15話 デ・シームからの使者
3日が過ぎた。
俺は昼間は執政官官邸に居る。
昼間の骸骨軍団の過ごし方は、執政官官邸に骸骨騎士40名と隊長2名、魔法操兵8名と屍鼠1匹。
残りは騎士団本部だ。
騎士団本部の指揮系統はシグス大隊長の下にオズマとガナベルの中隊長がいる。
役職は変わったが、これまで通りだ。
執政官官邸の指揮系統は俺の下にルー伯爵を置いた。
立場上、騎士達への命令には慣れている。
もっとも、ここで戦闘行為が発生した場合は2人の隊長の指示に従ってもらう。
その執政官官邸に客が来た。
この街の西方に位置するノールデア領第二の都市デ・シームからの使者だ。
◇
デ・ルーの街の正門では、騎士団が居なくなった事で、いくつか問題が起きている。
なので、副執政官として街の行政に関わることになった商業ギルドのトールデンは数人の商業ギルド職員を正門に派遣している。
その職員に案内されて、デ・シームの街の使者が執政官官邸に来た。
俺とルー伯爵が出迎える。
「デ・シームの街、執政官シーム伯爵の命を受け参りました、ソニーと申します。」
「うむ。お前の言葉は我がマスターがお聞きくださる。シーム伯の言葉、伝えるがよい。」
「マスター、と申されますと?」
「こちらにおわす方が、我がマスターにして、我が骸骨都市の主であり、我々骸骨軍団の盟主であられる。」
「では、骸骨の魔物にこの街が乗っ取られたというのは、本当の事なのですね。」
「その通りだ。」
執政官官邸に入って、この応接間に入り、俺の姿を前にして、この言葉とは。
この男、目が見えていないのか。
「骸骨が館の扉を開けた時は驚きましたが、案内の者が普通に接していましたし、この部屋まで普通に案内されましたので、骸骨を使役していると思いましたが。」
「それはお前の勘違いだな。ソニー。」
「が、骸骨がしゃべった!?」
「ソニー、マスターをお待たせするな。用件を済ませよ。」
「あ、も、申し訳ございません、ルー伯爵。こちらがシーム伯よりの書状になります。」
ソニーが皮鞄から取り出した書状を、テーブル上に置き、こちらに差し出す。
ルー伯爵は爪で封を切り、中身を俺に渡す。
シーム伯からは、この街を逃げ出した人間の対処と、その者たちが話す「街が骸骨に攻め込まれ騎士団が討たれた」ことの真偽の確認についての問い合わせだ。
「ソニーよ。」
「は、はい。」
「このデ・ルーの街は騎士団が倒され、我々骸骨軍団の街となった。至急討伐隊を結成してこのデ・ルーの街を取り戻す必要がある。よいな。」
「と、討伐隊、ですか。」
「そうだ。きちんとシーム伯に伝えよ。」
「は、はい。伝えます。」
「マスター。」
「何だ。ルー伯爵。」
「シーム伯への伝言、言葉だけでは伝わらぬ物がございます。」
「ふむ。そうか。」
「我が妻は、あれでなかなかの裁縫上手でして。縫い物が得意でございます。」
「わかった。任せよう。」
「ありがとうございます。」
◇
腹を割かれ絶命したソニーを「吸魂」し「授魂」する。
腹の傷はルー伯爵夫人クラリスの手で綺麗に縫われた。
中身が零れ落ちることはないな。
俺の下僕となったソニーは、伝言を伝えにデ・シームの街に帰った。
ノールデア領領都の領主ノールデア侯爵への手紙も、そろそろ相手に着く頃だ。
■■■
デ・シームの街、執政官官邸。
シーム伯爵の執務室にはシーム伯爵の他に2人の男が居る。
一人は執事、もう一人は鎧姿だ。
彼らは帰還したソニーの報告を受けた。
「早かったな、ソニー。顔色が悪く目も充血しておるが、疲れておるのか?」
「いいえ、シーム伯爵。私ソニーはマスターの手に拠って生まれ変わったのです。身体の調子は極めて良好です。」
「そ、そうか。して、デ・ルーの街はどうであった?」
「はい。マスターからの伝言を述べさせていただきます。デ・ルーの街は騎士団が倒され、我々骸骨軍団の街となった。至急討伐隊を結成してこのデ・ルーの街を取り戻す必要がある。以上でございます。」
「なんと。では、本当にデ・ルーの街は魔物の手に落ちたのか。」
「その通りです。シーム伯爵。急ぎデ・シームの街の騎士団を召集し、デ・ルーの街を奪還すべきです。また、ノールデア領領都のノールデア侯爵にも救援の書状を送るべきと具申いたします。」
「う、うむ。そうであるな。」
その時、話を聞いていた男が声を掛けた。
白マントに鎧姿の男は、デ・シーム騎士団団長のタバーニだ。
「相手の数は分かるか?」
「約150人でございます。」
「ほう、詳しいな。」
「はい。マスターにお教えいただきました。」
「そのマスターとは何者だ。」
「マスターは、私のマスターにして、我々の骸骨都市の主であり、我々骸骨軍団の盟主であられます。」
「ソニー。お前、魔物堕ちしたのか。」
「魔物堕ちではありません。マスターの下僕という名誉を賜ったのです。」
「ふん!」
タバーニが剣を抜き、素早くソニーに斬り掛かる。
が、ソニーは一歩横に動き、それを躱した。
「シーム伯爵。マスターからの伝言、伝えましたよ。」
「黙れ!」
「では、失礼いたします。」
タバーニの剣を避けて部屋を出たソニーは館を去った。




