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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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62話 第二軍第一大隊大隊長コールマン=ホルト

洞窟から出れば、火トカゲ2匹と骸骨大砂百足との戦いも終わっていた。

火トカゲの姿は無く、その身体は骸骨大砂百足の殻の中に納まったようだ。


その骸骨大砂百足は4匹が身体を食いちぎられていた。

この4匹の回復に明朝まで掛かると思われるので、骸骨大砂百足の群れはここに残留とした。


シグスの報告ではこの周囲に魔獣の気配はない。

骸骨大砂百足の群れと巨大火トカゲ2匹の乱闘騒ぎで、皆退避したのだろう。

だが、騒ぎが収まれば戻ってくるだろうが、骸骨大砂百足なら大丈夫だろう。


我々は西へと進み出城(でじろ)への帰路についた。

魔人の女の死体も持ち帰る。

腐肉喰い丸スライムに処理してもらうまで彼女、魔人メリッサの「授魂」はお預けだ。


■■■


【北方騎士団第二軍第一大隊 大隊長コールマン=ホルト】


フランクの第三大隊が第三軍城砦都市に出発して4日が経った。

今日か明日には到着するだろう。


彼らが不在の間は我々第一大隊とアイスの第二大隊で中央大森林の見廻りを担当する。


この森は厄介だ。

遠く北側にある大陸横断山脈と東側に連なる山脈の麓に広がる大森林。


500年以上前に魔族軍がこの大陸の北の地に攻めてきたという。

それ以来、この大陸の魔物は活発化し、300年前、ついに魔王が現れた。

魔王戦争の結果、魔王は消滅した。

だが魔物は生き残り、それ以降も我々ル・ゴール帝国騎士団と争っている。


この中央大森林でだ。

そう、この大森林は300年前の魔王戦争の時も、500年前の魔族の大侵攻の時も、おそらく、その前も、さらにその前の時代も森林だった。


なぜか。

この地は魔力の力が強い。

その魔力を地中より吸い上げる木々の生命力も、また強い。

ゆえに、木は倒してもすぐに生えてくる。

燃やしてもすぐに生えてくる。

抜いてもだ。


開墾のできない土地は人間の侵入を拒み、いつの時代も森林のままだ。

そして、その地は魔獣・妖獣の繁殖地となった。


厄介だ。


体長1mを超える蟲の魔物が多いのも厄介だ。

やつらは飛ぶし、羽ばたけば毒の鱗粉を撒き散らすし、角で突くし、粘着糸を吐くし、単独かと思えば100匹を超えるほどの群れで来る。

虫がでかくなって蟲になっただけならこれで済むが、魔力を具現化する奴はさらに性質(たち)が悪い。


もちろん猿や鹿や熊などの獣が魔獣化・妖獣化した連中もいる。

狼人間は森の中に拠点を作り、牛頭男や馬頭男といった身長3mはあるでかい奴が徘徊している。

木々や草花が妖獣化している場合もある。池や沼の周囲の草花の(かぐわ)しい匂いを嗅ぐと眠ってしまうから注意が必要だ。昏倒すれば獣に襲われるのは当然だし、その後は草花の栄養分となってしまう。


そんな連中を見通しの悪い、足場も悪い、周囲だけでなく頭上にも気を付けなくてはならない森林の中で相手をするのだ。


実に厄介だ。


だからこそ、我々ホルト家がこの地を担当しているのだ。



城砦都市北門前の待機所で森を眺めていると伝令係の文官が走ってきた。

彼が走るのは珍しいな。


「失礼します。大隊長殿、街壁監視塔より緊急伝です。」

「読め。」

「はっ!森林内全域に大規模な魔物の移動あり。移動方向は西から東の山脈方向。数は多数。」

「西から、か。」

朝からの森のざわめきはこの所為か。

西には草原が、その先には岩地と砂漠がある。

そこは第三軍の管轄地域だ。

今はそこに噂の骸骨どもがいる。


「東への移動ですと、こちら側は安全ですかな。」

「問題は原因です。西からならば骸骨どもが原因ではないかと。」

「すると、骸骨を恐れて森の魔物が逃げているのか?」

「まさか。」


私の周囲にいる部下達が意見を交わしている。

その言葉が私の記憶を呼び覚ます。

20年前の魔物の大発生。

あの時は暴走する魔物の背後には魔人がいた。

それを切り裂いたのは一条の光。


あの男の事を思い出すのは久し振りだ。

妹との縁談を断らなければ義弟として我が右腕となっていたものを。


「父上。動きますか?」

三男坊のパトリックは帝国騎士学校を卒業したばかりだ。血気に逸るのは若い頃は良い事だ。それを諭すのが年寄りの仕事だ。

「今はまだ動かん。警戒線は現状を維持するように各部隊長に伝えろ。但し、異変を感じたら引くように言え。」

「はっ。」


私の言葉を受けて周囲の部隊長達と伝令達が動く。

パトリックが寄ってきた。

「父上。お考えがおありでしょうか。」

「パトリックよ。我々は帝国騎士だ。帝国騎士は自分勝手には動かん。我々は帝国と帝国民のために戦うのだ。」

「はい。」

「現在、我々に与えられた任務は中央森林地帯の警戒線上での哨戒任務だ。」

「承知しております。」

「では以上だ。下がりなさい。」

「はっ。」


パトリックは不承不承(ふしょうぶしょう)(てい)で下がった。

もう少し言葉を掛けてやるべきだったか。

魔物が東へ行けば山脈に辿り着く。

山を越えれば良いが、南に進路を変えて来ることも予想される。

その辺りは第一軍との担当地域境界線の湖沼地帯だ。

足場が悪く大型の魔物の姿も見られない毒草の生い茂る地域なので我々の警戒も薄い。


今回の大移動がこの湖沼地域にまで来るのであれば、我々も先に移動しておくべきだ。

だが、それを決定するのは軍団長だ。


第三大隊が西へ行き、さらに我々か第二大隊が東へ行けば、中央が手薄になる。


厄介な問題だ。


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