38話 開戦
フェンクル領領都。
我々が用意した戦場の荒地は南北2000m、東西1500m。
北の街道から荒地に出てきた帝国騎士団が北辺を東へと移動し、布陣を整えて行く。
対する我々骸骨軍団は荒地の南側に布陣している。
領都街壁上にブラッドの11番隊を配置しているが、彼らは領都の守備隊だ。
帝国騎士団が領都への侵入を試みた時にはそれを牽制する。
俺も街壁上から戦場を眺める誘惑もあったが、戦地に立つことを選んだ。
我々の布陣は2列横隊となっている。
前列左翼はタバーニが指揮するサンシャの5番隊、メイヤーの6番隊。
前列右翼はグレイの指揮するラモンの7番隊、ブラストの8番隊。
中央はシグスとベニーの1番隊に骸骨剣士部隊と骸骨魔法操兵部隊。
後列左翼はガナベルが指揮するタワーの3番隊とドットの4番隊。
中央にマルクトーの2番隊。
後列右翼はジョーンズが指揮するアンディの9番隊とウィルの10番隊。
俺はマルクトーの2番隊と共に後列中央にいる。
◇
北の街門上に止まっていた屍鷹が俺たちの上空に飛来し円を描いてから戻って行った。
帝国騎士団が全員街道から出てきた合図だ。
あいつは賢い。
名前を付けてやろう。
前方、北側に布陣した帝国騎士団から掛け声や気勢の大声が届く。
布陣の数箇所で光り輝く者が見える。
おそらく魔法か魔技の発動だ。
戦闘前の鼓舞魔法だろう。
対して、こちらは静かにシグスが剣を掲げる。
その剣が振り下ろされ、中央の骸骨剣士と骸骨魔法操兵達が動き出す。
まずはこの場の中央を取る。
左翼の5番隊が領都の街壁、右翼の8番隊が森の端に寄るように広がりながら前進する。
馬は立ち止まったら狙われる。
なので、外周から敵陣に迫り、中央へ折り返して戻ってくるような円を描きながら、敵を削る。
帰り道が敵に背を見せる事になるが、これを中央に陣取る骸骨剣士達が支える。
対する帝国騎士団の対応は3つ考えられる。
ひとつ、緒戦は防御に徹して、こちらの戦力を見る。
ひとつ、こちらの騎兵に突撃し、乱戦に持ち込む。
ひとつ、前衛を盾とし、面で押し潰す。
一つ目ならば、緒戦からこちらが有利に押し切れる。
二つ目も、骸骨騎士と骸骨馬のしぶとさは人間以上だ。被害は大きいが、最終的にはこちらが勝つ。
三つ目、これが厄介だ。
広い場所を用意したが3000の騎馬と剣士が入り乱れるには、狭い。
つまり、馬の機動力を上手く活かせない。
ならば、馬を降りる。
この判断を初めて来た場所で即座に判断して指示できる騎士団長とそれに従う団員達は、練度が高いといえる。
どうやら、帝国の西方騎士団は、強者の様だ。
彼らは前衛が馬を降り、盾を前面に立て、槍を突き出し、ゆっくりと前進を開始した。
◇
弓矢が飛び交い、左右両翼の先陣が帝国の前衛と激突する。
弓矢は骸骨魔法操兵のウィンガーの風で中央部隊は守られているが、左右の骸骨騎馬には飛んで行く。
右翼は盾で防げるが、左翼は、厳しいな。
中央の骸骨剣士部隊からの弓矢の攻撃が、帝国の中央部隊から右翼部隊に狙いを集中し、左翼骸骨騎士の突撃を手助けする。
帝国の陣形が変わった。
中央は前進を続けるが、両翼の前進が止まる。
こうなると、こちらの騎兵の帰り道が無くなる。
シグスはすぐには対応しない。
もう少し、辛抱して、敵の陣形が整ったところで、剣を振った。
骸骨軍団の動きが変わる。
中央部隊が徐々に後退し、代わりに6番隊と7番隊が中央部隊の横を突進する。
左翼の5番隊は中央への折り返しをやめて、直進して行く。帝国右翼の横を通り抜け、北の街道へ進む。
右翼の8番隊も東の街道に抜けて行く。東側は森の中への退避も可能だ。
前回の伐採した空き地はさらに整備を進めて、東の街道にも繋がっている。
地の利は最初からこちらにあるのだ。




