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クロエ  作者: KAE


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50/63

〈50〉

流血シーンがあります。

ご注意ください。

「ま、待て!わかった!…もう逃げないから!」

クロエは剣を持ったまま男に近づいていく、丸腰の男は岩に追い詰められる。


クロエが持つ剣の先が男の喉元に迫った。


「ぐっ…」


「いくらだ?」


「え?」


「いくらで雇われた?と聞いている」


男は一瞬戸惑った。想定していた質問とは違ったから…。

「え…っと」


「嘘をつくとためにならないぞ」感情のない言葉で言われて喉に剣先が当たったのがわかった。背中に嫌な汗が流れる。


「さ…300!」


「300…なんだ?ペンスか?リラか?ダルクか?」


「300ダルクだ!」


「ほぉー。その報酬は誰から貰った?」


想定通りの質問がきたと思った男は「ロベリア・ランドルク伯爵夫人だ!」と答えた。


「もう少しマシな嘘をつけ」とクロエは冷静に告げて剣を振り下ろした。


シヤッ…という空を切る音がして男が着ているシャツが綺麗に裂け、ジワリと血が滲んできた。


「ヒッ!」


クロエはわざと隙を作り男の逃げ道を作った。

男は逃げ出すためにクロエに背中を向けた途端、シャッと空を切る音がして背中に熱が走ったそして生暖かいものが背中を伝う。


「うわっ」男はのけぞり膝をついた。

クロエは男の後ろから声をかける「吐け…」


男はクロエの殺気に体が動かなくなりそうだった。しかし逃げなければ殺されると思った男は必死に足掻く。

「ヒッ!ま、待ってくれー!本当にロベリア・ランドルクからの依頼なんだよ!」と叫ぶ。


「お前は私の質問を聞いていなかったのか?〈誰から報酬を貰ったんだ?〉と聞いたんだ」


「…だ、だから、ロベリア・ラン…ぎゃ!」

男が言い終わる前にクロエの剣が空を切る。

男の服に裂け目が増えた。


「吐け。…お前はそう言って鞭打つのが好きだそうだな…生憎私は鞭は持ち合わせていない…剣で我慢してくれ…。それで誰から報酬を貰ったんだ?」


「ロ、ロベリア・ラン…ぎゃあ!」

「嘘をつくとためにならないと忠告したが?…吐け」

シャッ!「ぎゃあ!」


「吐け」 シャッ!

「わぁっ!ぐっ!」


「吐け」 シャッ!

「ぐっわぁ!」


男が着ている黒いシャツの背中はべっとりと濡れていた。背中が熱くて、力が抜けていく。

「はぁはぁはぁ…もう…勘弁してくれ…」


「おかしいな…お前がしたことをお前にしてやっているだけなのに…人が苦しむ姿を見るのは楽しいんだろう?今はどんな気分だ?立場が変わっても楽しいか?」


「ヒッ」表情のないクロエを見て男は声にならない声をあげた。


「クロエ…」クロエの後ろからマックスの声が聞こえた。


クロエはマックスの方に振り返り「マックス…止めるなよ」と言う。


「止めないさ…俺も気を失うまでやめてもらえなかったからな…」そう言ってマックスは男の方を見る。


「早く本当の事を吐かないとお前の背中はどうなるんだろうな…」と冷たくニヤリと笑った。


男はマックスの笑顔を見て震えるくらいの悪寒が走るのを感じた。(本当に殺される…)


クロエが冷たく「誰から報酬を貰ったんだ?これ以上の嘘は許さない。ロベリア・ランドルクにそんな資金がないのはわかっているんだ」


「わ、わかった。言う…言うから」


「誰からだ?」


「ジェームス・ランドルク…だ」そう言った男は脱力して地面に突っ伏した。


「…そうか。残念だがこれでやめなければいけないようだ」とクロエは男に背中を向けた。


マックスは後を追ってきたバートに「縄を!」と告げバートが駆け寄ってきた。


後手に縄をかけられた男をバートは「これくらいで済んでよかったな…」と言いながら引き起こした。


男は受けた傷や恐怖から放心状態だった。

男は足元も覚束なくフラフラしながらバートに引き摺られるように王都騎士団がいる方に歩いて行った。


マックスがクロエを抱き抱える。

「クロエ…」


クロエはマックスを抱き返す事なく「引いただろう?」と俯き加減に言った。


「なんで?」


「残酷な女だって…」


「ふふ、そんな事ないさ。寧ろ〈俺って愛されてる〉って思ったさ。嬉しいねこんなにクロエに愛されていて…」


「…バカ」と言いながらクロエはマックスの胸に額をつけた。


マックスはクロエの乱れた髪を撫でながら「今日も俺のクロエは可愛いな…ふふ」と笑った。


「何を言っているんだか…」クロエはマックスの言葉を聞いてホッとしたように呟いた。


「さぁ、始末をつけに帰ろう」


「…そうだな…」と言うクロエをマックスがじっと見る。


「その格好ではまずいな…」と言われてクロエは自分の格好を顧みた。


「!!」ドレスのスカートは裂けて腰からただの布がぶら下がっている。スカートの裾は泥だらけ。少し歩くだけでクロエの足が全部見えてしまう。他にも袖口は切れているし、フリルは剥がれて、ボロボロだった。


しかし、そう言うマックスも着ているシャッはいろんなところが裂けていて返り血までついていた。


「ふっ…ふふ、ふふふふ」クロエはおかしくなって笑い出した。


マックスもつられて笑い出す。


「ふふふふ、はははは!」

「はははは!あはははは!」


雑木林の中でふたりは暫く声をあげて笑っていた。


ひとしきり笑ったあと、ひとまずアルシェッタ邸に帰る事にした。


「さぁ、クロエ、帰ろう!」


「ええ!帰りましょう!」


ふたりは手を繋ぎ雑木林を馬車が停まっている方へ歩いて行った。


……………………………………………………


その頃、王宮のエリック王太子にハドソン侯爵から書簡が届いた。


書簡に目を通したエリックは国王の元へ向かった。


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