11話 執政官邸襲撃
街の北門は開かれていて、一人の男がランプを手にこちらを見ている。
おそらくラムデスに代わる扉番だろう。
タワーに先行させ、俺たちは隊列を組んで道を歩いて行く。
この暗闇の中、一見では騎士団と思うことだろう。
「お帰りなさいませ。」
少し不審げな声音で扉番の男が声を掛けてきた。
ランプを高く掲げて、こちらを照らそうとする。
そうか。人間ならば当然ランプが必要だ。
我々はランプを持っていないな。
タワーが一気に距離を詰めて、男を刺した。
「吸魂」
普通の村人の魂では戦士向きでは無いだろうと思ったが、このジョセフも元々守備隊にいた男だ。
戦闘経験はそれなりにあり、剣も使える。
ラムデスも守備隊にいた。
この守備隊という連中も吸魂対象にしても良いか。
だが、ラムデスとジョセフは武技を持たない。
「授魂」
俺はジョセフを屍人とした。
ラムデスと共に働かせるのも良いだろう。
ジョセフは地下墓地へ向かわせ、ラムデス達の作業を手伝わせる。
俺たちは北門から街に入った。
目指すは執政官官邸だ。
俺はここで、サイクス達6人の屍人騎士に「執政官官邸に集合」と思念を送った。
動ける状態なら来るだろう。
◇
魔光灯の明かりがあっても暗い街中を隊列を組んだ骸骨軍団が執政官官邸に向かう。
日が暮れた夜の闇とはいえ、街中には人々の姿がある。
だが、多くの人々はこの時間は家の中で食事中だ。
道路に居る人の数は多くない。
さらに、俺たちの行く手を阻もうとする人間は皆無だ。
叫び声を上げ、逃げ惑う人々が居るが、俺たちは彼らを無視して執政官官邸に向かった。
チュウ。
俺の肋骨の中で屍鼠が声をあげる。
街を漂う食事の匂いに反応したか。
お前の出番は後だ。
出番があれば、だが。
◇
執政官の館の門が見えた。
この時間では既に大門が閉ざされ、通用門に騎士団の衛兵2人が立っている。
こちらに気付いて騒いでいるが、問題ない。
数的不利を悟った衛兵2人は通用門内に入り、木扉を閉めた。
「敵だ!骸骨が来たぞ!」
「集まれ!門を守るんだ!」
「しかし、騎士団長は!?隊長は?」
「考えるのは守った後だ!」
ドッゴォォォ
「うわぁぁ。」
レッドの『火球』の魔法が木扉の表面に当たり、それを燃やし始めた。
骸骨騎士2人が剣を振り下ろし、燃えている木扉に打ち付ける。
バキッ
ドガッ
メキィ
バキィ
ドゴッ!
最後は蹴り破り、木扉を破壊する。
そのタイミングを狙って、騎士の剣が骸骨騎士に振り下ろされる。
ドッ!
木扉を蹴破った骸骨騎士が地に倒れた。
そんな彼を気にせず、骸骨騎士達が敷地内に侵入する。
俺は倒れた骸骨騎士を確認した。
地に伏した彼の名はクロノだ。
右足の大腿骨が断ち切られているが、これなら一晩でくっつくだろう。
そこにライファノンがやって来た。
こいつは『癒し』の魔法が使えたな。
ライファノンが両手で切断された足の骨の切り口を合わせる。
すると、その手から仄かな光が漏れてきた。
俺はクロノをライファノンに任せて敷地内に侵入した。
◇
シグス騎士団長の記憶によれば、この執政官の館は3階建てだ。
執政官の執務室と執政官一家の食堂は2階にある。
骸骨騎士を庭に10人、1階に20人、2階に残りと分けて探索に入る。
狙いは執政官のルー伯爵だ。
騎士団員と攻撃してきた者は殺す。
その他は放っておいて良し。
骸骨騎士たちは正面扉から執政官官邸内に侵入した。
◇
ルー伯爵と奥方は2階の食堂で食事中だったらしい。
護衛の騎士が連れ出そうとしたが、こちらが早かった。
「吸魂」
「授魂」
俺は二人を下僕の屍人にした。
ルー伯爵だけでいいのだが、それでは残された奥方も困るだろう。
「ルー伯爵。」
「はい、マスター。」
「只今よりこのデ・ルーの街は骸骨都市となった。街にお触れを出し、民に周知させよ。」
「畏まりました。マスター。」
「それと、帝都と領都にも知らせを送れ。こちらは我々骸骨軍団の討伐依頼だ。なるべく強い騎士を寄越してくれ、と頼むんだ。」
「畏まりました。マスター。」
「では、我々は街の正門に行き、残りの騎士団員を仕留めてくる。」
「ご武運を。マスター。」
俺は執政官官邸内の騎士団員8人分の魂を「吸魂」した。
執政官官邸正門前にサイクス達屍人騎士6人が合流していた。
彼らには執政官官邸内の騎士の装備を回収し地下墓地に向かう様に指示し、骸骨軍団は街の正門に向かった。
◇
執政官官邸から街の正門までは2つの広場を通り抜ける大通りを行くのが早い。
俺たちの姿を見て逃げ惑う人々を無視して、正門へと進む。
◇
正門業務は街に出入りする者たちの確認作業を主に行う。
街に住んでいない者からの通行税の徴収。
街から出ていく者の荷物確認。
手配書の廻っている犯罪者の発見。
執政官官邸への訪問客の案内。
雑多な業務は、門番たちの仕事だ。
騎士団員は周辺警戒と喧嘩などの荒事対応と執政官官邸への案内等を担当している。
その正門も20時には閉められる。
我々が正門に着いた時には、既に泊まりの門番以外の人間は居なかった。
震え上がる門番を残して、我々は騎士団本部を目指す。




