85話 騎士団長との戦い
リッターとレクターが防いでいてくれるので正面の守りは万全だが、左右の状況が怪しくなってきた。
帝国の部隊に合わせて骸骨軍団の部隊も広がり、いたる所から帝国騎士達が戦列を抜け出し廃村に向かってくる。
骸骨騎士達はそれを追いかける形になったが、廃村の我々を気にしてか、魔技を撃たない。
一方、この戦いを最後と決めた帝国騎士は、周囲の味方に構わず魔技を撃ち始めた。
昨日の戦いと、状況が逆転している。
腐肉喰い丸スライムが食事中なので、腐食ガスが漂っている死体置き場が戦闘の空白地となり、これが防壁になっている。
だが、腐食ガスを風魔法で払いつつ迫り来る帝国騎士達がいた。
帝国騎士側の狙いは俺だ。
帝国騎士達は廃村に集まってくる。
その外側を骸骨騎士達が追いかけている。
俺が輪の外に出れば、包囲殲滅できる状況になる。
俺は骸骨大砂百足に命じた。
俺を喰え、と。
足元が振るえ、俺とディエゴは大砂百足の口の中に飲み込まれ、砂中に没した。
◇
ダバー
俺とディエゴは骸骨大砂百足から吐き出された。
骸骨大砂百足に礼を伝え、砂を払いながら立ち上がれば、ここは彼らの砂場だ。
俺はシグス達に脱出した事を伝え、魔技を撃っていいぞ、と伝えた。
リッターとレクターは躱すだろうが、魔法操兵達は被害に遭うだろうな。
屍人達は廃村の中だから大丈夫か?
さて「吸魂」も再開しよう。
「やはり、ここに現れたな。骸骨殿。」
俺は振り返った。
これは、リッター達が使った『気配断ち』スキルか。
キシィーン。
ディエゴの周囲が氷で覆われる。
『魔法吸収壁』のお陰でディエゴ自身は凍り付いていないが、その影響範囲外の空間が凍っているので身動きができない。
「騎士団長。」
「これで1対1だ。いざ。」
騎士団長が剣を抜く。
俺も剣を抜いた。
「双影身!」
騎士団長が自身に魔法を掛けると、その身がぶれた。
そして、二人の騎士団長が立っていた。
なんと、分身したのか。
これは、どちらかが実体なのか、二人とも実体なのか。
「「ゆくぞ、骸骨殿。武神乱舞!」」
二人の騎士団長が同じ声で同じ言葉を発し、同じように剣を振り上げ、違う速度で振り下ろしてきた。
「連撃。」
カッカッ、シュ、カッカッ、シュシュシュン。
くそ。こちらは片手剣の4連撃だが、それは騎士団長も同じだ。
そしてあちらは分身しているので8連撃。
さすがは乱舞と言うだけある。
しかも、微妙にタイミングがずれているので合わせ難い。
何より、二人とも実体で、二人の持つ剣も実剣だ。
二人の騎士団長はすぐに間合いを詰めて来た。
カッカッカッカッ。
シュシュシュシュン。
最初の連撃は合わせたが、いかんせん後半は下がらざるをえない。
このままではジリ貧だ。
だが、分かった事もある。
カッカッカッカッ。
シュシュシュシュン。
この二人、息継ぎをしていない。
いくら身体強化していても、そんな事は不可能だろう。
カッカッカッカッ。
シュシュシュシュン。
やはり、この二人は影だ。
この砂地の足元に、足跡は俺のだけだ。
カッカッカッカッ。
シュシュシュシュン。
なるほど「双影身」とは、その通りだ。
では、騎士団長はどこだ。
カッカッカッカッ。
シュシュシュシュン。
彼は動いていない。
『気配断ち』なのか他のスキルなのか。
俺の目をだまし、そこに見えないが、そこに居る。
カッカッカッカッ。
シュシュシュシュン。
狙いは、騎士団長の足跡。
そこだけ、くっきりと深く、二つの足跡が揃っている。
俺は二人の騎士団長から間合いを取ると、二人に背を向け、隠れている騎士団長に迫った。
騎士団長の足跡が動いた。
気付いたな。
バキャ。
氷の割れる音が聞こえた。
俺は騎士団長の足跡の上の空間に剣を振る。
ガッ!
騎士団長の剣が現れ、俺の剣を阻む。
「よく分かったな。骸骨殿。」
現れた騎士団長が笑顔で言い、一歩下がる。
俺も構え直した。
ドッドッ。
俺の背後で二人の影の剣をディエゴの盾が受け止めた。
俺の背中は任せた、ディエゴ。
俺は騎士団長に向かって大きく踏み込み、剣を突き出した。
◇
「くっ、やはり、勝てなかった、か。」
「そうだな。だが、騎士団長殿。言ったであろう、これは敗北ではない。魔王討伐の戦いの始まりに過ぎんのだ。」
「魔王、討伐。」
「そうだ。今より貴殿も我々の仲間となる。」
「そう、か。」
「吸魂」




