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クロエ  作者: KAE


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49/63

〈49〉

馬車を取り囲んだ男達がかなり包囲網を狭め馬車に斬りかかる体制を整えた時、突然馬車の両方の扉が飛び出してきて一瞬怯んだ…すぐに体制を整えようとしたが、男達の間合いが馬車に近づきすぎて剣を大きく動かせなかった。


その様子を頭の黒髪短髪の男は見ていた。

仲間の悲鳴が聞こえた。

いきなりの状況変化に追いついていけなかった。


目の前で仲間が馬車の扉に押し倒され、扉の向こうで悲鳴をあげている。

「うわぁ…ぎゃぁ!…ぐっ」

扉が動いた後には仲間が気絶して倒れていた。そばには鉄棒が転がっていて、仲間が持っていたはずの剣がなかった。


「ぐわぁー!」馬車の向こうからも悲鳴が聞こえる。


その時初めて(おかしい)と思った。

馬車には公爵と令嬢しか乗っていなかったはずだ。

…ということは、動いている扉の向こうで仲間を攻撃しているのは公爵と令嬢。ということになる


(どういうことだ?)その男は腰に挿した剣に手をかけて様子を観察した。


次々に仲間が倒されていく、しかも急所を外して斬られている。


扉の向こうでコーラルピンクの布が踊った。

扉がまた動き反転した。姿を現したのはコーラルピンクのドレスを着て扉を盾の代わりに持ち剣を振るう栗色の髪の女性だった。


そして馬車の向こうで同じように扉を盾に剣を振るっている金髪の男が見えた。


「!!…奴は…」驚いた。今日のターゲットがいた。

3年前と同じ男とは思えないほど変わっていた。


ふたりが振るう剣は、貴族達が行う剣舞のような剣捌きではなく、荒々しい命をかけて振るう戦士のような剣捌きだった。


(まずい…)と思った男は右手を上げた。

男の後ろに弓を持つ4人の射手が前に出てきた。


「ターゲットはふたりだ」とひとこと射手に告げ「放て」と合図を送った。


一斉に放たれた矢がクロエとマックスに向かって飛んでいく


殺気を感じて振り返ったマックスの目に弓をつがえる者が入ってきた。

間違いなくこちらを狙っている。

咄嗟にクロエを見たが、目の前の相手に集中している。


「クロエっ!!」マックスは叫びクロエの元に急いだ。


クロエもマックスの叫びにこちらに矢を放つ者達に気づいた。が既に矢は放たれていた。


「間に合わない!」とクロエは思いながら盾で矢を防ごうとした、がその前にマックスの盾がクロエを矢から守った。


その隙をついた別の男がマックスの脇から斬り込んでくるのが見え、クロエは体勢を変えて斬り込んでくる男を返り討ちにした


息つく暇もなく放たれた矢が飛んでくる。

クロエとマックスは目で合図して、扉の盾で防御しながら射手の方に全速力で走った。扉の盾に矢が刺さる。構わず射手に向かって走る。

射手が矢をつがえる間にクロエとマックスは射手のいる場所に辿り着き、射手の4人を斬り捨てた。

射手は次々に倒され。腕を斬られて地面に臥し呻いている。


まだ動ける者が集団でクロエとマックスめがけて斬りつけてきた。


クロエとマックスはふたりで隙を作らないように迎え討ち次々と斬り捨てていった。


肩で息をするクロエとマックスの前に立っている者は黒髪短髪の男ひとりになった。


男は剣を抜き間合いを作ろうと後退る。クロエとマックスはそれを許さない。


「久しぶりだな…また会えるとは…」とマックスが低い声で男に言った。


男は無言でクロエとマックスの隙を探している。


男は後退るふりをしてマックスに斬り込んできた。しかし呆気なくマックスに剣を弾かれ男の手から剣が飛んでいった。


男の鼻先にマックスの剣先が迫り、男は硬直した。


「クロエ!狼煙を!」と剣先は男の鼻先に突きつけたまま後ろのクロエに合図を出すのを促した。


クロエが狼煙をあげる間マックスと黒髪の男の睨み合いが続く。


クロエは倒れている男達に縄をかけるためにマックスから離れた。


「フッ。随分と変わったじゃねぇか…」


「おかげさまでね」


「あの時はヒイヒイ泣いていたのによ…」


「そうだったかもな…」


「お前を取り逃したのは不覚だったな…」


「そんな言葉をいただくなんて光栄だね」


「フッフッ…背中の傷は痛むかい?」


「残念ながら、傷まない」


「しぶとい奴だな…あのお貴族のお坊ちゃんが…図体だけデカくてよ…変わったな…どうだい?俺と手合わせしてみないかい?」


「遠慮しとくよ」


「そりゃ残念だ…」と男は言って足元に転がっている矢を取ってマックスに反撃しようと素早くしゃがんで矢に手を伸ばした…が

「ぐあっ!」短剣が飛んできて男の伸ばした手に刺さり悲鳴をあげた。


短剣が飛んできた先には栗色の髪の女が低い姿勢で男を睨んでいた。


マックスは「お前は変わらないようだな…」と呆れ混じりに言いながら男を軽蔑の眼差しで見下ろした。


遠くから馬が走る地響きが聞こえてきた。


馬群はこちらに向かっている。程なくしてバートを先頭に王都騎士団が駆けつけてきた。


「マックス殿!クロエ様!大丈夫ですか?」バートが馬上から叫んだ。


「ああ!大丈夫だ!こいつらの捕縛を頼む!」マックスも大声でバートに伝える。


「かしこまりました!」とマックスに大声で告げた後


「よろしくお願いします!」と王都騎士団の騎士達に告げていた。


マックスもクロエもそちらに気を取られている隙を狙って男は逃げ出した。全速力で木々の中に向かって走っていく


いち早く男の逃走に気づいたクロエは「待てっ!!」と男を追いかけた。


後ろからクロエの名を叫ぶマックスの声が聞こえるが構っていられない。


ドレスがまとわりついて早く走れない。

クロエは走りながら手に持った剣でドレスの裾を縦に切った。

走るクロエの後ろにコーラルピンクの布がはためく。

闇雲に走った男は大きな岩の前で行き場を失った。

クロエはすぐに追いついた。


「お前だけは逃さない」感情のない声音で言うクロエに男は恐怖を感じた。




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