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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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82話 帝国の未来

【北方騎士団第二軍第一大隊 大隊長コールマン=ホルト】


「風魔法で毒を吹き飛ばせ。」

「そいつはもう駄目だ。」

「くそ、意識のある奴は手を挙げろ!誰か生きてる奴はいないか。」


紫の毒とそれに紛れた骸骨騎馬の突撃攻撃に半数以上の騎士が倒れた。

こちらも土魔法で騎馬の足元を捉え、多くの骸骨馬を倒し、骸骨を叩き潰した。


だが、2度の骸骨騎士の突撃で受けた被害はこちらの方が大きい。


3度目の突撃をせずに骸骨騎馬は去った。


負傷兵を探して南門内に連れ帰っているが、その数は微々たるものだ。

ほとんどの者が紫の毒にやられて倒れている。


彼らも南門の中へ連れて来たかったが、それより早く南門を閉じる命令が来てしまった。

西門は既に閉じられ、外には大砂百足が現れたという。


奴等は次に南門の外に現れた。


死体を食べている。


なんて、化け物だ。


まだ昼前、今日は始まったばかりだ。

だが、もう今日は終わりだ。


少なくとも、こちらから出撃することはない。


負傷兵の傷を癒し、動けるものは骸骨の攻撃に備える。


私は、死んだ人間を確認し、生きている人間の数を数える。


これは厄介なんてもんじゃない。

これは最悪だ。

これは悪夢だ。


我々と第一軍が共闘すれば奴らに対抗できるはすだった。

それは数だけの話だ。

現実は、我々は西門と南門で分かれて戦った。

敵も分かれたが、それに対して互角の戦いにはならなかった。


私達は、こんなにも弱かったのか。


こんな時、我々を励まし、戦場に追い立てたのはハーツ軍団長だった。


彼は今、私の目の前にいる。

その目は落ち窪み、頬の肉には穴が開き、歯が見えている。

あの紫の毒にやられた。

皮膚が、肉が、内臓が、急速に腐っていく。


神官たちが持って来た毒消薬も回復薬も役には立たなかった。


第二軍は偉大な指導者を失ってしまった。

そして私は三人の息子達を失った。


■■■


骸骨軍団が廃村の拠点に戻ってきた。

戦場の死体回収は骸骨大砂百足に任せたので、彼らは街壁前に次々と現れ、敵味方の骨と死体を地面の土と一緒に食べて、ここに運びこむ作業をしてくれている。


戦闘が終わったばかりで済まないが、シグス達には骸骨大砂百足が吐き出した砂の中から骸骨の骨と帝国騎士の遺体を並べてもらっている。


帝国騎士の魂は5500人弱が集まっている。

だが、こちらも多くの骸骨騎士が倒れている。


ビデスの歩兵部隊は敵の用意した戦場での戦いだったが、互角以上の戦いになったようだ。

最終盤での西門前の乱戦になって、かなり損害を出しているな。

えっ、味方の魔技の巻き添えにあった?

