51話 第三軍第一大隊大隊長メドゥン=リンドット
我々骸骨軍団は夕刻に城砦都市に辿り着いた。
事前にシーカーに偵察してもらったので、第三軍の布陣は判明している。
北側に騎士団2000人。そこに合流するであろう騎士団が3000人。
北方騎士団は全員が魔技持ちだ。
大砂百足との戦いでビデスの元北方騎士団部隊が2匹を倒している。
リッターとレクターは二人で体長26mの最大の大砂百足を仕留めている。
北方騎士団の実力は確かだ。
リッターが言うには大砂百足は火が弱点らしい。
大抵の生物がそうだが。
おそらく、我々を迎え討たんとしている北方騎士団も同様の対応をしてくるだろう。
我々の先頭を行く大砂百足に対し、火焔系の魔技を撃ち込み、怯んだ所を体接部の柔らかい部分に斬り込み解体する。
そう、考えているはずだ。
◇
北方騎士団第三軍の布陣と我々骸骨軍団の間の地面には突起状の岩が数多くあった。
自然の物か我々の骸骨馬の足を阻む目的かは判断できないが、骸骨大砂百足にとっては関係ない。
ほとんどの突起物を破壊しながら進んで行く。
今回の作戦について話そう。
先陣は骸骨大砂百足20匹。
それにビデスの部隊が続く。彼らには8匹の腐肉喰い丸スライムと魔法操兵のインビジー達も同行する。
今回の主役は彼らだろう。
その後方に骸骨馬に騎乗した骸骨軍団が続く。
シグス率いる第一騎馬隊とドラゴ=ディアンが率いる第二騎馬隊だ。
骸骨馬を持たない骸骨剣士部隊は予備戦力として俺の直営部隊と共に南側に留まる。
腐肉大砂百足も一緒なので、北方騎士団の部隊が来ても対処できるだろう。
北方騎士団の布陣と城砦都市の間の間隙。
そこが我々の狙い目だ。
この間隙に我々が布陣すれば、北方騎士団は城砦都市へ逃げ込む事ができない。
一方我々も城砦都市と北方騎士団の挟み撃ちにあう。
その場に留まれば、だ。
この作戦は速度が重要だ。
そして、北方騎士団の布陣内部に突入するビデスの部隊が、彼らを混乱させれば、我々の勝利だ。
■■■
【北方騎士団第三軍第一大隊 大隊長メドゥン=リンドット】
私はリンドット子爵家の次男として生まれた。
5大公爵家の一つ、ゲールマン家の派閥に属する中位の家だ。
そんな出自の私が大隊長を務める事ができたのも、私の魔物討伐の功績と第三軍の参謀長を務めるデレク=ゲールマンの引き立てのお陰だ。
我々北方騎士団は基本的に1部隊10人編成を基本としている。
この第三軍でいえば、最前線の出城を拠点に部隊単位での出撃を繰り返している。
なので大隊とは、組織的な単位でしかない。
今回のように第一大隊全員が布陣し、魔物の集団と争うことは無い。
それこそ20年前の大討伐戦以来だ。
その時の私は配属2年目の新人だった。
今は大隊長だ。
増援部隊として第二大隊と第三大隊が到着した。
第二大隊大隊長メイガンと第三大隊大隊長フィールに現状を説明し、骸骨軍団を北の荒地に引き付ける、との作戦を説明した。
とはいえ、時刻は夕刻だ。
今日も城砦都市に引き上げる事になりそうだ、と考えていると「南の地に骸骨軍団が現れた」との報告が入った。
私はすぐに城砦都市にいる第三軍軍団長ルーズ=ゲールマンに伝令を送った。
引くか、戦うか。
後方の増援部隊にも骸骨軍団発見の伝令を送る。
もうすぐ日が暮れる。
我々は臨戦態勢を取った。
今回の基本的な戦術策は迎撃だ。
相手の攻撃を受けつつ、北東側に引く。
伝令が戻って来る前に骸骨どもが動き出した。
先頭の大砂百足がこちらに向かってくる。
我々が仕掛けた地面の障害物を物ともせずに迫ってくる。
これは、偵察部隊からの情報から予想できた展開だ。
前面には火魔法と魔技を得意とする部隊を並べた。
初手でこの百足どもを叩ければ、骸骨どもの勢いを抑えることができるだろう。
「獄炎陣!!」
「火焔斬!」
「火砲・焔!」
次々と繰り出される炎の魔法と魔技によって大砂百足の身体が炎に包まれる。
だが、奴らは怯まず、こちらに肉薄してきた。
「なにっ!」
「避けろ!肢の継ぎ目を狙え!」
「うわぁ!」
普段の魔物討伐と違い、密集隊形での布陣が裏目にでた。
高速移動での退避行動をとるには味方が邪魔をしてしまう。
我々の陣に突入してくる大砂百足を避けられずに十数人が宙を舞った。
大砂百足は速度を落とさずに陣を突破し、我々の左翼に展開する部隊を押し潰していく。
「骸骨だ!」
その叫びに視線を南に戻せば、大砂百足の後方から骸骨馬に跨った骸骨騎兵が我々に突入してきた。
大砂百足の撃退には失敗したが、骸骨相手ならば問題ない。
骸骨騎兵は馬を降りた。
どうやら、やつらは近接戦闘をお望みのようだ。
その身に付けている鎧には帝国騎士団の紋章が描かれている。
近くの部隊が応戦する。
その時、骸骨の一体が火焔斬を使ったのが見えた。
骸骨が、魔技を使った?
その戸惑いを感じている間に、我々の陣に雷撃が落ちた。
私の周囲から驚きの声が上がる。
この骸骨共は、我々が知っている骸骨の魔物と違う!
さらに周囲は紫色のもやで視界が悪くなる。
これは毒か!?
私を含め幾人かは『毒無効』や『毒耐性』のスキルを持っているが、そうでない者達が多い。
ドドドドッ!
左翼に骸骨騎兵の集団が走り去る姿が見えた。
奴らに向かって遠距離魔法が撃ちこまれるが、それも散発的だ。
騎士が数人駆け寄り剣を振るが、高速移動中の骸骨馬に切り掛かるのは困難だ。
その彼らは後続の骸骨馬に巻き込まれて、その姿が見えなくなった。
私の周囲にも剣戟の音が近付いてきた。
右翼の部隊はまだ無事だが、彼らは参戦できずにいる。
私の前方の騎士が倒れた。
その横に一振りの剣が浮いている。
なぜ?
一瞬の戸惑いがあったが、その剣が敵であることは分かった。
私に襲い掛かってきた剣をはじく。
はじかれた剣は宙で止まり、再び私に襲い掛かるが、それを躱した。
宙を飛ぶ剣を相手にするのは初めてだ。
だが、その太刀筋は未熟な新兵のようだ。
つまり、そこに見えない身体があるようだな。
私は眼前の空間を断ち切った。
骨のような硬いものを斬った手ごたえがあり、宙を舞っていた剣は地に落ちた。
地面には背骨を断たれた骸骨が横たわっている。
透明化のスキル持ちの骸骨だと?
私は骸骨の頭骨を踏み砕いた。
私は周囲の者と共に剣戟の音が続く方へ進んだ。
周囲は紫色のもやで包まれ、その色も分からなくなる程度には夜闇が迫ってきた。




