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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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56話 篭城

8匹の腐肉喰い丸スライムは順調に食事を進める。

腐食ガスのおかげで肉体の腐食は早い。

そして、無尽蔵ともいえる食欲で体積の何百倍もの腐肉を吸収していく丸スライムだが、満腹になる時もある。

今回は最初の夜にそれが訪れた。


8匹がほぼ同時に活動を停止し、しばらくして分裂を開始した。

今回も1匹が2匹に分裂し、総勢16匹となった。

恐らく短期間に大量に腐肉を喰うと満腹状態になり、それが分裂の合図となるようだ。


彼らの食事が終われば、綺麗な骸骨が残り、俺が「授魂」していく。

目覚めた骸骨は装備を整え、骸骨軍団に加わる。



初日の朝。

帝国騎士たちの死体が並び、腐肉喰い丸スライムの作業状況を確認した俺は、城砦都市への対策を考えた。

城砦都市には帝国騎士1000人と非戦闘員3万人がいる。

それとは別に北方の出城(でじろ)と呼ばれる討伐拠点にも帝国騎士1000人がいる。


彼らとの対戦もあるが、骸骨生成作業中の今現在この場所は戦闘に適さない。

シーカーの偵察によれば、城砦都市の南東に2本の街道があるようだ。

人間達が城砦都市を脱出するとすれば、ここだろう。

なので、俺は骸骨大砂百足たちにこの南東側の街道での嫌がらせをお願いした。

彼らがいれば、人間達も脱出はできない。


嫌がらせなので、彼ら骸骨大砂百足は積極的には攻撃を仕掛けない。

そこに居て、たまに街壁に上って周囲を散歩する。

もし攻撃してきた時は、少し相手をする。

倒してしまった騎士は、咥えてきて腐肉喰い丸スライムの餌の列に加わる事になった。

なので、初日は俺も「授魂」作業の合間に「吸魂」もしていた。

昼までに14人が新たに「吸魂」されたが、それ以後は人間達も静観を決めたようだ。


2日目以降も人間どもは小さな戦闘行為を繰り返したが、骸骨大砂百足たちが対応した。



5日目の昼に「授魂」作業が終わった。


総勢4900名の加入だ。

骸骨軍団総数は9000名となった。


半数以上が魔技使いとなったが、残念なことに俺に魔技のスキルが追加される事はなかった。

身体強化の延長にある武技と魔法を用いた魔技では条件が違うようだ。


新たに加わった仲間は個人の実力は優秀だが集団戦の訓練を受けていない。

我々骸骨軍団は10人編成の班が集まった100人の小隊が基本行動単位だ。

この辺はシグス達に訓練を任せている。


その前に、戦場が空いたので、そろそろ城砦都市の1000人を仲間に加える事としよう。


■■■


【北方騎士団第三軍 参謀長デレク=ゲールマン】


篭城1日目。


参謀室での作戦会議の後に私は執務机で第二軍軍団長宛の救援依頼書を書いた。

敵の骸骨どもの規模と我が軍の夜間戦闘の経緯を簡潔に書き、その結果とルーズ=ゲールマン軍団長の自害を記す。

それを鉄騎部隊に託した。


骸骨どもの様子は、街壁上は危険なため、街壁内の覗き窓の幾つかを監視所として騎士達に西側と北側を見張らせた。

しかし、下の平地は紫色のもやが漂い視界が悪い。

そして強烈な濃い腐臭が城砦都市全体を覆った。

なにが起きているかは想像できた。

帝国騎士の遺体が腐っているのだ。

肉体が腐り、肉が落ちれば、残るのは骨だ。

そうだ、やつらは帝国騎士の遺体を骸骨に作り変えているのだ。

何と恐ろしい。

時間が経てば、奴らの戦力は増強される。

奴等が現れた時は4000体だった。

そこに帝国騎士の遺体4500人以上が加わる。


これはまずい。


私は急ぎ第二軍への救援依頼を新たに書き直しにかかった。

想定する骸骨どもの数が2倍になった。4000体から約8500体だ。

そして、ペンが止まった。

果たして、第二軍の救援が来たとして、勝てるのだろうか?

これは、20年前の魔獣大発生を超えるような重大事に発展するのではないか。


その時、参謀室の扉が開き一人の騎士が飛び込んできた。

南東門から伝令に出ようとした鉄騎部隊4人が大砂百足に襲われた。

それを助けに向かった一部隊10人の騎士もやられた。

外部への出入口は大砂百足の群れによって塞がれた。


私はペンを取り落としてしまった。



篭城2日目。


緊張の夜を無事に過ごし、朝を迎えた。

大砂百足は夜の間街壁上を周回していたが、街へは降りてこなかった。

骸骨どもも依然として下の平地にいる。


騎士たちは街壁内の監視要員の他は東門、南東門、軌道防壁周辺の警備についている。

我々参謀部員も東門の仮設陣営に移り騎士達と共にいた。


街は静かだ。

皆、息を潜めている。



篭城3日目。


初日の鉄騎部隊が全滅した事で出城(でじろ)と第二軍への救援依頼はされていない。

つまり、我々が篭城していても、外から救援は来ない。


退避させた魔導列車の運行担当が復帰連絡が無いことを不審に思うかもしれない。

それに賭ける程、我々も甘くなかった。


そこで、我々は陽動として東門を開けた。

大砂百足を呼び寄せるように戦闘を行い、鉄騎部隊最後の二人は第二軍への救援依頼書を携えて南東門から出て行く。


この作戦は上手くいった。


東門を閉じるまでに64人が犠牲になり、大砂百足3匹を仕留め、他の個体にも大きな傷を負わせた。



篭城4日目。


夜に大砂百足が街壁上を歩き廻るのは常態化しているようだ。

あいかわらず街へは降りてこない。


街の人々もそれを分かってきたようで、今朝は多くの人々が街中に姿を現し活動していた。


街壁の監視員からは「平地の紫色のもやが晴れてきた」と報告があった。

私も見に行くと一部にもやが残っているだけとなり、平地に並ぶ骸骨どもの姿がよく見えた。

奴等は10体10列が一塊となって綺麗に整列している。

そして、その塊ごとに行進している。

西側に1匹の大砂百足がいた。

その周囲を骸骨どもが囲み、剣を抜き、攻撃行動をとり、退避行動をとる。それを繰り返していた。


やつらは訓練をしていた。

それを認識した時、私の内に衝撃が走った。


なんて事だ。

魔物の骸骨が隊列を組んで、集団戦の訓練をしている。

あの大砂百足は仮想敵のつもりなのだ。

なんて、なんて、事だ。

あの骸骨どもは、我々がこれまで相手にしてきた魔物とは違う。


私は急ぎ参謀室から用紙束とペンとインクを持ってきた。

この骸骨どもの事を書き記して置かなければならない。

我々は死ぬだろう。

だが、この情報は帝国に伝えなければならない。

この後、戦うであろう第二軍、第一軍に伝え、万全の対策を取らなければ、彼らも我々の二の舞になる。


偵察窓から戻らない私の所に、東門から「倒したはずの大砂百足が復活して動き出した」との報告が届いた。

それも有り得るだろう。

この骸骨どもはこれまでの常識の外の存在だ。

私は夢中でペンを走らせた。


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