そうか、ビデスに言っておくが、あまり期待しないように。


シグスとドラゴの騎兵部隊は魔導馬車を使っての突撃攻撃と腐肉喰い丸スライムの腐食ガス攻撃で戦果を上げている。

ただし、こちらも多くの骸骨馬が倒されて骸骨騎士がやられている。

敵に土魔法が得意な奴がいると、骸骨馬の足元を狙われ落馬してしまうな。

落馬した後の戦闘力の向上が今後の課題のようだ。


さて、今日のところは戦闘は終了としよう。

後片付けに時間を割いて、明日の朝に向けて戦力を回復させる。


メリッサ。腐肉喰い丸スライムは仕事の時間だ。あきらめてくれ。


■■■


【北方騎士団第一軍 軍団長ファルゴ=グローバー】


西門内、兵舎前広場仮設司令部。


「そうか。第二軍はハーツ軍団長が亡くなったか。」

「はい。中央の障害物を破壊しつつ骸骨騎兵が殺到したため、正面に展開していた第一大隊、第二大隊に甚大な被害が出ました。第三大隊と領国騎兵団は無傷です。」

「わかった。今は骸骨どもも廃村まで戻っている。動きがあり次第伝えるゆえ、今は休むがよい。」

「はっ。」


報告に参上した第二軍のコールマン大隊長が歩み去る。

彼が去ると司令部の面々が口を開いた。


「第二軍の損害が約3000。半数がやられましたな。」

「こちらも第二大隊と第三大隊、それに防衛隊も合わせて2500人がやられた。」

「この状況では第二軍を別運用する意味はありません。第一軍と統合し、閣下の麾下に加えるべきです。」

「そうだな、それは叔父上に頼もう。他に今後の戦略について、意見を聞かせて欲しい。」


「今は兵が疲弊しています。討って出るべきではないでしょう。」

「だが篭城戦の不利は第三軍の記録で明らかです。」

「第三軍の場合は騎士団を失った後だった。我々にはまだ戦力が残っている。」

「西門前の戦いを見たでしょう。我々が固まっていては、骸骨どもの魔技の餌食です。こちらが魔技で応戦する為にも、我々は分散しないと。」

「分散すれば各個撃破されるぞ。」

「その為に骸骨どもも分散します。広い場所で部隊単位で戦うのが我々の戦い方です。」

「しかし、参謀部の考えでは、」


私は口を挟んだ。


「彼らは死にました。今後の戦いを考えるのは我々です。」


私としても篭城は最後の手段だ。

なぜなら、篭城しても勝ち目は無く、日数を経ても、我々を助けてくれる援軍は来ない。

我々が戦い、骸骨を打ち破る。

それしか、この戦いに勝利する方法はない。


「敵の首領の所在は掴んだのか?」

「はい。南西監視所から避難した者の話ですが、戦闘中は廃村から動かなかった様です。」

「そうか。」


視線を上げれば黒煙を上げる北西監視所と南西監視所が見える。

街壁上に、まだ骸骨はいるのだろうか。

骸骨討伐に向かわせた騎士は誰も帰ってこなかった。

今は小型の大砂百足が這い回っている。

あの魔物が掃除役を担っているとは、第三軍の報告書には書いていなかったな。


俺は皆の顔を見渡した。

「明日、出陣する。夕食時に会合を開くゆえ、三列横陣を主とした作戦案を考えてくれ。第二軍のコールマン大隊長にも伝える様に。部隊長は全員参加だ。」

「部隊長も、ですか。」

「そうだ。明日は部隊単位での戦闘になる。狙いは敵の首領だ。」

「はっ。」



城内。


「こちらでしたか。叔父上。」

「来たか。」


西門を閉じた後、騎士団長である叔父上は「城の自室に戻る」と言って退去していた。

司令部との確認を終えた私も騎士団長付き従兵に案内されて城まで戻ってきた。

全軍が西門前にいる今、城内は妙な静けさに包まれている。


「少し話をしよう。座りなさい。」

「はい。」


テーブルを挟んでソファに座る。

従兵が紅茶を用意してくれた。


「明日の予定を話していたそうじゃな。」

「はい。本日は出陣しません。骸骨が攻めてきたとしても街壁内での防衛戦となります。ですが、明日は出陣します。」

「そうか。」


カップを手に紅茶を飲む。良い香りだ。

叔父上は私の顔を見ている。

出陣を止めるつもりか?

だが、私は名誉の死を恐れない。


「ファルゴ。お前にも帝国の秘密を教えよう。」

「帝国の秘密、ですか?」

「そう。ル・ゴール帝国初代皇帝が魔人と交わした約束。そして、わしが骸骨と結ぼうとした約束についてじゃ。」



「今の話は、本当なのですか。」

「うむ。」

「そうですか。ですが!そんな約束などはもうどうでもいい!敵は骸骨です!我々は明日出陣し、骸骨を倒します。叔父上が話した青い目の骸骨を倒せば、全てが終わります。」

「その結果、帝国は滅びるのだ。」

「いいえ。帝国は滅びません。いえ、たとえ帝国という枠組みが無くなったとしてもル・ゴール王国は残ります。」

「18の領国が独立し、その全てがル・ゴールの敵となるのだぞ。」

「ならば、独立した18の国を再び討ち倒し、領国に戻します。ル・ゴール王国は再び帝国となりましょう。」

「それができるか。」

「やります。その為にも、明日、骸骨を滅ぼすのです。」

「よく言った。」


気が付けば私と叔父上は立ち上がって言葉を交わしていた。

その叔父上が腕を伸ばして私の肩に手を置いた。

「ル・ゴールを任せたぞ。ファルゴよ。」

「はい。叔父上。」



私は、そう返事をしたと思う。

叔父上の掌から何らかの魔力が流れたような気もするが、定かではない。


私が気付いた時、私はベッドの上で寝ていた。

見知った部屋だ。

ここはル・ゴール帝国帝都、第一離宮、私の自室。

そのベッドの上で、私は目を覚ました。


これはどういう事だ!

戦いはどうなったのだ!

今は、いつなのだ!


私は叫び、部屋の扉が開き、人が入ってきた。


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