の声が響く。

声に聞き覚えはない。

だが、分かる。

「お前は"魔王"だな。」

『!』


俺の声に驚いた感情を残して、接続が切れた感覚がした。

魔力の熱も感じない。


俺は隣に立つディエゴからルー伯爵達の顔を見た。

「"魔王"の居場所が分かった。帝都だ。」

「なんと!?」

「帝都に。では、マスター。」

「うむ。」


応えようとして、逡巡する。

今、戦うか。

先程までの目標に沿って、戦力集めに旅立つか。

時間を掛ければ"魔王"は力を付ける。

今現在、奴は赤子だ。

そう、俺が骸骨に転生した時、奴も転生した。

奴は人間として転生した。

だから、まだ赤子なのだ。


今ならば、この骸骨軍団の戦力で倒せる。


「これより骸骨軍団は帝都へ向かい、魔王を倒す。」



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