71話 その頃各地では
交渉は無事に終わった。
骸骨馬で行こうとしたが、シグス達から危険だから護衛を付けろと言われた。
だが、大人数で行けば相手に戦闘行為と取られかねない。
なので、俺とディエゴは骸骨大砂百足の頭部近くに座る事になった。
外殻の端を掴み、不安定な俺たちを気遣って、ゆっくりと動いてくれた骸骨大砂百足に感謝だ。
さて、6日間の休みだ。
皆、自由にしていいぞ。
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【 魔人 スーニャ 】
え、地上に出した鬼達が全滅した?
なんで?
全力攻撃はしないって、取り決めでしょ!?
破られたの?
骸骨の集団。
なにそれ?えっ、1万もいるの?
どこから・・・。
わかった。
じゃあ、とりあえず地下にいる人形達を準備させるわ。
大丈夫。
こっちも1万体いるわ。
装備もできているよね?アニタ。
アニタ?
えっ、しばらく前から居ないの!?
どこ行ったのよ。
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【 魔人 アニタ 】
1万カァ。
勝てるかナァ。
あの骸骨達、並みの強さじゃないよネェ。
もー。どうしてこんなのが出てきたわケェ。
中央森林が騒がしいからって行ってみれば、魔獣どもが右往左往して逃げ惑ってるわ、巣に潜って震えてるじゃナイ。
なにかあったと思って魔力の源泉に行ってみれば、源泉はなくなっているし、そこで寝ているはずのメリッサも消えてルシ。
どこ行ったのカナ?
戻ってきてないよネ?
うーん、魔力開放して欲しい装備がたくさんあるんだケド。
はぁ、リリィもエリーザも人間の国に行ったら戻ってこないシィ。
真面目に仕事して愉しんでいるのはスーニャとあたしだけじゃナイ?
それを邪魔するなんテ・・・。
なんなの、あの骸骨。
殺しちゃおうカナ。
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【ル・ゴール帝国北方騎士団第二軍 軍団長ハーツ=ホルト 】
ロイセン領の街デ・オムでロイセン領騎士団と合流し、騎馬300頭の供出も受けた。
これで我々の陣容は第二軍4000、バルバサ領300、ロイセン領300となった。
フランクの第三大隊とは2日の距離があるが、彼らとも第一軍城砦都市で合流できるだろう。
翌朝の出立を控えた夕食後の時刻に、偵察部隊隊員が宿営地に到着した、との連絡が入った。
我々が第二軍城砦都市を出立する際にノトブー峠の見張りに配置した隊員だ。
その者の報告を聞いて、我々が大きな過ちを犯している事に気付かされた。
骸骨共は、山脈をまっすぐに東進している。
ノトブー峠の東側はここより北へ1日の距離だ。
骸骨の別働隊が今朝早くに通過したならば、我々は彼らに2日遅れている。
では、奴らの本隊とは何日遅れているのだ。
明日の早朝、我々は第一軍城砦都市へ向けて移動を開始する。
到着は3日後の予定だ。
間に合わないな。
どうする。
魔導列車に乗せれば、第一大隊2000人は送れる。
ロイセン領騎士団、バルバサ領騎士団、それに提供された馬が600頭いる。
彼らも先行させよう。
全ては、今夜の内に動かなければ、我々は既に遅れているのだ。
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【第一軍城砦都市防衛隊 隊長エドワード=ムーア】
「開戦は7日後の日の出、か。」
夕食に合わせて開かれた司令部会合において、第一大隊大隊長ロッド=グローバーから骸骨の特使との交渉内容についての報告があった。
ファルゴ軍団長の取り巻き、と余り良い評価はしていなかったが、これは良い交渉結果と言えるだろう。
だが、その骸骨の特使の容姿から骸骨の首領格でなないか、との意見もある。
倒すチャンスだったかもしれないが、間違っていた場合は敵の攻勢を呼ぶ結果になる。
まぁ、これは過ぎた問題だ。
「大儀であったな、ロッド大隊長。これで我らは第二軍との合流も叶うな。」
「はっ。お褒めいただき光栄でございます。騎士団長。」
「叔父上。これで我々が数の上でも奴らを上回ります。」
「そうじゃな。だが、まだ合流した訳では無い。気を緩めるでないぞ、ファルゴ。」
「はい。」
「西門の細工は引き続き作業を続けよ。第二軍は中央森林での戦闘に長けておるからな。石柱の乱立した場所でも力を出せるじゃろ。」
「なるほど。」
「当初の予定通り、第二軍には南門を使わす。」
「文官の報告によれば、準備は整っております。」
「うむ。」
話は第二軍との合同作戦の確認に入った。
しかし、7日後か。
時間ができたお陰で、我々は準備を進めることができる。
それは、骸骨どもも同じだ。
奴らめ、7日後までに何をするつもりだ。
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【 骸骨 メリッサ 】
馬車に乗って3日。
ようやく峠道を越えて東の平原に着いたよ。
もぉ、いいかげんに飽きたね。
周りの骸骨たちは脱落者も出ずにきちんと護衛してくれてるね。
まぁ、骸骨が300体もぞろぞろ歩いてたら、その辺の魔獣は逃げ出すかぁ。
なんだろ。
骸骨になって、余計な力が抜けた感じがする。
前は、周りに仲間がいた。
けど、決して気を許してはいけない仲間だ。
だから、魔力の源泉での眠りの時は、惨めで、悔しくて、もどかしくて。でも、少し気楽だった。
そんなモノが、今は綺麗さっぱりなくなった。
今は、ただ、マスターの為に戦う。それだけ。
そう、あんたもそう思うの。
あー、貴族のしがらみとか、権力とか、年齢とか、お腹の贅肉とか、いろいろあるからね。
それが無くなって、すっきりしたんだ。
あんたのこの馬車も余計な壁も天井も無くなって、すっきりしてる。
夜空を見上げながらの道行きは楽しいね。
へぇ、これって魔道馬車っていうんだ。
そう、次の戦いで活躍できると良いね。
たくさんの騎士をひき殺して、マスターの下僕にしてあげようね。
そうだ。
私のスキル『魔力操作』なんだけど、ふふふ。
この魔導馬車、今より力強く出来るよ。




