75話 1日目の密会
【北方騎士団第二軍 軍団長ハーツ=ホルト 】
骸骨軍団の行動がこちら側の予想より早い、との情報から、私と第二軍団第一大隊2000名が食料運搬用の魔導列車に乗り込み、第一軍城砦都市に到着した。
我々を迎え入れてくれたのは城砦都市防衛隊隊長を務めるエドワード=ムーア、私の従兄弟だ。
「ハーツか。久しいな。」
「エドワード。挨拶はいい。第二軍第一大隊2000名を連れて急ぎ参った。骸骨どもとの戦いはどうなっている。」
「それなんだが。開戦は6日後の日の出と決まった。」
「6日後?決まった、とはどういうことだ?」
「詳しくは騎士団長殿がお話くださる。」
そして、西門広場の仮設司令部で、俺はこれまでの経緯を聞かされた。
骸骨どもは我々の合流を待って、それを相手に戦う。
それを選択する骸骨どものなんと傲慢な事か。
そして、それを選択できる奴らの戦闘力の高さよ。
我々は勝たねばならん。
これは我々だけの戦いではない。
これは、人間が魔物に屈するか否かの戦いだ。
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【北方騎士団第二軍第一大隊 大隊長コールマン=ホルト】
第一軍城砦都市に到着した。
ハーツ軍団長はすぐに司令部に行ってしまったが、私は部下達をすし詰めの魔導列車から出し、第一軍が提供してくれた南門付近の宿舎に移動した。
第一軍の文官たちが案内してくれたが、おそらく市民の民家や宿屋を接収したのだろう。
城砦都市の常だが、迷惑をかける。
我々としても、さっさと骸骨どもを倒して第二軍城砦都市に帰りたいものだ。
そんな我々に北方騎士団からの命令書が届いた。
街門前の戦闘区域の作成の為に土魔法が使える騎士を全員出せ、という。
私も土魔法が得意だ。
それにしても、この時点で、悠長な事をしている。
これは、我々が危惧していたような切迫した状況ではない、という事だ。
やれやれ、魔導列車に詰め込まれて来なくてもよかったか。
だが、余裕があるなら、戦闘に備えた準備をするのは当然だ。
土魔法での障害物の作成、か。
面倒な作業だが、骸骨どもはそれだけ厄介な相手という訳だ。
私は部隊長たちに招集を掛けた。
■■■
【北方騎士団 騎士団長ブキャナン=グローバー】
夜。
私は徒歩で、一人、戦場の中央に来た。
ここは我々の戦場拠点と骸骨どもの廃村との中間地点になる。
ここに来ている事は私の従兵だけが知っている。
見張りの目を欺く『姿隠し』スキルのおかげで、誰にも気付かれてはいない。
この会談は誰にも知られてはならない。
しばらくすると複数の足音が聞こえ、何者かが近付いてくるのがわかった。
だが、骸骨の姿は見えない。
周囲は闇だ。
そう、暗すぎるほどに、闇だ。
突然、目の前に複数の骸骨が現れた。
赤い目の灰色ローブを纏った骸骨が2体。1体は盾を持っている。
そして、白マントの鎧姿の骸骨。こいつは青い目だ。
そいつが顎の骨を動かした。
「何者だ。」
「我はル・ゴール帝国北方騎士団、騎士団長ブキャナン=グローバー。そなたが骸骨の首領か。」
「そうだ。」
「今朝は鬼ども相手に見事な勝利を収めたな。その成果に賞賛を送ろう。」
「そうか。」
「だが、貴殿たちが鬼どもを簡単に倒してしまったので、少し、困った状況になっている。」
「どういうことだ。」
「話が長くなるので、今は詳細を省くが、そうだな、我々と魔人との間には、ある約束があった。」
「ほう。」
「その約束が、そちらが鬼どもを倒した事で、魔人の女どもには約束を守る事が難しくなった、と私は考えている。」
「そうなのか。」
「そうだ。そこで、私としては、そなたら骸骨との間に、同じ約束を結びたい、と考えているのだ。」
「それは、どんな約束かな。騎士団長殿。」
興味を持ったか?
いや、まだ油断はできんか。
私は懐から1枚の書状を取り出し、それを青目の骸骨に差し出した。
「約束の内容については、この書状に書いてある。まだ正式なものではないが、こちらの要求の全てだ。この内容の見返りとして、そちらが望む物を教えて欲しい。それを私が承諾すれば、約束は成される。」
青目の骸骨は無言で書状を受け取り、一読している。
私としては、待つのみだ。
「わかった。明日の夜、この時間にこちらの要求を伝える。」
「おお。では、明日の夜に。」
「うむ。」
青目の骸骨がそう返事をすると同時に、その身体が闇に包まれた。
後ろにいた2体の骸骨の姿も消え、遠ざかる足音が聞こえてくる。
私も城砦都市に向けて歩き出した。
今後の運命は明日の夜、決まるだろう。




