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クロエ  作者: KAE


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46/63

〈46〉

陽が傾きかけた頃、サロンで寛いでいたアンジェラを呼ぶ声がした。

「母上…母上」声のした方を見ると、サロンのテラスの向こうからレオナードが立って手を振っていた。

レオナードの後ろにはマックスとクロエも笑顔で立っている。


「レオ!」アンジェラは笑顔でレオナードの方に小走りで向かった。


レオナードもサロンの窓を開けて母親の方に駆け寄ってきた。


「母上、お元気でしたか?かなり顔色が良くなったように見えます!」


「レオ!ええ!アルシェッタの皆様には本当に良くしていただいて…。それよりレオは背が伸びた?」


「ふふ、伸びました。バートとアンナに鍛えられました。ははは!今日も兄上と遠乗りをしてきました…それもかなり遠くまでです!」


「まぁ!」


「兄上にはまだまだ敵わないですけどね!」


「暫く見ないうちに大人っぽくなったわね…」アンジェラは眩しそうに息子を見上げる。


「ふふ、今日はおふたりともお泊まりいただく予定ですの。皆でゆっくりいたしましょう!まもなく夕食の時間ですよ」とクロエが言っているとイーサンが食事の準備ができたとサロンに声をかけてきた。


久しぶりに対面した母と息子は食事中も談笑して、クロエとマックスはその様子を笑顔で見つめていた。

時折りレオナードに話をふられて会話に入り笑い合うこともあった。


食後はサロンに移り4人で穏やかな時間を過ごしていたが突然、アンジェラが泣き出した。


皆、ギョッとして「母上!どうしたのですか?」とレオナードが隣に座るアンジェラの顔を覗き込む。


「ごめんなさい。なんでもないの…いえ、そうじゃないわ…ごめんなさい。ごめんなさい」アンジェラの涙は止まらない。


クロエがアンジェラに歩み寄りひざまづいて

「アンジェラ様、皆、そばにおりますよ…」とアンジェラの手を握りながら伝えた。


アンジェラが落ち着くのを皆黙って待っていた。


レオナードは母の背中を優しく撫でている。


アンジェラが落ち着きを取り戻して、今までにない眼差しでマックスを見た。

 

「マクシミリアン様。クロエ様。レオ。聞いて欲しいことがあります」とアンジェラはロベリアから渡された茶葉で淹れた茶を夫であるアーノルド・ドミトス前公爵に飲ませたことを話した。


「そうでしたか…」とマックスは落ち着いてアンジェラに言った。


「お気付きでしたの?」


「はい、そしてその事で義母上が罪悪感で押しつぶされそうだということも…」


マックスはクロエからアンジェラが時折り遠くを見て静かに涙を流している事を聞いていた。


「ああ…ごめんなさい。ごめんなさい。母に言われるがまま、深く考えずにアーノルドにお茶を淹れたわ…まさか死んでしまうなんて…おかしいと思ったのに…私じゃなくあの人が死ぬなんて…ごめんなさい」アンジェラは震えながら泣いていた。


「え?義母上も飲んだのですか?」


「ええ、でも香りが苦手で途中で飲むのをやめたけど…。でも、私ももっと飲んでいればよかったのよ…ああ、アーノルドごめんなさい…止めればよかった…」アンジェラは泣き続けながら懺悔した。

その間もクロエはずっとアンジェラのそばにいてレオナードもアンジェラの背中を撫で続けた。


マックスが「ロベリア夫人が義母上にも勧めたのですか?」と聞くと


「いいえ、でも飲むな…とも言われなかったわ」


マックスは持っていきようのない怒りを感じていた。

「なんと杜撰な…」


クロエも同じ気持ちだった。


レオナードが「母上。その茶葉はまだありますか?」と聞くと


「ええ、いつか飲まなくては…と思って持ってきているわ」


「アンジェラ様、そんな物飲んではいけません。お願い。負けないで…」とクロエがアンジェラを見上げる。


マックスが「その茶葉を預からせていただけますか?」と聞けば


「ええ、持ってくるわ」とアンジェラは私室に向かった。


「なんてことを…」クロエの呟きにマックスもレオも静かに頷いた。


すぐにアンジェラは戻ってきた。そして茶葉の入った缶をテーブルに置く。

そして「マクシミリアン様。どうか私を告発してください。レオのことが心配でしたが、もうレオは大丈夫です。私は罪を償わなければいけません。レオのことよろしくお願いします」とアンジェラは決意のこもった瞳でマックスを見た。


「待ってください。この茶葉が原因か調べる必要があります。告発するかどうかは結果次第です」


「…そうね。是非調べてください」アンジェラは静かに頷いた。

アンジェラはもう泣いても震えてもいなかった。


マックスは「ええ、ちゃんと調べます。少し時間をください」と静かに宣言した後


「少しお酒でもいかがですか?アンジェラ様は何がお好きでしょう?ご用意します。レオ様は果実水で我慢してくださいね」とクロエが明るく皆に話しかけた。


「そうだな、お願いするよ。義母上は何を飲まれますか?」


「そうね、久しぶりにワインをいただきたいわ」


「かしこまりました。ではとっておきのワインをあけましよう!」


「ふふ、ありがとうございます」


「では、今ご用意しますね!少しお待ちください」とクロエが席を立つと、マックスも「俺も手伝う」と言って席を立ち、ふたりでサロンを出ていった。

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