18話 デ・シーム街門前
骸骨軍団は街道を西へと進み、デ・シームの街を望む地点まで来た。
街の街壁上の見張りからも、遠く我々が見えている事だろう。
さらに近付いた所に、馬用の飼料を満載した荷馬車が6台止まっている。
骸骨軍団はデ・シームの街を眺めながら、休憩を取った。
商業ギルドの者は俺の受け取りのサインを貰い、デ・ルーの街に戻る。
彼らには帰り道の分の用意も頼んでいるので、それは改めて用意してもらう手はずになっている。
◇
街道はデ・シームの街の手前で二手に分かれている。
街に入るか。
街に入らず、領都に向かうか。
俺たちは分岐点の手前で4列横陣をとった。
街の門は閉ざされ、街壁上に複数の兵が立ち並んでいる。
そういえば、我が軍の装備に攻城兵器が無い。
いずれ、そういった大物も必要となるのか。
さて、今日の所はデ・シームの奴らを相手にする予定は無い。
もっとも、奴らがやる気なら、受けて立つ所存だが。
時刻は、もう日が傾き始めている。
我々には有利だな。
我々の中から一騎が離れた。
彼の名は2番隊所属のジーノ。武技は『弓の遠射』、我が軍団一の弓の名手だ。
俺はジーノに一枚の書状を渡した。
ジーノは弓でそれをデ・シームの兵に届ける。
お、当たったな。
さすがに、この距離では「吸魂」はできないか。
いや、この感覚。
すこし時間が掛かったが、サリムという名の魂が俺の左手に吸い込まれた。
さすが、ジーノだ。
俺は賞賛の思念を送っておく。
周囲の奴らの気合が入ったな。
さて、デ・シームの騎士団はどう出るかな。
■■■
デ・シーム街壁上、物見の塔内。
狭い部屋に騎士団団長タバーニを始め、副団長ガードンとトリムの2人が揃っている。
「骸骨の奴らより、書状が届きました。」
騎士団員が血に汚れた紙を持って来た。
タバーニが、それに目を通す。
「団長。奴らはなんと。」
タバーニは、書状をガードン副団長に手渡し、目を閉じ、腕を組んで黙想した。
ガードン副団長が書状を読み上げる。
「"我らに戦闘の意思なし。領都に向かう。10分後に移動を開始する。"、だと。」
「団長、攻撃しましょう。奴らを領都に行かせる訳には。」
「いや、これは好機だろう。奴らを行かせて、我らが追えば、領都で挟撃できる。」
血気にはやるトリムをガードンが冷静に諭す。
「うむ。ガードンの意見を私も推そう。」
「団長。」
「奴らを領都に向かわせる。見張り役を2騎付けろ。我々本隊は明朝出発する。」
「了解。」
「私はシーム伯爵に説明に行く。ガードン、後は任せる。」
「はっ。」
■■■
ジーノが弓を打ち込んでから10分が経過した。
「シグス。」
「はっ。1番隊、動く。」
シグスの合図でベニー率いる1番隊が動き始める。
シグスを先頭に、ゆっくりと街道を進み、分岐点で領都側に進む。
続いてマルクトーの2番隊。
オズマとタワーの3番隊。
デ・シームの街の騎士団は街壁上からこちらを伺っているが、動きはない。
ガナベルとドットの4番隊。
サンシャの5番隊。
最後にメイヤーの6番隊と骸骨魔法操兵部隊と俺が移動を開始する。
デ・シームの騎士団は最後まで動かなかった。
◇
その日の夜。
デ・シームの街と領都を結ぶ最初の宿場町の手前で、我々は休息を取った。
商業ギルドの職員に受け取りのサインをし、俺は彼に質問をした。
「デ・シームの街の様子はどうであった?」
「は、はい。あの、普通でした。」
「ほう。デ・ルーの街の噂は流れていたか?」
「それは、ありました。デ・ルーの街から逃げた者がいますので、彼らの口から聞いたのでしょう。ですが、噂の内容は、"デ・ルーの街が骸骨に襲われたらしい"、"騎士団が対応して被害を受けたらしい"、といった物です。」
「そうか。」
「ええ、ですので、俺達がきっちりと骸骨様の恐ろしさを話してきました。デ・シームの騎士団は骸骨様の恐ろしさを知って、街に閉じ篭っているんだ。領主様は怖くて骸骨様の討伐命令が出せないんだ。ってね。」
「うむ。よくやった。」
トールデンは部下にきちんと仕事を説明したようだ。
彼らはこの宿場町に留まり、我々の帰りの分の飼料の確保をしてもらう。
この日の夜は移動せずにこの場所に留まった。
◇
次の日の昼間も、何事も無く街道を進み、昼過ぎに第二の宿場町に着いた。
昼の移動では、多くの者が街道を利用しているので、その者達は我々を目撃し、恐怖し、逃げ惑った。
我々の到着にやや遅れて、飼料を積んだ荷馬車隊が到着した。
「申し訳ございません、骸骨様。到着が遅れました。」
「良い。計画では夕刻の予定だったからな。我々が早かったのだ。」
「ありがとうございます。」
彼らもこの宿場街に留まり、帰りの飼料の確保をお願いしている。
さて、我々は今夜もここで休息を取ろう。
◇
夜更けも過ぎ、もうすぐ夜明けを迎える頃、デ・シームの街の方向から1頭の騎馬がやって来た。
その馬に乗るのはソニーだ。
彼は屍人なので、身に付けているのは骸骨魔法操兵と同じく鎖帷子に灰色ローブだ。
今はそのローブを被り顔を隠すようにしている。
彼が遅れて合流した理由。
「マスター。デ・シームの騎士団100騎が夜明けに街を出ました。今は約半日分後方に居ます。」
「そうか。他には?」
「我々の500m後ろに2騎の偵察が付いています。」
「そうか。シグス。」
「はっ。」
「行動予定を確認する。隊長達を集めろ。」
「畏まりました。マスター。」




