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クロエ  作者: KAE


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54/63

〈54〉

「クロエ様、いらっしゃいませ。お待ちしていましたわ」


「アンジェラ様ご機嫌よう。お招きいただきありがとう存じます」


ランドルク伯爵夫妻が王宮に拘留されたのをきっかけにアンジェラはドミトス公爵家に帰ってきていた。

頬にも赤みがさし、健康を取り戻したようだった。


そして今日、アンジェラからお茶会に誘われてクロエはドミトス公爵家を訪ねていた。

アンジェラの後ろにはレオナードと家令のエリオットが笑顔で控えていた。


案内されたサロンは窓が開け放たれていて、初夏を感じさせる風が吹き込んでいた。


クロエとアンジェラ、レオナードで香り高いお茶とアンジェラお勧めの菓子をいただきながら、3人は会話を楽しんでいた。


そこへエリオットがやってきて「失礼いたします。奥様、ヘンドリック伯爵夫人と令嬢がいらしております。奥様とお約束があったと仰っておりますが…いかがいたしましょう?」


アンジェラは困った顔をして「そのことはお断りのお返事をしたのだけど…はぁ…またなのね。いいわ、私からお帰りいただくように言いましょう」

とエリオットにふたりを玄関ホールで待たせるように伝えてからクロエに「クロエ様、少し席を外します。ごめんなさいね」と断りを入れた。


「お忙しいようでしたら、私はお暇いたしますので、お気になさらずに…」


「とんでもない。来訪を断ったのに構わずにくる方が悪いのです。それにクロエ様を帰してしまったらマクシミリアン様ががっかりするわ…だからここにいらして…すぐに済みますから」そう言ってアンジェラはサロンを出て行った。


「最近多いんですよ、突撃が…ふふ。兄上に相手にされないから母上から攻略しようとやってくるんです」とレオナードはおかしそうにクロエに教えてくれた。


「まぁ!それはアンジェラ様も大変ですわね…」


クロエはレオナードと暫く剣術鍛錬の話をしていたが、なかなかアンジェラが戻ってこないので少し心配になった。

レオナードも「母上…大丈夫かなぁ?」と心配そうだ。

「ヘンドリック伯爵夫人でしたか?…結構押しが強い方だったような気がします」とクロエは過去のお茶会を思い出していた。


「少し様子を見に行ってきます」とレオナードが席を立ったので「私もご一緒して良いですか?」とクロエが言い、ふたりで様子を見に行くことにした。


玄関ホールの手前まで来たところでアンジェラの声が聞こえた「お話はよくわかりました。しかし、マクシミリアンご当主のことはご本人がお決めになりますので、お力にはなれません。今日はこのままお帰りく…」


「義母上?」


「あ、マクシミリアン様」


「まぁ!まぁ!ドミトス公爵様!」


「…義母上、これは…何が起きているのですか?」


どうやら、アンジェラとヘンドリック伯爵夫人が話しているところにマックスが帰ってきたようだ。

ヘンドリック伯爵夫人の言葉を無視してアンジェラに話しかけるマックスの声が聞こえた。


「こちらのヘンドリック伯爵夫人からお嬢様と来訪したいとご連絡をいただいたの、でも今日は…その先約があってお断りしたのだけど、なぜかヘンドリック伯爵夫人とお嬢様がいらして、今、帰っていただくようお願いしていたところなの…」とアンジェラが困ったようにマックスに訴えていた。


「なるほど…」

「ヘンドリック夫人。もしかして義母からの手紙はお手元に届きませんでしたか?」


「あ、いえ…ちゃんといただきました。でも、少しだけでもお話を聞いていただきたくて…」


「そうでしたか。そのお話というのは以前ヘンドリック伯爵が私に送っていただいた手紙の内容とは違うものですか?」


「あ…いえ」


「…では、もう一度直接お返事しなければなりませんか?ご令嬢の前で…」丁寧な口調だが、かなり冷たく聞こえる。


「あ、それには及びません。今日はこれで失礼致します」


「エリオット、お帰りだそうだ」


「かしこまりました。お見送り致します」


そのままヘンドリック夫人と令嬢はエリオットに誘導されて出て行ったようだった。


出番を無くしたクロエとレオナードは顔を見合わせて笑っていると

「おや?立ち聞きかい?」と楽しそうなマックスの声が後ろからした。


クロエは振り返り「ふふ、出番がなかっただけだよ…マックスお帰り。お邪魔してます」


「ようこそクロエ。待たせたね…」


「いや、アンジェラ様とレオ様と楽しいお茶会をしていた」


「お帰りなさい兄上。凄くいいタイミングでしたよ!」


「ふふ、ただいま。じゃあ、お茶会の続きをしよう!」


4人はサロンに戻って行った。


4人で少し談笑したあと、マックスが「ランドルク伯爵夫妻のことなんだけど、運営していたギルドと高利貸しは解体になったらしい。ランドルク伯爵家はジェームスとロベリアの刑が確定したら相応の処分になるだろう。ハング伯爵は男爵に降爵が決定した。本来なら処刑も免れないところだが、こちらが王族とわからないように変装していたのと、罪を認め反省しているのが顕著にわかるのでかなり温情がかけられた。領地は3分の2没収になった」


アンジェラが「…そう…とても迷惑をかけてしまったわ…」と目を伏せて呟いた。


「母上…」レオナードが心配そうにアンジェラを見る。

「義母上は被害者です。彼らはあまりにも自分本位であれは親が娘にする扱いではない。そんな顔しないでください。レオが心配してますよ」


「…そうね!ありがとう。今日はせっかくクロエ様がいてくださるのだから楽しくいかなきゃね!」


「そうですよ!母上!」


「ふふ、ではアンジェラ様。先ほどの話の続きを聞かせてください」とクロエがアンジェラに話しかけた。


マックスが「話の続き?」と聞いたので


「ええ!アンジェラ様は実はお菓子を作るのがお好きだったそうなの、だから簡単なレシピを教えてもらおうとしていたんだけど、招かざる客がきて中断していたの」


「へぇ、義母上にそんな趣味が…気になりますね」


「じゃあ、今度みんなで作りましょうか?」


「いいですね!いつにしましょう?」


夕食の支度ができた。とエリオットが呼びにくるまでサロンでは4人の楽しそうな会話が続いていた。


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