22話 帝国の状況
さて、陽が昇るまでまだ時間がある。
骸骨軍団は街門の守りにメイヤーの6番隊を残して、一度騎士団本部に引き上げた。
作戦会議もあるので、メイヤーも一緒だ。
領都の街の外に待機させていた6番隊の馬も、一度中に入れた。
ラムデス達には問題ないが、トールット達商業ギルドの職員達には深夜におよぶ労働になっている。
しかし、もうしばらく頑張ってもらおう。
馬達も騎士団本部に連れて行き、休憩を取らせる。
◇
骸骨軍団には街中の死体を集め、装備の回収をしてもらう。
死体は、神殿の前に積んでおけば、神官が処理するだろう。
その後は、騎士団本部にて装備の交換や馬の世話をさせる。
俺はシグス達と領主邸に向かった。
領主邸にはノールデア侯爵、ルチーム伯爵、ガーギウス帝国大使が揃っていた。
「揃っているな。」
「お待ちしておりました。マスター。」
「では、今後の方針を決める。」
骸骨軍団の直近の行動目標は領都に向けて進軍しているデ・シーム騎士団の殲滅だ。
その後はデ・シームの街の制圧の予定だったが、俺は少し予定を変更した。
まず、デ・シームの街にはソニーを再度メッセンジャーとして送り込む。
これで奴らは、北のフェンクル領か帝都に救援を頼むだろう。
我々は領都にて、新たな骸骨騎士を迎える。
今夜までの戦いの結果、俺が保持する騎士団員の魂は190人分ある。
さらに領都守備隊と領主邸などで戦いに巻き込まれた者の魂が100人分ある。彼らの魂は骸骨剣士となる。
さらにこの後、デ・シーム騎士団の魂が100人分加わるだろう。
ノールデア領領都の扱いだが、これは今まで通りにノールデア侯爵とルチーム伯爵に任せる。
但し、街の民には領都が骸骨都市となり、骸骨に対し敵対行動を取らないように通達してもらう。
デ・ルーの街の様に人間を代理に立てないのは、この領都に我々が長居しないからだ。
新たな骸骨騎士達を迎えた後、騎士団本部で装備を整え終われば、我々はデ・シームの街に向かう。
その時の軍勢は600人程になっているはずだ。
◇
俺の説明が終わったが、口を開く者はいない。
俺は窓の外を見た。
外は闇に包まれ、先ほどまでの喧騒は消え、静かな街だ。
俺は視線を戻した。
「吸魂」した記憶について、確認すべき事がある。
「ノールデア侯爵、このノールデア領の騎士団団員数は合計447人。これに間違いはないな。」
「はい、マスター。」
「なぜだ。」
「ル・ゴール帝国よりの通達でございます。マスター。
ル・ゴール帝国に属する各領国において、騎士団団員は500人までとなっております。
このノールデア領には、3つの騎士団があり、団員が420名、それを率いる団長、副団長、分隊長が27名おります。」
「守備隊については?」
「同様に、守備隊隊員は1000名までと定まっております。」
なるほど。
帝国としては領国に過度な戦力は持たせたくないが、領国は持ちたい。
その妥協点といったところか。
「ガーギウス帝国大使。ル・ゴール帝国の領国は幾つ存在する?」
「18でございます。マスター。」
18。
各領国の騎士団団員が500人。
全ての騎士団を我が軍門に加えたとして、9000人。
守備隊の人数は、18000人。
「ガーギウス帝国大使。ル・ゴール帝国の騎士団団員は何人いるのだ。」
「帝都を含む直轄領内に3000人。北方の魔族領防衛線に2万人。でございます。マスター。」
騎士団を合わせて3万1000人。
「帝都守備隊は何人だ?」
「帝都治安部隊が3000人。帝国直轄地には5万人程度かと。マスター。」
つまり、現在の戦力を全て下僕にしても、骸骨騎士3万1000人と骸骨剣士7万人。
総勢10万の軍勢にはなる。
だが、魔王軍と戦うには、50万から100万は欲しいところだ。
それには、どれ程の年月が必要なのだ。
「まずはル・ゴール帝国か。帝国の他に人間の国は無いのだな。」
「現在ル・ゴール帝国と通商関係にある国はございません。しかし、北の魔族領を抜けた先には人間の国がある、と言われています。」
「魔族領の先、か。」
「はい。約500年前、この大陸に魔族の大侵攻がありました。」
◇
ガーギウス帝国大使による帝国の歴史を聞く。
500年前。
大陸への魔族の大侵攻があり、大陸中央部が魔族の地、魔族領となった。
大陸横断山脈があるために大陸南部への被害は少なかった。
山脈の南側の国々は魔族に対抗する為にル・ゴール王国を盟主とした同盟を結ぶ。
南方10カ国連盟だ。
300年前。
10カ国連盟の一つ、トーレウス聖王国に魔王が出現する。
トーレウス聖王国は滅び、その被害は周辺国にも及んだ。
魔王戦争である。
戦争は長期に渡り、戦線は拡大し国々は疲弊していった。
だが、ついに、ル・ゴール騎士団が中心となり魔王を討ち倒した。
魔王消滅後。
大陸横断山脈の麓、元トーレウス聖王国周辺の地は木々に覆われた未開の地となり、依然として魔獣と妖獣が跋扈する魔族領のままだ。
戦争被害にあった国々には、ル・ゴール王国が中心となり復興を支援した。
その復興事業で経済、産業、軍事、政治の主導権を握ったル・ゴール王国はル・ゴール帝国となり、王はル・ゴール皇帝となった。
各国は帝国の領国となり、各王家は領主としてその土地を治めることとなった。
◇
300年前の魔王戦争。
そう。
俺が戦い、そして死んだ。
あの戦いだ。
魔王は死んだ。
だが、トーレウス聖王国は復興しなかった。
そして、未だに多くの魔物が存在している。
ガーギウスの語る歴史はル・ゴール帝国から見た歴史であり、俺の記憶と齟齬がある。
しかし、結果として今の現実がある。
俺は領主邸を後にし、骸骨軍団を率いて街門前に布陣した。




