47話 決着
勝敗は決した様だ。
この後は消耗戦だな。
リッターとレクターが馬を降りて決闘を申し込んだ。
帝国騎士は其れを受けて、集団戦を捨てて個人戦を選んでしまった。
シーカーと腐肉喰い丸スライムも仕掛けたようだが、先程戻ってきた。
シーカーも木箱に戻った丸スライムも満足そうだ。
シグスは剣を突き上げ、左右の骸骨軍団を動かし、東の街道への退路を断った。
帝国騎士たちは既に馬から全員が降りている。
残念な事だ。
決闘などせずに、馬上からの攻撃を仕掛ければ、あるいは、あの二人を退けることもできたかもしれない。
リッターとレクターに与えた30分が過ぎる。
シグスの直営となっているメイヤーの守備隊とモローの骸骨剣士隊が動き出す。
剣士隊は槍を持っている。
帝国騎士を守備隊が囲み、剣士隊が槍を突いて終了だ。
だが、守備隊が近付くと、彼らに空中から複数の雷が落ちた。
さらに炎が吹き上がり、地面からは槍状の突起物が突き上がる。
なるほど、対集団戦ならば有効な範囲攻撃の魔技もあるのか。
いや、これは魔法か。
2度目の落雷が終わると、守備隊の多くが地に倒れていた。
だが、守備隊の前進は止まらない。
その後方には剣士隊も続く。
3度目の落雷はなかった。
リッターかレクターが対処したのだろう。
生き残った帝国騎士達が囲まれ、命を落としていく。
◇
守備隊と剣士隊の116人が行動不能となっていた。
彼らは一日寝ていれば治るだろう。
だが、損失が多い。
魔法防御の装備が欲しいな。
リッターとレクターは満足そうだが、最後まで任されなかったのは不満だと言う。
まぁ、そうだろうな。
この二人は隊長向きではない。
帝国騎士を率いていたビデスの下に入れる。
元北方騎士団42人は魔技使いの骸骨部隊として、シグスの直営とした。
◇
彼らの記憶から分かった事がいくつかあった。
まずは、魔技と魔法の違いだが、その差はほとんど無い。
手にした武器を介して魔法を発動するのが魔技。
詠唱や無手で放つのが魔法。
それだけの差だ。
だが、状況によっては大きな違いを生みそうだ。
彼らの中には魔法持ちの骸骨が現れたが、ゴースト由来の魔法操兵とは分けて、骸骨騎士として編成する。
北方騎士団には第一軍から第三軍までがあり、彼らは北方騎士団第一軍所属だ。
帝都からの要請で我々骸骨軍団の対処に派遣された。
北の前線から帝都までは、飛空挺で空を飛んできたという。
これは興味深い乗り物だ。
だが、最大乗員100名では、我が骸骨軍団の輸送には使えないか。
帝都から北の前線、城砦都市までは魔導列車というものがあるそうだ。
これも興味深い。
北の前線では、現在は人間側が有利な状況が続いている。
20年前の魔物の大発生を退けた事で魔物の数は減少している。
依然として魔獣と妖獣が跋扈する地だが、北方騎士団は徐々にその支配地域を広げている。
◇
さて、俺は選択をしなければならないようだ。
今回の遠征部隊40人は我々骸骨軍団1000人に対処する為に派遣された。
当初の俺の予想よりかなり少ない人数だ。
次に我々が帝都に対し挑発行為をしたとすれば、次の派遣部隊は150人か?300人か?
それを倒せば、次はどうなる?
北の前線は人間側が有利とはいえ、1軍団7000人を我々骸骨軍団相手に派遣する様なことはできないだろう。
だが、少数の派遣では、我々に勝利する事はできない。
我々としても延々とこの地に留まる訳ではない。
装備を揃え、骸骨軍団新規参入組の訓練のためにフェンクル領領都を拠点に過ごしていたが、この地に留まる意味は、そろそろ無くなってきた。
我々はフェンクル領を北進し、キステード領に侵攻する。
キステード領の北の荒野を進めば北の前線だ。
そこには魔物と、帝国北方騎士団第三軍がいる。
行くか。
■■■
【デ・ルーの街、商業ギルド。ギルドマスター・トールデン】
「そうか。北へ行かれるか。」
デ・ルーの街、商業ギルド。
ギルドマスター・トールデンの元に届けられた1通の書状には、骸骨軍団の北方への進軍に伴い、この地に残っていたルー伯爵夫妻もデ・シームの街へと出立する事が記されていた。
おそらくノールデア領領都、デ・シームの街も同じ状況だろう
予想よりも早かった。
領都とデ・シームの街の商業ギルドには二人の息子をギルドマスターとして据えた。
領主達の資産を元手に骸骨軍団の装備を発注する事で、各地の商いが活気付き、トールデンの足場固めに役立った。
しかし、それも終わる。
骸骨軍団の行き先は北へ、と書かれている。
帝都に進軍するならば、東、だ。
つまり帝都は健在だ。
骸骨軍団が去ったと知れれば、やがてル・ゴール帝国からは新たな領主と執政官が派遣されてくる。
そうなれば、元通りだ。
骸骨に味方した事で、処罰される可能性もある。
ここは、保身を図るか。
トールデンはル・ゴール帝国領土管理局宛ての書状を書き始めた。
これまでの経緯、自分のとった行動とその目的、今後の展望。
書きながら思う。
タリュジーンは支持してくれるだろうか。
彼の支持があれば、自分の主張もマシに見える。
いや、彼はきっと反対するだろう。
弱気では駄目だ。
彼は書き上げた書状を破り捨て、新しい用紙に書き始めた。
自分こそが、このノールデアの新領主にふさわしいと主張するために。




