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クロエ  作者: KAE


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48/63

〈48〉

薄暗い寝室の中クロエとマックスは寄り添い微睡んでいた。


マックスがクロエを抱き込み、クロエはマックスに抱きつき、マックスはクロエの額にキスを落とした。


クロエはくすぐったそうにクスクス笑いマックスに抱きつく腕に力を込める。

ふと、マックスの背中じゅうに広がる酷い傷跡の事が気になり「マックス、傷は痛んだりしているのか?」と心配そうにマックスに聞いた。


マックスはクロエの髪にひとつキスを落としてから「不思議なんだけど、あの日以来疼く事もない…夢もあの日以来見ていない…クロエがそばにいてくれる限りきっともう大丈夫だ」とまた強く抱きしめてきた。


「本当に?」


「本当さ」


「そうか、よかった」とクロエもマックスの背中に回した手に力を入れる。

「マックス」


「うん?」


「マックスにこんな(むご)い事をした奴ってどんな奴だったんだ?…聞いてみたい。無理にとは言わないが…」


「ふふ、あいつの事を思い出しても、今は気持ちが穏やかだ…。クロエって凄いな…ふふ」と言った後マックスは「あいつは…確か、黒髪短髪で黒い瞳だったな…左の目尻の下に黒子がふたつあったのを覚えている。人が苦しむ姿を見て笑っていやがる。とにかく嫌な奴だな…今度会ったら仕返ししてやる」とふざけたようにマックスは言った。


「仕返しは私もする!私のマックスにこんな(むご)い事をした奴は許せない…」


「ふふ、じゃあ…一緒に奴をいたぶるか?」とマックスはニヤリと笑い


「いいね!のった!」とクロエもニヤリと笑った。


そんなクロエにマックスは言う


「クロエ…愛しているよ。心から」


「私も心からマックスを愛している。ずっと」


ふたりはキスを交わし再び抱き合った。


……………………………………………………


数日後、金髪のカツラと帽子を深く被ったクロエとマックスは郊外のレストランで食事をしていた。

人気のあるレストランで今日も満席だった。


一番奥まったところでふたりは向かい合って食事をしていた。


レストランにいる人達からはマックスの顔はよく見えるが金髪女性は背中を向けているので顔まではよくわからない。

しかし、マックスの顔が穏やかに幸せそうに微笑んでその女性と話しているのがわかる。


「公爵は伴侶を決めたのだな」とその場にいる皆は思った。


クロエとマックスはそんな周りの視線に構う様子もなく笑顔で食事と会話を楽しんでいる。しかしその会話の内容は物騒なものだとは周りの人達には伝わらない。


「クロエ、今日の御者はいつもの御者じゃないんだ。

いつもの御者が体調不良で急遽変わったそうなんだ」


「ふーん。じゃあ、そろそろなのか?」


「多分ね、帰り道かもな…人気(ひとけ)のない所も通るからね」


「何人でくるかな?」


「全く想像つかないね」


「鉄棒は?」


「2本窓枠にはめてあるよ。ドアもふたつすぐに外せるようにしてある」


「毒矢が降ってこない事を祈るのみ…だな」


「そこなんだよねぇ」


「マックス…楽しみなのか?」


「まさか!平和に帰れるのが一番さ!そうしたらまたクロエとデートできるだろ?」


「ふふ、それは確かに…このままデートできるのが一番いいな」クロエの頬が少し赤くなった。


「今日も俺のクロエは可愛いな…ふふふ」


「マックス…またそんな事言って…バカ」


「あー!それはまずいよクロエ…可愛くて抱きしめたくなる!」


「もうっ」


「はははは!」


店内は一気にざわついた「あの公爵様が声を出して笑っている」と。「きゃー。素敵!」と黄色い声を出す女性までいた。


……………………


食事を済ませ、店を後にしたふたりは店に隣接された人気(ひとけ)のある公園を腕を組んで散策していた。


「いるか?」


「ひとりだけね」


「まぁ、こんなに人気(ひとけ)があるところでは何もできないでしょう」とクロエはあたりを見回す。

噴水のが周りでは子ども達が遊んでいる。近くにそれを見守る親が立っていた。

あちこちでクロエとマックスのように腕を組んで公園を散策している恋人達もいる。


「ここで来られても巻き込む人が増えて困るんだよね…」とマックスは肩を竦める。


「そうだよな…」と言いながら、クロエの瞳もひとりの怪しい者を見つけた。


「あいつ?」


「そう、さっきからずっとついてくる」


「決まりだな」


「ああ、今日だな」


ふたりは散策を終え、迎えの馬車に乗り込んだ。


御者に気づかれてはいないか…と窓枠の鉄棒やドアの状態の確認をし、クッションのが中に隠してあった狼煙の発煙筒を取り出す。


その間にも馬車は王都中心部に向けて出発した。


馬車は順調に進み、クロエとマックスが予想した通り郊外と王都を繋ぐ人気(ひとけ)のない山道で馬車は停車した。


「マックス。止まったみたいだな」


「ああ、止まったな…」


クロエとマックスは窓枠から鉄棒を取り出し、ドアに手をかけてその時を待った。


馬車はどうやら取り囲まれたようだ。御者は既に姿を消している。


カーテンの隙間から外をうかがったマックスは目を見張り「あの男がいる…」と呟いた。


「どこだ?」とクロエもカーテンの隙間から外を見る。


黒髪短髪の男が馬車を取り囲む男達の後ろに立っていた。

「あいつが…」クロエの瞳が怪しく好戦的に光った。


その間にも馬車の包囲網はジリジリと狭まっていた。


(まだだ…もう少し…あと少し…)クロエとマックスは扉の取手を握り、反対の手には鉄棒を握り、相手との間合いをはかっていた。


「クロエ…」


「なに?」マックスの呼びかけに振り向くと唇に温かいものが触れた。マックスにキスをされていた。

そして「行くぞ!」と言われ、


クロエも「ああ!あとでな!」


その言葉を合図にふたりは馬車から飛び出していった。




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