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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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35話 ウーノンサ領騎士団団長ジョーンズ

【ウーノンサ領騎士団団長ジョーンズ】


フェンクル領東南部。


ここはエスター山脈の麓の丘陵地帯だ。

街道は整備されているが、狭い場所や急な坂道は至る所にある。

徒歩や馬ならば、ほぼ問題無い。

馬車には難所だ。


俺たちの糧食を積んだ荷馬車は遅いながらも丘の街道を進んで行く。

だが、帝国騎士団の馬車の中に居る御貴族様には耐えられないそうだ。

丘の街道をたった1時間進んだ所で、帝国騎士団は道を戻り出した。

丘を通らない、北周りの道を行くそうだ。


馬鹿じゃないのか。


頭では思っていても口には出せない。

口に出せる連中が、この時は羨ましかった。


クィッカー領騎士団は帝国騎士団に付いて北周りをするそうだ。


俺たちウーノンサ領騎士団は丘の街道を進んだ。

ああ、田舎者だからな。慣れてるんだよ。

先にフェンクル領領都に着いて、宿営地を用意しておくさ。



丘陵地帯の西端に辿り着く。

今夜はここで野営することにした。


この先の街道は平坦で行軍速度も上がる。


「ジョーンズ団長。先触れを出しますか。」

「そうだな。フェンクル領領主と騎士団宛てに我々の人数と3日後の到着を知らせよう。」

「2人出します。帝国騎士団の事は?」

「書状には書けんな。会った時に伝える。」

「了解。」


デコース副団長が俺のテントから出て行った。


俺は簡易ベッドに横になり、久し振りに身体を伸ばした。



街道途中の小さな村で宿泊しつつ、3日後の夕刻にフェンクル領領都の街壁が見える位置まで来た。

街道は森の木々を抜けて、見晴らしの良い畑の中を通って街門に続いている。


静かだ。

誰もいない。


そうだ。農作業や街道を歩く人間が、誰もいない。


考え過ぎか?

いや、違う、と俺の頭の中の声が言っている。


「デコース!止まれ!」

「はっ!全軍停止!」

「全軍停止!」

デコースの掛け声に各隊長が復唱し、馬の足が止まる。


俺はデコースの顔を見た。

「先触れは出したんだな。」

「はい。」

「そうか。」


俺はもう一度周囲を見渡した。

北側には畑の広がりがあり、その先に森の木々が見える。

街の街壁があり、その上に魔光灯も点いている。

南側も北側同様に畑が広がっている。


静かだ。

だが、それだけだ。


「デコース、静かだと思わんか。」

「そうですね。まるで誰かが身を潜めているようです。」

「そうだな。アンディの3番隊と共に街門に急行して、本隊を待て。用心しろよ。」

「はっ。」


デコースが隊列の先頭に立ち、3番隊81人と共に先行する。

我々本隊は森を出た所で横隊を組む。

この場所は森と畑の境で少し荒れた場所になっている。

もしもの場合は、街道を戻るか、畑を横断して北の街道に入り帝国騎士団との合流を図る。


「団長!街門が閉まります!」

「くっ、やはりか。」


デコース達3番隊が街門に迫ると領都の街門が閉ざされた。

3番隊は左周りに道を逸れる。

反転して我々に合流する気だ。

その彼らに街壁の上から弓矢が降り掛かる。


「戦闘準備!抜刀!」

団員達が剣を抜き、槍を構え、弓を持つが、遅かったか。


周辺の森の中から骸骨どもが出てくる。

それは、俺たちの背後の街道も同様だった。


バン!バン!バン!


