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クロエ  作者: KAE


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59/63

〈59〉

マックスはマントの中、着ている服の胸のポケットから小箱を取り出して小箱の中からシンプルなしかし一目見て上質だとわかるダイヤモンドの指輪を取り出した。


クロエの左手を取りクロエの薬指に指輪を嵌めながら「クロエ、愛している。急いで式を挙げよう。すぐに結婚しよう」と微笑みながらクロエに告げた。


クロエも頬を染め、微笑みながら「嬉しい。マックスの家族にも知らせなくては…」とマックスに告げた。


「ああ!勿論だとも!」


そこからのマックスの行動は早かった。


すぐに、医師と相談して式の日取りを決めた。


そしてマックスは王都に向けて数通手紙を書いた。


式を挙げる教会の手配をした。


衣装室を呼んだ。


これらのことを1日で済ませた。


クロエも体調を見ながら、知らせるべきところに結婚することを知らせた。


そして2ヶ月後、体調が安定したクロエとマックスは親しい人だけを招待した内輪だけの結婚式を挙げた。


生まれてくる赤子のためにさらに大きくなった胸と少し膨らみ始めたお腹に負担がかからないようにデザインされたウエディングドレスは胸の辺りの切り替えの緑と金色のリボンが可愛らしいエンパイアドレスでスカート部分に施されたレースの飾りが上品さを演出していた。


マックスも同じ素材の礼服姿で、クロエとマックスの髪は旅の記念に買ったお揃いの緑と金の組紐で結ばれていた。


王都からレオナードとアンジェラ、そしてレオナードの婚約者のシャルロット王女。「仲間の門出を祝うのは当たり前じゃないか!」とハドソン侯爵夫妻にアイルナ伯爵夫妻とシルビア、それにナグラダ伯爵夫妻、ガイナ伯爵夫妻も参列してくれた。


祭壇の前で、ふたりは愛を誓い合った。

「これから、もっと幸せになろう」


「ええ、もっと…」

そう言って、誓いの口づけを交わした。


「兄上、義姉上!おめでとうございます!いつかこうなればいいなって思ってました!」レオナードは満面の笑みで祝ってくれた。


アンジェラは「おめでとう。ふたりの晴れ姿を見届けることができるだなんて、なんて幸せなのでしょう」と大粒の涙を流しながら笑っていた。


レオナードの婚約者のシャルロット王女は「誠におめでとうございます。父の名代で参りました。お義姉様にお目にかかれるのを楽しみにしていましたの。ふふ、父がこの場に来られないことを悔しがっておりました。〈王都に戻ってきた際には是非親子で顔を見せにきて欲しい〉と申しておりました」

笑顔で祝いの言葉をクロエ達に告げるシャルロットの横にはレオナードが並び、仲睦まじい姿を見せてくれていた。


諸侯達は、マックスの背中をバンバン叩きながら「いやぁ!おめでとう!いつからそんな仲だったんだ?仕事に私情を感じさせないなんてたいしたもんだよ…!これからもよろしく頼むよー!」とおおよそ貴族らしくない、気を許した仲間に対しての態度で明るく祝ってくれた。


そしてもちろん、ベックやジルやリンダ、バート、アンナなど辺境の地で共に生きてきた辺境伯軍もふたりの門出を祝福してくれた。

クロエやマックスと鍛錬を共にする彼等には遠慮がない。

「マックス殿とクロエ様の子どもだからきっと暴れん坊に育つでしょう!それが今から楽しみです。なに、鍛錬は私達にお任せください!」とふたりの未来に思いを馳せた言葉を送ってくれていた。


冬なのに暖かい陽射しが降り注ぐ中

クロエとマックスは皆の笑顔と祝いの言葉に囲まれていた。


………………………………………


正式に辺境伯になったマックスは精力的に働いた。

諸侯達と連携して街道の整備、税関事務所の建築、果樹園の観光化と安全対策…仕事は多岐に渡った。


それは数年後、ダイナモ王国での交易路で一番成功した交易路としてエリック国王の功績のひとつに挙げられるまでに発展することになる。


そしてマックスは甲斐甲斐しく身重の妻の面倒も見た。

「本当に大丈夫なのに…」と渋るクロエに「いいから、いいから」と嬉々としてクロエの世話をするマックスを周りの者は生暖かい目で見守った。


クロエも家政だけに留まらず、マックスと共に2つの領地経営にも携わった。


ふたりは実に充実した日々を送っていた。


そしてブルーベリーの実がなる頃、アルシェッタ辺境伯家に新しい家族がやってきた。


明け方、産気づいたクロエの少し呻く声で目覚めたマックスは、慌てて、ただオロオロしているだけだったが、ベックの采配で駆けつけた医師と看護師が見守る中、クロエは次の日の早朝、元気な男の子を生んだ。


誰もが「マックス殿のミニチュア版だ!」というほど金色の髪に金色の瞳、顔立ちもマックスに瓜二つの元気な男の子だった。

生まれたばかりの我が子を抱いたマックスは「クロエ、ありがとう。可愛い…クロエと俺の子だ…ありがとう」と人目も憚らずに泣いていた。


クロエはそんな生まれたばかりの我が子を抱いたマックスを聖母のような笑顔で見つめていた。

男の子はリヒトと名付けられた。


名付けたマックスは「きっとあの日にできたんだよ。あのキラキラひかる早朝の湖をふたりで眺めた日。俺はあの日が忘れられない。だからこの子の名前はリヒトだ」と笑った。


そんなマックスを見て「そんな…あからさまな…恥ずかしいわね…でも、いい名前ね」と頬を染めるクロエに


マックスは「ははは!今日も俺のクロエは可愛いな!…リヒトも可愛い!」とクロエとリヒトを優しく抱きしめた。


……………


寝室のベッドの上で、クロエは愛おしそうにリヒトを抱いてあやしていた。

その傍らにはマックスがクロエの肩を抱いて、クロエと共にリヒトを愛おしそうに見つめていた。

マックスがそっと指を近づけるとリヒトは力強くギュッと握ってきた。


「ふふ、元気だな…大きくなれよ」


「ふふ、リヒトもブルーベリーの季節にやってきたのね…あなたの父さまもブルーベリーの季節に母さまのところに来てくれたのよ…」


「リヒト、父さまは母さまに会えて幸せだ…リヒトにも会えたしな…ブルーベリーの季節にブルーベリーの木の下で母さまに拾ってもらったんだ…きっとあのブルーベリーの木の下には幸せが落ちているんだな…今度一緒にリヒトの幸せを探しに行こうな…」


母の腕の中でマックスの指を握りながら眠る愛しい息子にふたりは優しい声音で話しかけていた。






これで、本編は完結とさせていただきます。

次回からはその後のふたりを書きたいと思います。


もうしばらくお付き合いください。

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