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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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10話 デ・ルー騎士団団長シグス

【デ・ルー騎士団団長シグス】


森の奥、北の墓所の入口へと続く道。

先程から風が強く吹きつけ、森の木々のザワザワとした音が大きく聞こえる。


魔物狩り。

私の騎士団の寮が襲われ、多数の死者が出てしまった。

何たる失態であるか。

私は昨夜の一報を聞いて以来、自責の念に捕われている。

思えば20年前。

北の地での魔物の大発生。その対応で輝かしい戦果を挙げた私はこの街に戻り騎士団長となった。


300年前の魔王戦争以後も魔物と妖物が蠢く北の地での戦闘経験を、故郷の若き騎士達に教え、広める事を私の責務としてきた。

その成果として、ここデ・ルーの街の騎士団は日々の職務を遂行するにあたって、これまで一人の犠牲者も出さずにきた。


これまでは。

昨夜の犠牲者達。

そして、今日。

私の信頼する6人の隊長達が消息不明とは。

なぜ、この様に犠牲者を出してしまったのか。

なにか、慢心したところが私にあったのだろうか。


森は闇が深くなった。

隊列の掲げるランプの明かりに照らされて、墓所の入口前に立つ3人の騎士の姿が見える。

見張りに残したガナベルの部下だ。


私は彼らの3m程手前で歩みを止めた。

後方の隊列も止まり、ガナベルが進み出る。


「タスカン、報告しろ。」

「はい。入口から出た者はおりません。」

「そうか。隊列に加われ。」

「はい。」

ガナベルの言葉を受けて3人がこちらに歩み寄ろうと一歩を踏み出した。

その時、オズマの左手が上がり、3人の動きを制止する。


「待て。タスカン、お前から血の匂いがする。それに、目が赤いな!」

オズマが剣を抜く。

「くそっ!」

ガナベルも遅れて剣を抜いた。


後方からも動揺が広がる。

そうだ、彼らが魔物堕ちしたという事は、既に我々は!

周囲の森のざわめきが、やけに大きく聞こえる。


私は腰の剣を抜き、それを両手で頭上に捧げ持った。


「光の大神ウルシュバリーよ、御身の光を以って魔を退けたまえ!魔技、退魔光照射円陣!」


私の捧げ持った剣から退魔の光が溢れ、私を中心とした立体魔法陣が描かれる。

そして、退魔の光が森の闇を打ち払い、隠れていた骸骨剣士たちの姿を露にする。

20年前、私はこの魔技の光をもって、多くの魔獣、妖獣を討ち滅ぼしたのだ。


しかし、滅せられるはずの骸骨剣士達は退魔の光に照らされながら、剣を手にこちらに迫り来る。


「何だと!?」


ガッ!ギンッ!

私の前では、タスカンと呼ばれた見張りの男がガナベルに襲い掛かっていた。

ガナベルは辛うじて剣を合わせているが、タスカンの後方から複数の骸骨剣士が迫る。

動きが早い。


私の後方からも剣戟の音と、団員たちの声が聞こえる。

だが、どうしたことだ。

この胸を占める気持ちは。


かつて、ル・ゴール帝国帝都で学んだ光魔法が。

かつて、魔獣の群れを退けた戦いで活躍した私の光の魔技が。

なぜ、この骸骨剣士どもに効かないのか。

私がこの魔技を行使し、光の魔法陣を(まと)い戦場を駆け抜ければ、立ち塞がる魔獣はことごとく滅せられ、周辺の魔獣は逃げ惑った。

なぜ、骸骨剣士どもは動いているのだ。

なぜだ?

なぜ?


後方の戦いの音が、徐々に迫ってくる。


ガナベルが倒れた。

オズマの姿は見えない。


骸骨剣士が迫る。

私の魔技が効かない。


私は、光を纏った剣を振るった。


しかし、後方から剣が突き込まれた。

左からも、右からも、正面からも。


なぜだ?

なぜ、こうなったのだ?

私の心を占めるもの。

これは、絶望なのか。

これは、恐怖なのか。


私の周囲が闇と静寂に包まれると、頭の中に声が届いた。


「吸魂」


■■■


ウィンガーに命じて『風起こし』の魔法で森の木々を揺らした。

枝葉の音にまぎれて、骸骨騎士達を森の中に潜ませる。


レッドとボルトは一番奥、街側に潜ませる。

騎士団の退路を断つ重要な役割だ。

二人の守備役にはサンシャとメイヤーを付けた。


ベニー、マルクトー、タワー、ドットの4人は入口部屋の中だ。

彼らの役目は見張り役3人の後方から飛び出ての戦闘だ。

そこには、団長達がいるだろうからな。


俺はディエゴと共に森の中だ。

ここから見張り役の3人が見える。


位置についてから、30分も経たずに騎士団が来た。

闇の中では明かりを灯す事で自分たちの位置を周囲に知られる人間は不便なものだ。


見張り役との会話が始まった。

「退魔光照射円陣!」

騎士団長の声が轟き、周囲が明るく照らされる。


ここだな。


俺は攻撃開始の思念を送った。

森の影に潜んでいた骸骨騎士達が一斉に立ち上がり、剣を振り上げ突撃する。



最初にテラーの『恐怖』の魔法が発動する。

これは相手の心に作用し、不安、動揺、萎縮、絶望、恐怖を与える。

その結果、相手は正常な判断力を失い、動作遅延、行動不能、または現場からの逃走などの動作を起こす。


騎士団の初動に遅れが発生したのは明らかだ。


レッドの『火球』が、ボルトの『電撃』が、道の中で3列縦隊を組んでいた騎士団員たちを襲う。

盾を構えることも、剣を抜くこともしない多くの団員たちが骸骨騎士の剣に貫かれる。


入口前の戦闘では初撃を放った3人の屍人騎士と入れ替わったベニー達骸骨騎士4人が二人の副団長との戦闘を始めていた。

2対1でも押し切れないとはさすが副団長だな。


ここは、ウィンガーに手伝ってもらおう。

ウィンガーの『風起こし』で二人の副団長の周囲につむじ風を起こす。

彼らの動きが止まった。

この隙を逃すベニー達ではないな。


それにしても、騎士団長が参戦しないのはなぜだ。

暗闇の中での戦闘は不利だと、自ら明かり役になったが、周りの状況が見えていないのか。


副団長を倒したベニー達が騎士団長を囲み、彼を倒した。



「吸魂」した魂は58人分。シグス騎士団長、オズマ副団長、ガナベル副団長と団員55人だ。

さらに58人分の装備も入手した。

これで今夜の第一目標だった騎士団本部での装備強奪は叶った訳だ。


では、次だ。

地下墓地に戻って58人分を授魂し、100人の軍団で街に攻め込む誘惑もあるが、時間が掛かる。


まだ、街には騎士団壊滅の報せは届いていない。

「吸魂」した記憶によれば執政官官邸の警備は一番隊の16人。しかも彼らには隊長がいない。


俺は道に残った死体と装備の片付けをラムデスと3人の屍人騎士に任せて、街の北門に向かった。



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