76話 2日目の密会
夜になった。
今夜のシグス達は部隊行動ではなく、剣技や槍術の向上に努めている。
小鬼たちとの戦闘でこちらの損害も少なからず有ったからな。乱戦だと損傷の可能性は高まる。
我々骸骨軍団の中で唯一、回復魔法を使えるライファノンは、最近複数の骸骨を同時に癒せるようになった。
おかげで朝を待たずに回復する骸骨が増えた。
いい事だ。
メリッサには装備の確認をしてもらっているが、帝国騎士団の装備には元々魔法陣が仕組まれているので、それの強化になるようだ。
鎧なら斬撃耐性、破壊耐性。剣は重量軽減、切れ味保持など。
領国の装備も魔法陣の数は少なく効果も低いが、それらを強化できるそうだ。
俺が望んだ魔法防御は盾に備わっているようだ。
望みの性能の武具を揃えるには無垢の武具への仕込みが必要だが、それが出来るのは『魔法付与』のスキル持ちだろう。
つまり帝国内の鍛冶屋を探すべきだな。
いや、帝国を屈服させ装備を作成させるか。
そんな中、第一軍城砦都市からの客が来た。
どうやら、俺に話があるようだ。
◇
さて、騎士団長自らが俺に渡しに来た「約束」の書かれた書状だが、俺はガーギウス大使やルー伯爵ら屍人の皆に集まってもらった。
あ、メリッサも一緒だ。彼女は元魔人だからな、魔人側の意見も聞きたい。
屍人は会話ができるが、骸骨のメリッサが加わるので、『意思疎通』の技能で会話を行う。
屍人の熟成が進んだことで、長い会話は大変だしな。話の途中で顎が落ちても困るだろう。
書状に書かれている約束は次の2点だ。
一つ。骸骨の勢力はこの地より西側を骸骨領とし、これをル・ゴール帝国は認める。
一つ。骸骨の勢力は骸骨領より南側への侵攻を行わない。ル・ゴール帝国とはこの地にて戦闘行為を行う。但し、双方供に相手を全滅させる事無く、この戦闘行為を永劫に行うものとする。
署名は「ル・ゴール帝国 皇弟ブキャナン=グローバー」。
騎士団長は皇帝の弟だったか。
「では、この内容について、我々の対応を協議したい。まずはメリッサ。帝国はこの約束を魔人側としていたそうだが、知っているか?」
「知らない。何これ。じゃあ、今までの戦いは一体・・・。誰が・・・。リリィ?いつから?どうして?なんで?」
「そうか、わかった。メリッサ、落ち着くまで、考えていていいぞ。では、ガーギウス大使、どう思う。」
「目的が分かりません。帝国は魔物と長きに渡り戦ってきました。それは魔物を滅ぼす為のはずです。」
「そうだな。皆も同じ意見か。」
ルー伯爵、ノールデア侯爵、シーム伯爵、フェンクル侯爵、キステート侯爵、皆が頷く。
ガーギウス大使は帝国生まれ帝国育ちだが、ルー伯爵達は領国の生まれ、かつて領国が独立国だった頃の王侯貴族の末裔だ。
帝国内部の秘密事は知る由もないな。
「なぜ帝国はこのような約束を。」
フェンクル侯爵の問いももっともだ。
そこにドラゴが来た。
彼はドラゴ=ディアン。帝国5大公爵家のひとつ、ディアン公爵家に連なる者だった。
「マスター。それ、知ってる。話す。」
「聞こう。」
「父、話した。戦い、終わる、帝国、なくなる。だから、戦い、終わらない。帝国、続く。」
「なるほど。戦いが続く限り帝国も続く。戦いが終われば、18の領国は国として独立し、帝国はなくなるのか。」
「そのような事が。」
「驚きました。では、マスター。どのようにご対応なさるのですか。」
「そうだな。」
誘いに乗れば、この地に留まり幾年もの戦いの日々となる。
相手は帝国騎士だから、骸骨軍団は日々、少しずつだが増員されるだろう。
誘いを断れば、どうか。
我々は帝国北方騎士団と戦い、彼らを仲間にする。
その後は、人間の戦士、騎士を求めて大陸北方へ向かうのか、隣の大陸へ向かうことにもなるのか。
我々は彷徨い歩くことになるのだろう。
俺は皆に伝え、皆は解散した。
◇
夜が明けたが、今朝は小鬼どもが「城」から出てこなかった。
シグス配下の部隊が「城」へ様子を見に行ったが、内部には何も無く、誰もいなかった。
地下へと続く階段は存在せず、消されていた。
おそらく昨日の戦いが総力戦であったならば、敵の魔物は出尽くしたのだろう。
そして、それを作り出していた魔人スーニャと暗殺にきた魔人アニタは姿を隠した。
メリッサは行方を知りたがるだろうが、俺としては現時点で彼女らを積極的に追う気はない。
◇
夜。
今夜は我々が先に昨夜の会談場所に来ている。
もっとも、ダークの『暗闇』に包まれているので、帝国側からは視認されないだろう。
ただし、この状態を保つためにディエゴの『魔法吸収壁』は発動していない。
魔法攻撃が飛んできたら危険な状態なのだ。
既に城砦都市から近付いて来る人間は視認している。
ブキャナン=グローバー騎士団長だ。
彼が近付いたので、ダークが『暗闇』を解除し、我々の姿が視認できるようになった。
彼はその場で足を止めた。
「こんばんわ、骸骨殿。」
「うむ。早速だが、こちらをお返ししよう。」
ダークが昨夜渡された書状を騎士団長に渡す。彼はそれを読んだ。この闇の中でもきちんと見えるようだ。
「骸骨殿。そちらの要求が書かれていないようだが。」
「そうだ。我々は約束はしない。」
「そうか。それは残念だ。」
「戦いは5日後の日の出だ。」
「そうか。戦いは避けられぬか。」
「そうだ。我々が求めているのは戦士の魂だ。我々が勝てば帝国は滅ぶ。帝国騎士諸君には是非全力で戦っていただきたい。」
「なんと。くっくっくっ、それが骸骨殿の要求か。」
「そうだな。では、一つ約束もしよう。」
「ほう。聞かせてくれ。骸骨は我々に何を約束するのだ。」
「戦いに敗れ命を落とすことを恐れなくても良い。その魂は我が下僕となり、魔王を打ち倒すための戦いに参加するのだ。」
「魔王。魔王を打ち倒す?それが、骸骨の目的、なのか。」
「そうだ。」
「だが、この地に魔王はおらん。魔人だけじゃ。」
「そうだな。だが存在はしている。だから探すのだ。」
「探す?どこを?」
「騎士団長殿。話は以上だ。」
「そうか。」
彼は去った。
我々骸骨軍団の今後の行動が気になる様だが、大丈夫。
貴様もすぐに我々の仲間となる。