俺たちの周囲で大きな音が轟き、馬達が驚き暴れる。

突風が吹き、木の葉と砂交じりの風で視界が奪われる。

そして、南と北の街門からも骸骨騎士達が迫ってきた。


数が多い。

俺は即断しなければならなかった。

「北だ!全員北の街道へ進め!」


■■■


屍鷹が東の空から帰ってきた。

俺の差し伸ばした左腕に上手に止まる。


すると、俺の頭の中に屍鷹の見た映像が見えた。

白黒で音は無いが、東の丘の麓、草地に陣取る騎士達と複数のテントが見えた。

だが、予想より少ない。


俺は屍鷹の頭を撫でてやった。

彼は目をつむり、気持ち良さそうに撫でられる。


ふむ。しかし、いつまでも腕を挙げている訳にもいかない。

そう思うと、屍鷹はひと羽ばたきして飛び上がり、再び東の空へ飛んで行った。



その後も、度々戻って来ては俺に帝国騎士団の姿を見せてくれる。


さらに偵察部隊の骸骨騎士2人が戻って来た。

彼らはそれぞれ男一人を馬の背に乗せている。

街道の途中で出会い、襲われたそうだ。


なるほど、紋章付きの鎧姿に腰の剣は、村人が持つ物ではない。


俺は2人の男を「吸魂」した。

彼らの身体は腐肉喰い丸スライムの荷馬車に載せておく。

丁度良くなれば喰べるだろう。


さて、彼らの魂の記憶に拠れば、屍鷹が見ている騎士団はウーノンサ領騎士団だ。

騎士団長ジョーンズ率いる5部隊約300人が来ている。


そして、帝国騎士団とクィッカー領騎士団は北へと進路を変えたという。

彼らはその理由を知らなかった。

俺にも分からない。


だが、敵が別れたのは、こちらにとっては好都合だ。

今回は我々の方がフェンクル領領都を使った防衛戦となる。

さらに彼らは我々骸骨軍団の戦力を600体と見ている。

フェンクル領騎士団を仲間にする前の数字だ。

今や我々骸骨軍団は1000人を越える。


街門前の耕作地が戦場となる予定なので、我々は数日前から森に細工をしていた。

森に10m程入った場所の木を伐採し、部隊の隠れ場所を作った。

あまり時間がないので、太い樹はそのままに、低木と下草を払い、邪魔な枝を切る。

木と木の間に骸骨騎士が身を潜める為だ。


敵は東の街道から領都の東の街門に来るが、そこで街門を閉めて、街壁上から弓を射掛ける。

敵は耕作地に広がり、対抗するだろう。

そこで森からの潜伏部隊が背後を襲う。

さらに、北門と南門から骸骨騎兵が殺到すれば、敵を包囲殲滅できる。


これが俺の描いた絵だ。

実際の敵の動きは多少違ったが、概ね上手くいった。



戦闘終了後の片付けを任せて、俺はシグスと共に領主邸に行った。

フェンクル侯爵にフェンクル領の地図を出させ、北周りの帝国騎士団の進路予想をする。

ジョーンズ騎士団長らを「吸魂」したことで、帝国騎士団の動きが分かった。

馬車の揺れが気に食わないとの理由で進路変更したのならば、小さな道ではなく、整備された街道を行くはずだ。


「でしたら、東北のデ・ランブルブの街に入り、西へ向かって北の街デ・ミトリーの街です。ここより北へ行けばキステード領になります。海岸沿いに街道を南下しデ・ドリューの街、そして、ここ、フェンクル領領都です。」

「馬車で何日掛かる。」

「15日程度です。マスター。」

フェンクル侯爵がその大きな身体に合った大きな顔とたるんだ顎の肉を震わせながら説明してくれる。


俺は地図を確認した。

フェンクル領の南東の丘から北上し、西へ進んで、そこから南下してくる。

領内を周回してくるとは。


彼らがウーノンサ領騎士団と別れたのは5日前だ。

今頃はデ・ランブルブの街か。


今から向かえば、俺たちの足なら5日で着きそうだ。

そうなると北西にあるデ・ミトリーの街で出会うことになる。


こちらとしても土地勘の無い土地だ。

であれば、ここはあせらず、当初の予定通りにこの領都での迎撃戦に備えよう。



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