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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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103話 魔王、冥界から戻る

【 かつて魔王と呼ばれた男 】


冥界における探索行も終わった。

我が連れ出した魂達が坂道を昇ってゆく。


あとは我も現世へ戻ればよい。

だが。


坂道の下で我は立ち止まった。

我の魂の中、あの男の意識があの女の下へと行きたがっている。

あの男も我もかつては同じ一人の男であった。

あの男はあの女との再会を選び、失敗した。

我は復讐を選び、魔王となった。


前回は我の中に封じたが、今回は違う。

転生の際に混ざった一人の騎士の魂。

その騎士の意識はこちらでは覚醒しなかったが、その器にトーマスの無垢の魂が入り込んだ。

そして、あの男の意識がそこで育ったのだ。


多重人格とでもいうのか。

しかし、我の行動の邪魔をするのは問題だ。

封じるか、切り離すか。



極寒の氷の世界。

ここに彼女がいる。

数多の氷柱に封じられた人々を確認しながら、奥へ、下層へ、闇の中へと進んでいく。


とうとう見つけた。

やっと君を見つけたよ。

僕の愛しい女性(ひと)


彼女も僕を見た。

氷柱の中で唯一動かせるのは目だけだ。

その瞳孔が大きく開いた。


驚いているね。

なぜ来たのか?

僕は前回、坂の途中で振り返り、数多の幽鬼に喰いつかれてしまった。


君との約束を守れなかった。

その所為で、僕の魂は穢れ、現世で魔王と呼ばれる存在を生み出してしまった。

そして、多くの者を殺し、多くの者と敵対し、多くの者に襲われ、殺された。


だけどね、魂が転生する時に他人の魂が紛れ込んだんだ。

そのお陰で、僕は自分を取り戻し、君に再び会いに来ることができた。

君の顔が見たかった、それだけなんだ。


僕が約束を守れなかったばかりに、君も奴らに見つかってしまった。

だから、君は今、ここに捕われているんだね。

今度は、間違わない。


君と現世に戻る必要なんてないんだ。

僕は君とここにいる。

ずっとだ。



今だ!

我は全力で(あらが)った。

あの男の意識がここに留まることを選択した事で、魂が氷柱に取り込まれ始めた。

あの男の意識はそれを受け入れている。

だが、我は違う。

我は、否定する。

我は、抵抗する。

我の意識はここに留まらない。

現世に戻るのだ。


一つの魂に二つの意識。

だが、この魂にはもう一つの魂が混ざり込んでいる。

それを、あの男にくれてやるのだ。


氷柱の壁に手を突き、取り込まれないようにしている我の意識がある。

氷柱の中に入り込む、あの男の意識がある。

あの男の意識が我と離れ、一人の男の姿を得た。

その後姿が徐々に氷柱の中へと潜り込む。

我が感じる氷柱へと取り込まれる力が、だんだんと弱まり、薄れてきた。


その力が完全になくなった。

氷柱の中にはあの男とあの女がいた。

成功だ。

だが、喜んでいる場合ではない。

このような場所で大きな動きをしてしまえば、いくら隠蔽の力があっても監視者の注意を引くだろう。

ここにはもう用はない。



【 ル・ゴール帝国帝都 ディアン公爵邸 】


ピカッ、ゴロゴロゴロゴロ

一瞬の眩い光が窓から射し込み、上空から雷の音が轟く。

帝都の空は厚い雲に覆われ、ザァザァと雨が降っていた。


部屋の中は暗く、空気は冷たかった。

部屋中央の空間には黒い球状の穴があった。

そこから青白い幽体が這い出てきており、扉の先の廊下にも数多くの幽体がいた。


穴の(そば)には青年の男の上半身が宙に浮かんでいた。

4本腕。

両足はない。

服も着ていないが、その肉体を青黒い魔力の塊が煙のように、(もや)のように(まと)わりついている。


床には3人の女性の身体が横たわっている。

その身体は、黒い穴から伸びた幾本もの骸骨の腕に捕われている。

彼女達の目は閉じていて意識もないようだ。


男の目が開き、紅い光が輝く。

同時に3人の女の目も開き、同じ様に紅い光が輝いた。

彼女達3人の身体が骸骨の腕に拠って床を離れ、宙に浮き上がる。


ガシャーン

大窓が内側から破壊され、外に破片が飛び散った。

雨を含んだ外気が室内に入り込んでくる。


魔王と3人の魔人の女達は冥界に通じる黒い穴と共に、壊れた大窓からバルコニーを通り過ぎ、雨の中へと出ていく。

そして、消えた。


彼らの姿は、王城の破壊された大正門前に現れた。

そして城内へと移動を始める。


その周辺には、多くの屍人が徘徊していた。


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