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クレンティの町にあるレンジャーギルドの場所を、人に聞いて回った。一番有力な情報は町の中央の辺りの案内板だ。
宿よりもこっちが先でいい。時差ボケ気味だからだ。
レンジャーギルドの扉を押し開き、入ると、すぐの所にカウンターが。
「いらっしゃいませ。任務ですか、報告ですか、それとも登録ですか?」
と澄んだ声で聞いたのは、若い女性。
彼女に言うべき言葉は何か。
(この世界の身体を持っているから登録しているかもしれない。どう言えばいい?)
『未登録のはずにゃ』
翼のある黒猫の声が高性能イヤホンのように届く。ほかの者が認知できない存在。謎ばかりだ。
「登録です。レンって言います」
「ではこちらに手を」
水晶らしきものが半球状にカウンターに組み込まれている。そこに手を乗せると、
「レン様、と。え、魔力38万……⁉」
「何か問題でも?」
「あ、いえ。ではご登録は済みましたので、任務でしたらあちらをご覧ください」
あちらというのは依頼用の水晶ボードに違いない。それが壁に設置されていて、その中のどれを受けるかを触れて決める。そうだ思い出した。そうやって決める。
レンジャーの仕事は様々だ。何でも屋と言ってもいい。
ただ、危険な生物との闘いもよくあって、
『レンなら大丈夫にゃ』
ということだが、どうだろうな。
(闇の港に関する依頼は……なさそうだな)
さて、一つこなしてから宿に行くか。
魔猪駆除をしてほしいという畑からの依頼がある。ひとまずは「この依頼を受けますか?」に対する「はい」の部分に指を。タッチしてから、木の板を手に持ったまま、その畑へ。
畑は昼間でも食い荒らされるらしい、とのことで、しばらく待ってみる。
そして、
「あれだ」
と、一匹目を発見。
木の接続魔環をはめている右手の人差し指に集中。すると板が向かい、伸び、曲がり、縛った。一頭目、難なく確保。
ただ、二頭以上による被害かもしれない。
しばらく待つともう一頭現れた。そちらも確保。
それから四時間ほどは現れなかった。
ただ、そんなに待ったから、もう、辺りが暗くなり始めている。
(確保した魔猪については血抜きして食事処にでも提供するか)
もういいだろう、と、依頼者に、動かなくなった二頭を示すと、レンジャーギルドへと帰った。
カウンターの半球水晶に手をやると、受けた依頼の終了状況だということが受付女性の前へと現れた。そこの「確認完了」がタッチされる。と、女性は封筒をこちらに差し出した。
それが給料だ。受け取る。
1万ロル。その封筒の中身を確認してからも、魔猪二頭をつれて歩いた。
(もう今日はすぐ寝るぞ!)
思いながら、宿へ到着。
女将さんに魔猪二頭を差し出し、
「料理にでも」
と言うと、部屋へと案内された。
その時ふと、思い出した。
(そうだ、この世界のこと思い出してきたぞ段々。先にここにいた。それからあっちに行ったんだ。俺はそれができる。ただ、急いで『見つけましたよ』だとか言われた。『やっと』って。何かあったんだ、それで闇の港……。そういえば、あいつは今どこでどうしてるんだ)
一泊したあと、チェックアウトし、すぐに旅立った。
クレンティの町から、サウヴスの町へ。
道中、魔骨人が出没した。やられる前にこちらから木の板で挟み込む。
すぐに倒せた。魔環をしていたようで、残ったそれを入手。火の接続魔環だった。
この指環同士は繋がる。
(剣の魔環でもあれば、木剣も火の剣も瞬時に扱える)
旅人に化けた擬態液にも、そのあと遭遇した。話しかけたら飲み込もうとしてくるんだからそりゃあもう、
「うおっとぉ!」
と驚いたが、板で締め上げるとすぐに倒せた。すると、ボトッと落ちた音がして、
(机の魔環か)
それを手に入れた。
(木の机がほしい人がいれば使えるな。火の机は今みたいな魔のモノ相手に使えばいい)
サウヴスの町に到着すると、まずは坂を上がっていった。ずっとずうっと上がった所に、魔女が住んでいそうな家がある。
(実際そんな感じなんだけど)
と、今はもう思い出している。
「ケイティ、いるか?」
ノックをせずに入ったのを失礼だとは思いながら。
「あ、あ、あなたレン! 今までどこに」
ダイニングテーブルで、パンを口にしようとしてやめた女がそう言った。
彼女がケイティ。
というか自分はやっぱりレンだった。この世界でも。
「それが、かなりの機械文明世界にいたんだけど、何かの弾みで忘れて施設にいた」
「忘れて?」
「まさか忘れてしまうとは思わなかったよ俺も」
「道理で音沙汰ないと思ったら」
「んで、上で何か起こってるらしい。それでお呼ばれして今ここ。お前もいると助かるんだけど。せめて接続魔環だけでも」
「そういうことなら私も行くわ。十分やることはやったし」
「闇の港ってどこか忘れたんだけど」
「ウィンビーロの町。風車の素敵な町の、その、えーっと」
「えーっと? って、まさか忘れた?」
こちらが問うと、
「案内役はいないワケ?」
すると翼の生えた黒い猫が、
『ここだにゃ。ボクも場所がどこかまでは知らないにゃ』
「あ、そう。そんなに余裕がないってことね。それほどまでに」
ケイティにも見えるし聞こえる。闇の港やあの暗闇をケイティも知っているからだ。通過したからだ。
もう一度そこへ行く。
「魔環はあるか? たくさん。必要だ」
「ここに、これだけある。分けるわね」
互いに見せ合った。
ケイティが持っているのは、治、水、風、玉、鉄、土、光の接続魔環。
こちらが持っているのは、木、火、机の接続魔環。
ケイティの右手の人差し指には、とりあえず鉄のみ。
さらに、ケイティの左手の人差し指に、治、水、土の三つ。
(俺はこれでいい)
こちらは、左手の人差し指に、玉、光、風の順にはめた。
「で、どこへ行けばいいんだ? 思い出せない?」
「確か、墓地の下よ」
すぐに向かった。
道中、巨大な魔樹人が襲いかかってきた。
「うぉあ!」
枝による攻撃を避けながら、火を抱かせ、木で縛る。と、難なく倒せた。ケイティの加勢の仕方は同じく縛る方法。鉄の板を操って同じように。
魔樹人が泡のように消えた。
すると、その消えた場所に指環が出現。ポトッと地に落ちた。あって損はないから探した。
「あった、これがそうだろ」
葉の接続魔環だった。
この世界は、古代魔術師の血筋と彼らが作ったとされる接続魔環によって発展した世界。魔のモノも存在する。都合がいいことばかりじゃない。
「こいつを飲み込んでたのか、やたら狂暴だったけど」
そういうことらしいが、さて、この新しい指環をどうするか。
「それは私が」
ケイティの右手の人差し指、鉄だけだった所に、葉の接続魔環がはまる。
そんなことがありながら、旅は続いた。




