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クロエ  作者: KAE


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47/63

〈47〉

サロンに残されたアンジェラとレオナードはふたり並んでソファに座っていた。


「母上。大丈夫ですか?」


「ありがとう、大丈夫よ。マクシミリアン様はすべてをご存知だったのね…」


「クロエ様の力を借りて調べられたそうです」


「そう、怒っていらっしゃるでしょう…」


「そう見えましたか?」


「え?」


「兄上は母上の立場も理解してくださっています。クロエ様の助言もありますが、母上がお祖母様に怯えていることもご存知です。もし、本気で怒っていたら、母上をここに匿ったり、僕をここに連れて来てくれはしませんよ。ここは兄上にとって大事な所でしょうから…」とレオはサロンを見回した。


「なぜ、クロエ様とお知り合いになられたのかしら?」


「ボイジャーがアルシェッタ辺境伯領まで連れて逃げていってくれて、倒れている兄上をクロエ様が見つけてくださったようです」そしてレオはマックスから聞いた話をアンジェラに聞かせた。


「…そんな過酷な思いをさせてしまったのね…クロエ様にも感謝を改めて伝えなければ…」

後悔が滲む顔で呟くと。


「ええ、だからここは兄上にとって誰にも知られたくない大事な場所なんです。そんな大事な場所に僕達を連れて来てくれる兄上が怒っていると思いますか?」


「そうね…」


「でも、僕も不安で兄上に同じ事を聞きました。〈怒っていないのか?〉って」


「……」


「兄上は、最初は復讐したい一心だったそうです。辺境伯領で辺境伯軍の鍛錬にも齧り付くように挑んだそうです。でも辺境伯領の方々は隣国との諍いでたくさん親しい人を亡くしているのに〈復讐〉ではなくて〈守る〉為に鍛錬に励んでいると知ったそうです。

クロエ様もご両親を亡くしているのに受け入れておられるようです。辺境伯領に行って兄上ご自身が変わったと自覚されているようです。〈真の首謀者〉を捕らえると仰っていました。僕はそんな兄上がかっこいいと思いました」


「そうなのね…変わられたのは内面だったのね」

アンジェラは呟いた。


………………………………


クロエとマックスは厨房で酒やつまみなどをワゴンに並べていた。


「アンジェラ様も辛かったんだろうな…」


「ああ、きっとな」


「マックスも複雑だろう?大丈夫か?」


「確かに複雑だな…これは割り切れない。でも、なんでだろうな…この気持ちは抑えられる気がする。クロエのおかげだな…」


「私?うん?」クロエは不思議そうに首を傾げる。


「ふふ、俺より複雑なのはレオだろうな…実の両親が当事者だ…だけどあいつは強かった。あいつは〈仕組んだお祖母様が許せない。父上も母上もあんなにしたお祖母様に憤る〉そうだ」


「そうか…強いな。でも本当にロベリア夫人だけでここまでできるものなんだろうか…1年以上も別邸にマックスを監禁したり、追っ手を差し向けたり…」


「どうなんだろうな…資金があればできるかもしれないな…」


「資金か…じゃあ、ロベリア夫人はもう何もできないはずなんだけどな。…さぁこれでいいな!サロンに戻ろう」とクロエとマックスはワゴンを押してサロンに向かった。


サロンの扉をノックしてワゴンを押して入る。


アンジェラとレオナードはクロエとマックスを笑顔で迎え、アルシェッタ辺境伯の屋敷のサロンは夜遅くまで灯りが灯っていた。

サロンからは時折り笑い声が漏れていた。

…………………………


扉がノックされて「入れ」の返事と共にランドルク伯爵家の家令が入ってきた。


「失礼します。旦那様、奥様がお戻りになりました」


「うむ」ランドルク伯爵は家令の話を促す。


「時間差でギルドからの使いとドミトスに送った間者からの連絡もありました」


「なんと?」


「ギルドからは〈奥様から依頼がありました。明日から動きます〉と、間者からは〈奥様が公爵邸を訪れられました。アンジェラ様に面会を求められましたが不在で追い返されました〉との事です」


「ロベリアは諦めなかったのか…まぁ良い。ロベリアが成功すれば良し…もし、失敗したら離縁するだけだからな…。アンジェラはまだ帰ってこないのか?」


「私もその者に聞いたのですが、ひと月ほど前から療養の為に屋敷を離れらたきり、お帰りではなさそうです。屋敷の使用人が何も聞かされていないのは変わらないようです。それと、レオナード様もマクシミリアン様と遠乗りにお出かけになり今夜は戻られないそうです」


報告を聞いてランドルク伯爵はしばらく考え込んだ。

アンジェラがひと月も誰にも行き先を知らせずに療養と言う名目で屋敷をあけている。かつ、マクシミリアンとレオナードは共もつけずに外泊。これは、マクシミリアンがロベリアからアンジェラを守るために何処かにアンジェラを隠し、遠乗りという名目で会いに行っているのではないか?

ロベリアは既に敵として見なされている?


そんな考えに至ったランドルク伯爵は「火の粉がかかる前に離縁の準備をした方がいいかもしれんな…。書類の準備を頼む」と家令に命令した。


「かしこまりました。早急に準備致します」と家令は答えた。






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