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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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17話 出陣

ラムデス達が2階の部屋から持って来た荷物の中は着替えや保存食に通貨の袋など、俺たちの役に立つものではなかった。


俺は老夫婦にノールデア領領都の連絡先を書かせた。

そして、老夫婦には「我が骸骨軍団は、近日中にノールデア領領都に攻め入る。」と報告させた。



俺は執政官の館に戻り、ルー伯爵に話した。

奴らが来ないならば、こちらから出るまでだ。


「マスター。このノールデア領には騎士団が置かれている街は3箇所ございます。北東のデ・ルー、北西のデ・シーム、そして南西のノールデア領領都です。」

ルー伯爵はテーブル上にノールデア領の地図を広げ、街を指し示す。

この3つの街の他にも村があるが、いずれも農村か、街道沿いの宿場町だ。


では、どちらの街を、どう攻略して行くか。


「領都を先に落とせば、デ・シームの連中は北のフェンクル領に助けを求めるか。」

「そうですね。その可能性は高いでしょう。マスター。」

「だが、領都に行くには、街道を使い、デ・シームの街を経由するのが早いか。」

「我々の姿を奴らに見せつけておくのも一興かと。」

「ふむ。面白いな。」



骸骨軍団の戦闘部隊は俺を含めて140人だ。

騎士は片手剣を腰に提げ、盾と槍を持つが、今回は遠距離攻撃もあり得るので、マルクトーの2番隊とドットの4番隊には弓矢を持たせる。


我々だけなら、これで出撃できるが、馬がいる。

代えの馬も入れて、160頭の移動になる。

そうなると、馬の飼料をある程度は持っていかないといけない。

水は、水場と川の位置を確認しておく。


通常ならば、デ・シームの街まで2日。そこから領都までは4日の旅程だ。


睡眠を必要としない俺たちならば、時間は短縮できる。

後は馬次第だな。


「トールデンを呼べ。」



「馬の飼料を街道沿いに運ぶのですか?」

「うむ。今回の進軍では荷車に合わせた進軍は行わない。

ここからデ・シームの街への中間にあるノーザン村に160頭分の飼料を前もって準備しておく。我々が到着し、2時間ほど馬を休ませ、その後に進軍を続ける。これと同じ事をデ・シームの街、その先、領都に向かう街道沿いの3つの宿場町で行う。」

「デ・ルーから足の遅い荷車を先行させるのですね。」

「全てではない。ギルドの職員をデ・シームの街と領都に派遣し、荷車と飼料を買いつけ配備しても良い。委細は任せる。」

「畏まりました。日程のご予定は?」

「そちらの準備に合わせて出立する。」

「では、急ぎ準備いたしまして、後ほどお知らせいたします。」


「うむ。それと、この書状をデ・ルーの民に周知させてくれ。」

「これは。なるほど、領都の連中が考えそうなことですな。」

「今日まで我々の討伐隊がこの街に来ていないことが証拠となろう。」

「そうですな。ふむ、これは使えますな。」

「何だ。」

「先ほどの馬の飼料の買い付けに領都とデ・シームの街に遣わせる者にも同様の書状を持たせます。街の人々の間で噂になるでしょう。」

「なるほど。そうなれば、領主と騎士団の信頼はなくなるな。」

「マスターの骸骨軍団を恐れて手が出せなく、去って行くのを待つだけの騎士団ですからな。信用も信頼も出来ないでしょう。」

「分かった。トールデンの思う通りに。」

「畏まりました。お任せください。」



最も遅く配置可能となるのは領都の手前の2箇所で9日後の予定だ。

6日後、ルー伯爵夫妻を留守番に残し、我が骸骨軍団はデ・ルーの街を出発した。


今の季節は夏の初めだ。

これから熱さが本格的になる。

街道を行くと、夏草の香りが強い。


俺は匂いも感じられるようだ。

会話もできるし、耳も聞こえる。

見た目は骸骨だが、人間同様の感覚を備えているのに、改めて驚いた。

腹は減らないが。


青い夏空がまぶしく、空の高みを飛ぶ鳥が見える。


馬は元気だ。常歩(なみあし)速歩(はやあし)を切り替えながら街道を進んで行く。


俺はまぶしい空を見上げて、いつか鳥を捕まえる事を目標の一つとした。

あれは良い偵察役になる。


■■■


デ・ルーの街、商業ギルド本部。

トールデンの執務室に、守備隊隊長のタリュジーンが押し掛けた。


「トールデン!てめぇ、あの青目の骸骨の仕事してるって噂は本当だったのか。」

「その通りだ。副執政官に任じられたからな。」

「その話は納得した。あの骸骨どもの所為で混乱するはずだったこの街が、すぐに普通の日常を取り戻したのは、お前がそれを引き受けたからだ。だが、それを、俺はお前が街の為を思って引き受けたんだと思っていた。」

「その通りだが。」

「だったら、なんで今回の遠征に協力してるんだ!あの骸骨どもの為にギルド職員をデ・シームの街と領都に派遣しただろう。」

「その理由は、街の広場に貼り出したし、街の人々にも配布した。守備隊本部にも届いただろう?」

「領主が、この街を見捨てたってやつか。」

「そうだ。お前はそんな領主を支持するのか?」

「くっ、その話は本当なのか。」

「状況から見て、本当だろうな。領都からの情報は無いのか?」

「無い。」

「そうか。」


会話が途切れ、二人は睨み合う。

「トールデン、お前、このままで良いのか。」

「タリュジーン。このデ・ルーの街はル・ゴール帝国の街だ。かつてノールデア王国の街であったから、今もノールデア領に属している。だが、それは300年も前の話だ。そろそろ、ノールデア領がル・ゴール帝国直轄地になっても良いし、ノールデア領の名がデ・ルー領になっても良いと思わんか。」

「へっ、デ・ルー領は語呂が悪いな。てめぇの頭の中じゃあ、トールデン領になってるんだろ。」

「ふっ。」

「ちっ、とんだ悪党だぜ。」

テーブルをバン!と叩いてタリュジーンはトールデンの執務室から出て行く。


「さて、突然湧き上がったこの野望も、叶うかどうかはマスター次第だな。」

トールデンは部屋の窓から、綺麗な青空を見上げた。


■■■


デ・シームの街、酒場。


「よぉ、聞いたかよ、あの噂。」

「騎士団のか?」

「そう、それよ。なんでも骸骨の軍団が近付いているって話だぜ。」

「へ、騎士団が逃げ出すなんてあるかよ。骸骨の連中だってひねり潰すだろうさ。」

「いや、その話だがよ。」


2人の話に、隣の席の男が割り込んできた。

「俺、野菜を売りに来たんだが、そこで、馬用の飼料を大量に買ってる奴がいたんだよ。」

「馬の餌?」

「そうなんだ。200頭分くれって言っていてな。売り手の奴が、そんな大量にあるかっ、て言い返したら、じゃあ、あるだけ全部くれってさ。」

「おいおい、変な奴だな。」

「だろ。そいつ、買取所では見ない顔なんだよ。」

「おい、そんなに馬を持ってる奴なんて、」

「ああ、騎士団か?」

「いや、騎士団なら普通に買えるだろ。普通に買えない理由でもあるのか?」

「逃げ出すため、とか。」

「おいおい。マジかよ。」


そんな噂話が聞こえてくる。

それは、ノールデア領領都の酒場でも同じだった。


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