83話 敵は白マントの青目の骸骨
夕日が沈み周囲が闇に包まれる頃に、城砦都市に侵入していたダーク達が戻ってきた。
リッターとレクターは満足そうだ。
俺は夜通し「授魂」作業をしている。
朝までに1000人ほどは新たな骸骨騎士を仲間にできる。
骸骨大砂百足達は作業が終わるとすぐに地中に潜ってしまった。
腐肉喰い丸スライム達は紫色の腐食ガスを振りまいて食事を続けている。
そのせいで骸骨姿に戻ってしまったメリッサは幌馬車の中に隠れている。
シーカーも遊び相手がいないようで、幌馬車の上に止まっている。
◇
日の出だ。
城砦都市の西門前は骸骨大砂百足の作業のおかげで、多少の凹凸はあるが、障害壁はなくなっている。
その西門が開き、帝国騎士が出てきた。
では、こちらも迎え討つとしよう。
◇
今日は右翼にシグスの騎兵部隊、中央にビデスの歩兵部隊、左翼にドラゴの騎兵部隊の配置だ。
昨夜仲間になった骸骨騎士達は歩兵部隊の中央に配置されている。
俺と直営部隊、それと屍人達は廃村内に留まっている。
俺の「吸魂」作業があるので、これは仕方ない。
廃村横では未だに腐肉喰い丸スライム達が食事中だ。
対する帝国騎士達は10人単位で集まっていて、その集まりが2列、3列となっている。
どうやら、部隊単位での行動をとる様に見える。
彼らは横に広く布陣し、両翼はこちらより広がりがある。
その両翼には騎兵が配置されている。
北方騎士団は馬を持たないので、彼らは近隣の領国から合流した領国騎士団だろう。
帝国側がゆっくりと近付いて来る。
シグスの剣が高く持ち上がる。
帝国側の部隊では身体強化などの魔法の光が次々と光っていく。
彼らが戦場の中央、俺と騎士団長が会談した辺り、を越える。
シグスの剣が振り下ろされ、骸骨軍団が動き出した。
それに合わせる様に、帝国騎士側も気勢の声をあげ、駆け足で前進してくる。
■■■
【北方騎士団第一軍第一大隊 大隊長ロッド=グローバー】
昨夜の夕食にファルゴ軍団長は現れなかった。
部隊長以上が参集したので、西門広場の仮設司令部の前に大勢の騎士達が揃っている。
南門の第二軍からも多くの騎士が集まってきた。
彼らに夕食の木皿が配り終わる頃、ブキャナン騎士団長が現れた。
そして、彼は私達に説明を始めたのだ。
「ファルゴ第一軍軍団長は骸骨軍団との戦いの情報を持って、帝都に戻った。」
「彼の経験と情報が、未来の骸骨との戦いの為となるか、それとも、我々の勝利の記録となるか。それは、明日の我々の戦いの結果で決する。」
「奮起せよ、帝国騎士よ!」
ブキャナン騎士団長は、次に作戦内容を伝えた。
部隊単位で攻撃行動を行う。
部隊は横に広く配置する。
対応する骸骨も横に広くなり、骸骨の層は薄くなる。
そこを我々は駆け抜ける。
その先には廃村がある。
そこに目標の白マントの青目の骸骨がいる。
こいつを倒す。
◇
青目の骸骨。
私が最初に特使として対応し、向き合って話した相手。
あいつが、骸骨のボスだったのか。
あの時、奴の首を刎ねていれば、この戦いは終わっていたのか。
だが、あの時点では判断できなかった。
次に相見えた時には、首を落とす。
我が第一軍は中央に配置された。
廃村との距離は一番近い。
そして、我々の後ろには今回の特別編成部隊がいる。
第一軍、第二軍から集めた『瞬脚』のスキル持ちだ。
このスキルは脚力強化の力で速力を高める。
戦闘においては、間合い詰め、切り結んでからの間合い取り、に用いるのが普通だ。
それをブキャナン軍団長は骸骨の包囲網を抜けるのに使え、と命じた。
我々前衛が骸骨を押さえ、その間を彼らが駆け抜けて、廃村に肉薄する。
彼らだけではない。
我々も骸骨部隊を退け、躱し、廃村に向かう。
敵は白マントの青目の骸骨。
それが、今日の戦いだ。
私は走りながら剣を構えた。
『瞬脚』だけが敵陣を突破する方法ではない。
前方の骸骨を排除すれば良いのだ。
私達は次々に魔技を放った。
■■■
前線での戦いが始まった。
シグスとドラゴは帝国側の両翼が廃村拠点を包囲しないように左右に部隊を動かした。
騎兵が左右に動いてできた空間には、歩兵部隊が素早く展開する。
中央では戦闘が始まった。
魔技の光、燃え盛る炎、吹き飛ぶ骸骨騎士、倒れる帝国騎士、雷撃の光、突如現れる土壁。
怒号と剣戟の音が周囲を満たす。
今回は帝国騎士は足を止めて戦うのではなく、移動しつつ戦闘を仕掛けていくようだ。
これは、常に動き回り、常に戦闘相手を変えていく為、乱戦になる。
我々骸骨軍団の陣容も左右に歩兵部隊が動いた分、中央の層が薄くなった。
帝国騎士側も元々広く展開しているため、局所的な人数に彼我の差がそれ程ない。
俺が見ている地点でも、勢い余った帝国騎士達が、骸骨の歩兵部隊を通り抜けてこちら側に出てきた。
彼らが反転攻撃を仕掛けると、背後を取られた骸骨部隊は損害が大きくなる。
乱戦になったせいで、お互い魔技を放っていないようだ。
そういえば、昨日の戦いの後に魔技を放つ時は味方を巻き込まないように努力する事、とビデスに話したな。
それを守ってやられていては意味がない。
これは余計なことを言ってしまったか。
それにしても、あの帝国騎士達は反転攻撃に移らないな。
そのままこちらに向けて迫って来る。
なるほど。
彼らの狙いはここか。
俺は最初に戦闘開始日を伝えに行ったし、何より騎士団長と密会もしている。
忘れがちだが、俺の目は青く、他の骸骨達の目は赤い。
どうやら、俺を倒せば戦いが終わると考えたな。
俺は剣を抜いた。
ディエゴが盾を持ち上げ、俺の1歩前に出る。
背後に控えていた骸骨魔法操兵達も戦闘準備に入った。
サイクス達屍人騎士も剣を抜くが、彼らには屍人達の警護を命じた。
ここが戦場になれば、彼らも狙われるからだ。
その廃村の中から2人の骸骨騎士が歩いてきた。
君達は昨日の街壁上の戦いで満足して「今日は休む」とか言ってたな。
「くく、マスターと、戦う、栄誉、渡さん。」
「そう。死を賜る、栄誉、私のみ。」
そういえば、最初にラムデス、サイクス、オズマを相手にして、その後は「吸魂」するのが俺の役目だからな。
ゴースト退治を別にすれば、骸骨騎士ではリッターとレクターを相手にしたのが、最初で最後だな。
「全員、消し炭。」
「切り刻む。」
そう言って二人はディエゴの前に出た。
帝国騎士達はもう目の前まで来ていた。
その目前に炎の壁が湧き上がり、その炎を孕んだ旋風が吹き荒び、迫る帝国騎士の身体を焼き、手足を切り飛ばした。




