13話 デ・ルーの街
2日で140人の骸骨軍団を得たが、これは第一歩に過ぎない。
これからも軍団増強の日々を過ごす。
魔王討伐の使命を果たすには、10万体以上の骸骨軍団を作らねばならない。
いや、最終的には100万の軍団を目指そう。
その為には人間の協力が必要だ。
意外に思われるかもしれないが、人間の装備は質が良い。
俺の軍団内に鍛冶屋や魔道具製作者はいないし、屍人として操っても、俺の指示した物以上の物は作れない。
それに屍人に火は禁物だ。
なので、このデ・ルーの街の職人達には、ぜひこの街に居続けて欲しい。
そして、彼らが街で生きていくには食料がいる。
服や雑貨も必要だろう。
もちろん家族もいる。
俺にとってデ・ルーの人々は貴重な戦力といえるのだ。
だが、彼らを暴力で従わせるのは間違っている。
暴力での支配は彼らの反発を招き、いらぬ騒乱を生む。
俺の骸骨軍団は魔王討伐の為の軍団である。
人間相手の戦いは戦力となる魂の収集のためだ。
街の人間相手ではない。
俺はルー伯爵と確認しながら、このデ・ルーの街の掌握のために動いた。
◇
俺の骸骨たちは人間と会話ができない。
下僕の骸骨同士は思念での会話が可能だ。
但し、難しい話は無理だな。
人間と会話ができる骸骨は俺だけだ。
人間との交渉が必要な場面が増えれば、きちんと会話ができる屍人も必要になってくる。
屍人となった者は、発声器官に損傷が無ければ会話可能だ。
ラムデスは頭部損傷なので普通に話せる。
ルー伯爵夫妻も胸を突かれただけで、多少空気が漏れて小さな声だが問題ない。
オルガは俺がのどを裂いてしまったので、うめき声だけだ。
◇
骸骨騎士たちの持つ武技についても確認しておこう。
人間は個人スキルとして、武技、魔法、その二つを合わせた魔技を使える。
個人の素質にも拠るが、複数のスキルを持つのが普通だ。
だが、俺の骸骨騎士達は1人1スキルしか持てない。
これは種族的性質の様だな。
騎士団長のシグスは10以上のスキルを操る強者であったが、今の彼のスキルは魔技『退魔光照射円陣』だけだ。
これは魔物相手なら絶大な威力を持つが、人間相手にはただの光だ。
これは大きな戦力ダウンともいえる。
しかし、スキルは使用回数に拠ってその威力が増大する。
一芸を極めれば良い。
ただ、全員のスキルの把握とスキルに合った装備と配置の入れ替えは必要だろう。
弓のスキル持ちに剣と槍を持たせても、普通以上の働きは期待できないからな。
◇
デ・ルーの街についても確認しておこう。
ル・ゴール帝国ノールデア領の第三の都市。
街に登録されている定住者は6万4822人。
ノールデア領は帝国の南西に位置する半島上にあり、北方の魔族領からは一番離れている。
半島の先、領の南側には氷の海と冬の大地がある。
この極寒の地を渡る者はいない。
半島の付け根、ノールデア領の北東にはエステー山脈がある。
約2000メートル級の山々の連なりだ。
デ・ルーの街はこの山脈の麓にある。
街の北側の鉱石採掘場の跡地が、俺の誕生した地下墓地だ。
東側には現役の鉱石採掘場がある。
南側には畑と平原が広がる。
西側は牧草地や林があり、北西は湿地帯となっている。
この湿地帯の北には山脈から流れ出るシステー河が西へと流れる。
システー河を下れば、ノールデア領の第二の都市デ・シームの街がある。
システー河の北側は隣のフェンクル領だ。
エステー山脈の東側は隣のウーノンサ領だ。
デ・ルーの街は位置的にノールデア領の端だが、エステー山脈のおかげで、北も東も道は続いていない。
大きな街道はシステー河沿いにデ・シームの街に繋がっている。
南側には小さな農村に向かう道があるだけだ。
なるほど。
鉱石が出て、その加工が盛んで、農業も発展している。
だが、骸骨兵団の戦力増強には、地理的に不利だ。
いずれは出て行くだろうが、当面は居残るつもりだ。
おそらく20日と待たずに我々の討伐隊が出てくる。
外に出て行くに不利な環境は、外からの敵を迎え撃つには良い環境だ。
ルー伯爵には2通の救援依頼の手紙を送ってもらった。
1通はノールデア領領都に居る領主、ノールデア侯爵宛て。
もう1通は、表はル・ゴール帝国帝都の領土管理局宛て。中身は皇帝陛下宛てだ。
領地内の1地方都市の執政官であるルー伯爵が皇帝宛に手紙を出す方法だ。
これでも、皇帝本人に手紙が渡ることは無いだろうが、その周りの者にはノールデア領で異変が起きたことは伝わるだろう。
その文面には、骸骨たちの戦力は高く、救援には強い騎士団を望む、と書いている。
こちらの希望が通れば、我々にとって良い結果となるだろう。




