57話 騎士対骸骨の戦い
【北方騎士団第三軍 参謀長デレク=ゲールマン】
篭城5日目。
鉄騎部隊はもういない。
私は書き上げた報告書を第二軍に届ける役目を騎士達から募った。
条件は脚が速く、隠密系のスキルを持っていることだ。
第二軍への道中にも少数ながら魔物は出現する。
大砂百足に匹敵するような危険な奴もいるが、今回の目的は接敵せずに報告書を第二軍に届けることだ。
4人の騎士が推挙された。
今回も東門を開け、大砂百足をおびき寄せる。
また大砂百足との戦闘になったが前回よりも百足の動きが悪く、積極的に攻めてこない。
こちらも東門から距離を取って追いかける事はしないので、にらみ合いが続いた。
それでも、南東門前の大砂百足は1匹を残して東門に引き寄せる事には成功した。
4人は南東門より忍び出て街道を走り出した。
我々はその後に東門を閉じた。
今回は犠牲者は出なかった。
4人の伝令達の無事を祈る。
◇
夕刻前に街壁の監視要員から「骸骨一騎が接近中」との報告が入った。
人間相手ならば、それは交渉役だ。
私は、騎士達に手出し無用を伝えた。
東門で待つと、しばらくして通用門が叩かれた。
二人の騎士が対応し、その一人が私に報告に来た。
「参謀長。骸骨軍団の使者として元帝国貴族のガーギウスと名乗る屍人が面会を求めています。」
「屍人?骸骨ではないのか?」
「はい。皮膚は青白く、目は落ち窪み、その、所々に穴が開いておりますし、その、臭いです。」
「わかった。通せ。いや、私が門まで出向こう。」
「はっ。」
騎士の先導で東門の通用口まで行く。
普通なら私の所まで来てもらうのだが、相手が普通では無いからな。
通用門の外にいるのは帝国貴族風の装飾付きの汚れた服を来たモノだった。
妖しく光る赤い目が、ソレが人でない事を教えてくれる。
「私はデレク=ゲールマン。ル・ゴール帝国北方騎士団第三軍参謀長だ。」
「オオ、ゲールマン家ノ。私ハ、ガーギウス。我々ノ、マスター、カラノ、伝言ヲ、伝エル。」
「聞こう。」
「我々ガ、求メル、ノハ、騎士ノ魂。騎士ガ、我々ト、戦ウナラバ、街ノ、人間ニハ、手ヲ、ダサナイ。」
「我々に戦え、と?」
「ソウダ。」
「いつだ?」
「ソチラノ、準備ガ、デキ、シダイダ。」
こちらの準備に合わせてくれるとは寛容だが、言葉とは逆の意味だな。
準備に3日掛かると言っても駄目だろう。
「準備期間の猶予は?」
「明日ノ、朝ニハ、準備ガ、整ウデ、アロウ?」
「分かった。」
「デハ。」
屍人はそう言うと骸骨馬に跨り石の階段を降りていった。
足元には彼の身体から落ちた腐肉が腐臭を放っている。
私は『火球』を放ち、それを焼却した。
「参謀長殿。」
「聞いての通りだ。増援が到着するまでの猶予は無い。全員に休暇を与える。明朝6時に東門前に集合しろ。」
私は街壁に戻り監視をしていた騎士達にも伝えた。
そうして、私は一人、骸骨どもの観察を日暮れまで続け、その夜はそのまま眠りについた。
私が残す最後の情報は参謀室の執務机の上に置いた。
きっと後日、誰かの役に立つだろう。
◇
篭城6日目。
朝6時、東門前。
私を含め915名の騎士が揃った。
戦略は生き残ることだ。
周りは敵だらけなので、武技も魔技も使える。
骸骨どもは集団戦が得意だ。敵が密集していれば、魔技を放てば戦果は上がる。
こちらは密集せずに部隊単位で散開し、北に向かいながら攻撃を繰り返し敵陣を抜ければ良い。
出城までは徒歩だと6時間程の距離だ。
我々は東門から石階段を下った。
その先には骸骨どもの集団が整然と並んで、我々を待ち構えていた。
◇
骸骨の先頭集団とは100m程の距離があり、それは左右に広く広がっている。
奴等は鎧を着込んでいるため遠目では帝国騎士にも見える。
だが、その頭は骸骨だ。
骸骨が、ずらりと並んでいる。
よくも、これだけ殺したものだ。
我々は前進し、左右に広がった。
ズドドドドゥゥゥ
ズドドドドドゥゥゥ
左右から響く音は土中から突き出した突起物だ。
どうやら、あまり左右には広がって欲しくないようだ。
ピシャァァァ
バリバリバリィイィ
雷撃の嵐が骸骨の集団に落ちる。
帝国騎士からの魔法攻撃だ。
その間に我々は一気に距離を詰め、20mまで迫った。
「疾風斬・連撃!」
「火焔陣!」
「土槍!」
「雷撃球!」
中近距離で効果を発揮する魔技を使いつつ骸骨集団に突入する。
骸骨は盾を構えている。
騎士達も左腕の盾を前面に構えた。
ドッ!ゴッ!!
盾と盾がぶつかり合う鈍い音が響く。
騎士達の足が止まった。
骸骨の盾の隙間から槍が突き出される。
反応できた騎士は下がり、できなかった騎士は頭を貫かれその場に倒れる。
槍が引かれ、並んだ盾が開き、その間から剣を持った骸骨が出てきた。
そして盾がまた壁の様に閉まる。
我々の前に帝国の鎧を着た骸骨剣士が一列に並んだ。
ああ、私には分かる。
こいつらは元は我々第三軍の騎士たちだ。
この時点で、こちらの当初の戦術が崩壊した。
骸骨の守備は崩れず、突破は不可能だ。
そして、目の前に現れた骸骨剣士との戦闘が始まった。
混戦乱戦になれば魔技は使いづらい。
武技を駆使し、己の技術でしのぐ。
現れた骸骨は50体ほど。
それに対しこちらが対戦できるのは100人程度だ。
対戦状況はこちらがやや有利か。
ピシャァァァ
バリバリバリィイィ
騎士側の誰かが再び骸骨の集団に雷撃を落とした。
直接骸骨と向き合っていないなら、遠距離魔法で相手の戦力を削ぐのは有効だ。
だが、再び盾の壁が開いて骸骨剣士が出てきた。
前線が一気に押し返された。
そして魔技を放たれた。
雷撃球がこちらに打ち込まれ、複数の騎士に命中する。
やられたら、やり返す。
その力が骸骨どもにある事を示された。
我々は魔法攻撃を止めた。
前線では帝国騎士が骸骨を倒し、骸骨が帝国騎士を倒している。
倒れた骸骨の替わりは、盾の壁が開いて補充される。
帝国騎士の替わりは、後方で待機する我々だ。
延々と騎士対骸骨の戦いが繰り返され、最後に私が相手をして、この戦いは終わった。




