52話 第三軍第三大隊大隊長フィール=アルマダ
初手は我々の思惑通りに進んだ。
敵の先陣部隊に突入した骸骨大砂百足達は炎の攻撃をものともせずにやり過ごし、肢を止める事無く駆け抜ける。
骸骨となった彼らは炎の攻撃には強いからな。
彼らの目標は城砦都市だ。
先陣部隊との挟撃を避ける為に城砦都市の連中には骸骨大砂百足の相手をしてもらう。
骸骨大砂百足は80mの石山を難なく登り、城砦都市の城壁に辿り着いた。
彼らが城壁の上を荒らせば、城砦都市の連中は下に展開する北方騎士団の援護どころではないだろう。
俺の「吸魂」で既に300人を超える北方騎士団の騎士達の魂が集まっている。
先陣部隊に飛び込んだビデスの部隊は上々の戦果をあげている。
シグス率いる第一騎馬隊はその先陣部隊の周囲を巡り、徐々に相手の戦力を削っている。
ドラゴ=ディアンが率いる第二騎馬隊は後方の増援部隊に襲い掛かっていた。
太陽が沈み、周囲が闇に包まれる。
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【北方騎士団第三軍第二大隊 大隊長メイガン=ブリスト】
俺たち増援部隊は第一大隊の北側に布陣した。
到着後30分も経たない頃に2人の伝令が来た。
一人は第三軍司令部からで、夜間の城砦都市内での待機命令だ。
もう一人は第一大隊からの骸骨軍団発見の報告だ。
隣の第三大隊の陣を見れば、既に東門への石階段に向かって移動している部隊がいる。
伝令は俺たちより先に城砦都市に近い場所に陣取った第三大隊に退避命令を伝えていたようだ。
俺も半数の1000人には退避を命じた。
残り1000人は臨戦態勢だ。
最悪、敗走してきた第一大隊の盾となるつもりだ。
戦闘が始まった。
薄闇の中、第一大隊左翼を突破した大砂百足が目前に迫ってきた。
こちらの前衛が応戦準備に入ると、大砂百足の群れは進路を岩山に向けた。
そして、するすると崖を登っていくと、城壁に取り付いた。
城壁内からの応戦による炎の明かりが見える。
2、3匹はその衝撃で岩山を滑り落ちたが、ほとんどの大砂百足が城壁上部に辿り着いた。
下に落ちた大砂百足も、すぐに岩山を登り始めた。
城砦には城砦都市防衛隊1000人がいるが、彼らが突破されれば、大砂百足は容易く都市を破壊するだろう。
俺は退避予定の連中に急ぎ城砦都市に入り大砂百足を討伐するように命じた。
そこに、骸骨騎馬隊がやってきた。
やつらは俺たちが城砦都市に入るのを阻むように岩山の下を通り、城砦都市への移動を開始していた第三軍に襲い掛かった。
第一大隊の先陣、城砦都市の城壁、石階段前の第三大隊。
どの戦場も、俺たち第二大隊の陣から離れている。
俺は第二大隊全員に第三大隊の援護を指示し、骸骨騎馬軍団への攻撃を命じた。
部隊は急ぎ移動を開始したが、間に合うだろうか。
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【北方騎士団第三軍第三大隊 大隊長フィール=アルマダ】
くそっ、完全に虚を突かれた。
そもそもが今日は移動だけの心算だった。
城砦都市到着が夕刻なら当然そのまま城砦都市に入ると思っていた。
それを、第二大隊のメイガンめ。
第一大隊が布陣しているからと、後方に布陣しやがった。
優等生はこれだから困るんだ。
司令部からの伝令が退避命令を伝えてきたので、俺はさっさと陣を解いて、城砦都市への移動を部下に伝えた。
東門への石階段は広く作られているが、この大人数が東門を通り終えるには時間が掛かる。
そんな時だ。
前方の第一大隊から戦闘音が聞こえてきた。
視線を向ければ炎の明かりが見えて、それに照らされた大砂百足の姿が数匹見えた。
あれが先程聞いた骸骨軍団の先触れか。
なら、次に骸骨軍団が来る。
俺は「戦闘準備!!」と声を張り上げた。
部隊長が次々と復唱して石階段を登り始めていた連中にも声が届いた。
大隊なんて纏められているが、俺たちの基本は10人の部隊単位だ。
下手に大人数での集団戦になるより、部隊毎の遊撃戦をした方が普段通りで良い。
その辺が、帝都育ちの優等生には判らんか。
大砂百足が第一大隊を突破したが、こちらに向かわずに石山を登り始めた。
城砦には城砦都市防衛隊がいる。
だが、俺は即断した。
「全員城砦に入れ!防衛戦だ!」
この声も部隊長達が復唱して、各部隊が石階段に向けて移動を始めた。
城壁に張り付いた大砂百足をここから仕留めるのは難しい。
この位置で立ち止まり骸骨どもを迎え討つのも馬鹿げている。ここに骸骨が辿り着く時は第一大隊が全滅した時だ。
だからといって前進はできない。
既に周囲は暗く、戦場の状況が目視で確認できない。
ならば、当初の予定通りに城砦都市に入り、防衛戦を行う。まずは百足退治だ。
ドドドドッ
そんな理由を考えて移動していると、右手から馬の足音が聞こえ、いや、轟いてきた。
この地面を揺らす振動は、100騎や200騎じゃない。1000騎以上いやがる。
こんな短時間に第一大隊が全滅した?
いや、突破されただけだろう。
そして、第一大隊を置いて、こちらにやってきた。
何を考えてやがるんだ。
移動中の部隊は足を止め、盾を構えて骸骨騎士の到来に備えた。
闇の中から骸骨馬に跨る骸骨騎士の姿が現れる。
なぜ、帝国騎士の鎧を着けているんだ。
「盾の不動!」
「身体強化!」
「疾風斬!」
「雷撃弾!」
部隊の前衛が盾を構え、炎弾や雷撃の塊が骸骨に向けて放たれる。
ドドドドッ
骸骨共はその攻撃にも速度を落とさず接近してきた。
目前に迫る。
俺は剣を振るった。
武技『連撃3』に武技『遠斬り』を乗せて、3頭の骸骨馬に斬り付けた。
1頭は倒れた。
だが、それだけだった。
次々と迫る骸骨馬。
俺は後続の骸骨馬にはじかれ体勢を崩し、骸骨馬に蹴られ地面に倒れ転がり、骸骨馬に踏まれ左足が砕けた。
潰れた足を痛がる間もなく腹を踏まれ、血反吐を吐いた頭を踏み潰された。




