21話 領都制圧
領主邸の騎士団は予想以上に人数が多かった。
だが、入口大扉前の防御陣があっさりと突破され、門扉を越えてタワー達の騎兵が突撃を敢行した事で、初手を取れた。
混乱する敷地内の騎士どもに骸骨騎士の槍が突き刺さり、領主邸の周囲はこちらが押さえる事ができた。
「吸魂」した記憶に拠れば、領都騎士団の1番隊、2番隊の63人が詰めている。
そして、外の防衛を任されていた2番隊隊長ギールを仕留めた。
館の中には1番隊の隊長メルドゥーと騎士団団長ハインザードがいる。
館の正面扉を破壊し、タワーが乗馬したまま突っ込んだ。
その他の骸骨騎士は馬を降りて突撃する。
館の玄関ホールはタワーの乱入で混乱している。
テラーの恐怖の影響も大きく、領都騎士達の混乱は続き、統制が取れない防衛側は次々と我々の餌食となっていく。
階段を巡る攻防が続いたが、ボルトが電撃を纏って突撃し、2階廊下に橋頭堡を確保した。
既に1階を制圧し、2階を攻め進んでいると、廊下の奥から白いマントを翻しながら、騎士団団長ハインザードが現れた。
奴は剣を振るい、連撃、遠斬りなどの武技を使い、廊下の骸骨騎士を切り捨てていく。
だが、斬られたぐらいで、俺の骸骨騎士達は怯まない。
ハインザードは愚かにも、目の前の骸骨騎士が居なくなったと勘違いし、廊下をこちらに進んできた。
その進めた足の横には、剣を手にする骸骨騎士の上半身がいる。
足を傷付けられ片膝を突いたハインザードに、骸骨騎士達が襲い掛かった。
◇
63人分の騎士の魂と4人分の使用人の魂を「吸魂」した。
こちらも22人の骸骨騎士が骨を切断されたり、砕かれたりしている。
ライファノンの治療でも斬られた骨はくっつくが、完治には一日休む必要がある。
屋内での集団戦で予想以上に被害が出た。
だが、ここでハインザードを仕留めたのは大きいな。
彼の記憶に拠れば、街門の警備にはロウランド隊長の領都騎士団6番隊30人が当たっている。率いるのはモーザン副団長。
執政官官邸にはクシンク隊長の領都騎士団3番隊30人。率いるのはエバンツ副団長。
騎士団本部はホング隊長の領都騎士団5番隊30人が待機している。
そして、もう一箇所。
帝国大使館という館にレイネン隊長の領都騎士団4番隊30人がいる。
この場所は予定外だったが、騎士団がいるなら、襲う。
それに、守備対象が多くなったので、領都騎士団は分散している。
彼らは全戦力を街門か街門前に集中し、我々を迎え撃つべきだった。
領都騎士団はデ・ルーの騎士団と部隊構成は同じだが団員数が180人と人数が多い。
だが、帝国内領国の領都騎士団としては少なく感じる。
これは、ル・ゴール帝国からの通達で、所属領内での騎士団団員数上限500人という人数制限があるからだ。
この辺りの知識は詳しく調べたいが、今夜は忙しいので、後回しにしよう。
さて、今、俺の目の前には4人の骸骨騎士に囲まれ震え上がっている2人の人間が居る。
「ノールデア侯爵。」
「魔物が・・・。」
年老いているが、眼光は鋭い。
良き下僕になりそうだ。
俺は無言で腰の剣を抜き、ノールデア卿の胸を突いた。
ノールデア卿は驚きで目を大きく見開き、そして、力なく項垂れた。
「閣下!」
「吸魂」
「授魂」
項垂れていた頭が持ち上がり、驚いていた表情は和らぎ、俺を見る。
「ノールデア侯爵。」
「はい。マスター。」
「我々はこの後、執政官官邸を襲撃し、明朝にはデ・シームの騎士団との戦いになる。貴様との話はその後だ。」
「畏まりました。マスター。ひとつ、よろしいですか。マスター。」
「なんだ?」
「この街の南門より馬車で半日の距離に、この街の共同墓地の丘がございます。土葬ですので、良き骸骨の補充が可能であると、僭越ながら申し上げます。」
「そうか。」
これは良い情報だな。
「では、今夜の戦いが片付いた後、そこへ参ろう。案内せよ。」
「畏まりました。こちらでお待ちしております。マスター。」
◇
執政官官邸は領主の館より数ブロックの距離にある。
領主の館の後片付けと負傷兵の警護に骸骨騎士10名を残してきた。
ガナベルからは街門の騎士団と守備隊の捕縛完了の連絡が入った。
というより、執政官の館の前でマルクトーの2番隊と供に俺たちを待っていた。
では、シグスもタワーも譲る様なので、一番槍は彼らに任せよう。
ここの警護はエバンツ副団長とクシンク隊長の領都騎士団3番隊30人だ。
できれば骸骨騎士の被害無く制圧したい。
◇
「ルチーム伯爵。」
「はい、マスター。」
「領都制圧後に領主邸にて、今後の話を行う。貴様はこの領都が骸骨都市となった事を民に通知せよ。」
「はい、マスター。領主邸に参り、マスターのお帰りをお待ちします。」
◇
帝国大使館の場所は、この執政官官邸と同じブロックにあった。
俺がルチーム伯爵と話している間に、シグスの指揮で攻め落としている。
「吸魂」した中にはル・ゴール帝国騎士団団員6人が含まれていた。
「ガーギウス大使。」
「はい、マスター。」
「貴様には帝国皇帝宛に我々の討伐依頼をしてもらう。」
「畏まりました。マスター。」
「書状の手配が終わった後はノールデア領主の館で俺を待て。」
「畏まりました。マスター。」
◇
騎士団本部にはホング隊長の領都騎士団5番隊30人がいた。
「吸魂」した記憶に拠れば、ホングは最後まで、ハインザード騎士団長の指示を守り騎士団本部にいるか、指示を破り領主邸に応援に行くか、迷っていた。
ハインザードは部下を厳しく監督し、自主的な判断に基づく行動を嫌っていたようだ。
俺も指示を出す時は気を付けるとしよう。
俺と骸骨軍団は、街門に戻った。
◇
街門周辺はドットの4番隊とメイヤーの6番隊が制圧している。
そして、領都騎士団のエバンツ副団長とクシンク隊長の領都騎士団3番隊30人と領都守備隊41人が捕縛されている。
残念なことに、6人が既に死んでいる。
彼らを捕縛したのは、俺の「吸魂」のためだ。
死んでから10分以内に「吸魂」しなければ、魂は天に召されてしまう。
なので、彼らには俺が領都内を制圧するまで待っていてもらった。
待たせてすまない。
「吸魂」
今夜の成果として、領都騎士団と領都守備隊に帝国騎士団も含めて263人分の魂が集まった。




