66話 街道を東へ進む
第三軍城砦都市の北側で布陣した我が骸骨軍団。
目当ての第二軍第三大隊が数刻の時間差で移動していたので、こちらも移動を再開するのだが、その前に。
俺は人間を捕食した骸骨大砂百足2匹に腹の中の物を吐き出させた。
3人の死体を見つけて「授魂」するためだ。
砂や石や草や木の破片に火トカゲの肉に、細かいのは巨大蟻の身体の欠片だな。
そんな雑多な山の中から、なんとか3人の身体を見つけた。
さて、腐肉喰い丸スライムの出番だが、彼らは今、メリッサの身体となっている。
メリッサが3体の死体に歩み寄り右手を振ると、ポン、ポン、ポンと3匹の丸スライムが死体の上に飛び乗った。
どうやらメリッサの体から飛び出したようだ。
メリッサを見れば、彼女の右腕は骨の状態になっている。
腐肉処理が終われば丸スライムは再びメリッサの身体に戻り、俺は3人に「授魂」した。
偵察部隊だった二人は帝国騎士として魔技を持っている。
なので通常部隊に編入する。
もう一人、第二軍第三大隊所属だったドウアンの技能は『獣使い』であり、頭骨の額には魔法印が浮かび上がった。
これまでも技能として攻撃魔法を持つ骸骨はいたが、彼らは帝国騎士として通常部隊に編入している。
だが、ドウアンの『獣使い』は攻撃魔法ではない。
なので、彼は骸骨魔法操兵部隊に編入だ。
彼の人間だった頃に使役していた伝書鳩は、彼の死で魔法的契約が切れてしまい今は繋がりが無い。
俺とシーカーや屍鼠との関係性とは少し違うようだが、機会を作って彼の新しい使役獣を探すとしよう。
しかし、相手は生物限定か。大丈夫なのか。
では、時間を取ってしまったが、我々も第二軍城砦都市へ向けて出発しよう。
◇
街道を東へ進む。
街道には南への分岐点もいくつかあったが、真っ直ぐ東進すれば第二軍城砦都市の高い城壁が見えてくる。
南側は広く草原地帯が広がり、北側には鬱蒼とした森が広がる。
この森を北進すれば、あの魔力の源泉に辿り着くわけだ。
城砦都市の向こう、東には遠く山脈の頂の連なりが蒼く霞んで見える。
城壁上には見張りと思われる人影が多く、我々の姿を確認したようで慌しく動いている。
この城砦都市は周囲を川で囲まれた中州のような構造になっているため、城壁の門前には大きな跳ね橋がある。
我々の侵入を防ぐのであればソレを跳ね上げるのだが、跳ね橋はそのままだ。
我々骸骨部隊は街道沿いに縦列であった隊列を南側の草地を使って10部隊X10部隊の方陣形に布陣した。
骸骨大砂百足達は北の森側に整列し、馬車は最後列だ。
我々が隊列を整える間も城砦都市には動きは無かった。
前列にいる俺の元にガーギウス大使が骸骨馬に跨りやってきた。
帝国との交渉・通達は一任しているので、今回も彼一騎が跳ね橋を渡り城砦都市の門へと進み出る。
その門に一人の人影が現れた。
ガーギウス大使と言葉を交わし、書類を渡しているようだ。
ガーギウス大使はそれを持って戻ってきた。
「ガーギウス大使。」
「ハイ、マスター。」
「それは?」
「ハイ。マスター、ヘノ、手紙、デス。騎士団、ノ、軍団長、カラ、デス。」
そう言うと書状を差し出したので、俺は受け取って一読する。
「東の地で第一軍と共に待つ。第二軍軍団長ハーツ=ホルト、か。では、第二軍はこの城砦都市にはいないのか。」
「ハイ、マスター。男、ノ、話シ、デハ、軍ハ、昨日、東ヘ、ムカッタ、ト。」
「東。」
俺か視線を上げ、城壁の東側、蒼く見える山脈の姿を捉えた。
おそらく2日か3日の距離だ。
軍の移動は考えられる。
我々骸骨軍団の戦力は約1万1千人。それに骸骨大砂百足20匹と腐肉大砂百足1匹がいる。
第三軍城砦都市に第二軍の部隊が来たのなら、城壁が役に立たないことは分かっただろう。
第二軍7千人では戦力的に厳しい。
そこで第一軍と合流して1万4千人として対抗する。
これは挑戦状だ。
受けてたとう。
◇
我々骸骨軍団は再び街道を東へ進んだ。
2日目に砦に到着した。
ここは第二軍の出城なのだろう。
第二軍出身者のドウアンに確認すると、ここは第二軍の東砦だそうだ。
城壁に囲まれた石造りの土台の上に木造3階立ての建物を中心に複数の建屋が並んでいる。
門は閉ざされ、中に人はいない。
第二軍は既に通過したようだ。
ただし、街道はここで終点だ。
この先の東側には森が広がり、その先は池と沼と毒草の広がる湿原だという。
つまり、どういう事だ?
第二軍はこの東砦には来ていないのか?
ドウアンに尋ねても不明だった。
ドウアンの予想では、普通、第一軍と合流するならば、南の峠道を使うそうだ。
さらに南に戻って帝国領内を通過する道もある。
どうやら我々は街道沿いに東に来すぎたようだ。
戻るか、進むか。
悩む俺の元にシグスと骸骨剣士部隊長のモローが来た。彼らから提案があるそうだ。
「提案?」
「モロー、説明する。」
「マスター。剣士部隊、屍人、馬車、峠道行く。本隊は、ここから、東へ。」
「部隊を分けるのか。」
「道案内、いる。」
「ドウアンが案内できるな。骸骨騎士も1部隊付けよう。」
「デハ。」
モローが自分の部隊に戻っていく。
やはり自然の中では馬車は移動が困難だ。
しかし、大事な戦力でもあるので捨て置くことはできない。
骸骨たちが考えて提案してくるのは良い事だ。
そして、ドウアンを道案内に第三軍出身の骸骨騎士部隊1隊100人と骸骨剣士部隊200人と馬車6台に分乗した屍人たちが街道を戻り、南の峠道に向かった。
腐肉大砂百足も後を追った。
まぁ良いだろう。
そういえば、メリッサも馬車に乗っていたな。
幌馬車は定員オーバーになっている。
もう一台必要だな。




